6 / 12
第1章 猛獣たちの目覚め
♯5 耳元の秘め事
しおりを挟むされるがままの憂衣の伏し目がちの長いまつ毛を見ながら旭が呟く。
旭「……ねえ、憂衣さあ、たまに人を観察する時あるよね?(笑)」
憂衣「へっ!?」
驚いた憂衣が顔を上げると、至近距離で目が合う。
旭「この間もさ、なんか熱い視線感じるなーと思ってパッと見たら憂衣で。でも、絶対に目は合わないの。」
(……なんて綺麗な目。醸し出される爽やかオーラ。これだけで原稿用紙10枚は書けるわ……っ)
旭「で、どこみてたの?」
旭がいたずらっぽく、でもどこか試すような瞳で覗き込んでくる。
憂衣「そ、それは……旭くんの、その、腕の筋肉の、あ、いや……神のみぞ知る領域をっ!」
旭「腕? え、なに?(笑) 俺の腕、気になるの?」
動揺して墓穴を掘った憂衣に、旭がクスクスと喉を鳴らして笑った。
そして次の瞬間、無防備な憂衣を正面からすっぽりと包み込むように抱きしめた。
憂衣「っ、え、旭くん!?」
旭「うりゃ~。どう? 俺に包まれた感想は」
旭の若々しい熱と、ふんわりと甘いバニラの香りが全身を襲う。
(ごっ……!!抱きしめられてる?!旭くんの長い腕が、私の背中に回ってる……っ!やばたにえん……資料、資料としての密度が濃すぎて脳がショートするぅぅ!!)
憂衣「え、えと、あの……旭くん、近いです、近すぎます……」
旭「……あ」
旭が憂衣の顔を少し離すと、その視線は彼女の耳元に注がれた。
旭の長い指先が、髪をかき分け、憂衣の耳たぶに触れる。
旭「耳穴空いてるじゃん。普段ピアスしてんだ?」
憂衣「ぁ、んっ……」
不意に敏感な部分を指の腹で弄られ、憂衣の口から自分でも驚くような、熱を帯びた吐息が漏れた。
「…………」
「…………」
お互いにキョトンとした顔で見つめ合う沈黙。
(……あ、今の声、絶対ヤバい……っ!! )
旭「……へぇ、そんな声出るんだ。かわいー。」
旭の目が、狩りをする猛獣のように一瞬だけ鋭く細められた。
旭の腕の中で、憂衣は心臓が口から出そうなほどパニックになっていた。
旭「ねえ、俺、憂衣なら抱けるよ。おとなしめだけど顔普通に可愛いし。あと、今抱きしめて分かったけど身体も柔らかいし」
あまりにもストレートな発言をする旭。
旭の瞳からはいつもの爽やかさが消え、底の見えない熱が宿っている。
憂衣「……あ、旭くん、何言って……っ」
と、ここで他の社員の声が近付いている気配がした。
旭「……なーんてね。憂衣が可愛いからからかってみただけだよ」
そういいながらそっと離れる。
旭はふっと力を抜くと、いつもの爽やかな笑顔に戻し憂衣の真っ赤に晴れたおでのを見つめる。
旭はひょいと憂衣の顔を両手で挟み込むと、そのまま自分の顔を近づけてきた。
憂衣「っ、……っ!?」
逃げる間もなかった。
旭は、憂衣の赤く腫れたおでこに、自分の唇をそっと押し当てた。
――チュッ。
自動販売機の音と、少しづつ近付いてくる社員の声に微かな吸着音が混じる。
梶さんの「デコピン」が氷のような衝撃だったなら、旭くんのこれは、とろけるような熱を帯びた毒薬。
憂衣「…………っ!!」
旭「じゃ、おでこ、お大事にね~」
旭は満足そうに微笑むと、ひらひらと手を振りながら、何事もなかったかのように休憩フロアを去っていった。
残された憂衣は、熱を持った自分の額を両手で押さえ、その場にへなへなと座り込んだ。
(おでこにキッスされた……!梶さんが付けた『印』を、旭くんの熱で上書きされた気分…題名つけるなら 『王子の戯れ、熱情の上書き』ね……!)
震える指で携帯を開き、『丸秘メモ(PC共有)』を立ち上げる。
今この瞬間の、旭の唇の感触、少し冷めた瞳、そして額に残った微かな湿り気。
憂衣「あわわわ、仕事どころじゃない……! 今すぐこの熱量を、文字に起こさないとっ……!!」
自動販売機の前で、憂衣の妄想という名の執筆活動は、かつてないほどの熱量を帯びて暴走し始めていた。
0
あなたにおすすめの小説
婚活に疲れたアラサーOLの私、癒やし的存在の弟分(高校生)に「もう待てない」と外堀を埋められています ~10年分の執着は、甘すぎて重すぎる~
ダルい
恋愛
「29歳? 子供産むならもっと若い子がよかったな」
中堅企業で働く早川結衣(29)は、婚活市場における年齢の壁と、デリカシーのない男たちにすり減らされる日々を送っていた。
そんな結衣の唯一の癒やしは、マンションの隣に住む幼馴染の高校生・瀬戸湊(16)。
両親が共働きの彼に代わって、幼い頃はお世話をしてあげていた……はずが、いつの間にか立場は逆転。
手料理を振る舞われ、愚痴を聞かれ、マッサージまでされる始末。「湊がお嫁さんならいいのに」なんて冗談を言っていたけれど。
「今の結衣姉が一番綺麗だよ。……早く、誰も手出しできない『おばさん』になってくれればいいのに」
可愛い弟分だと思っていた彼が、時折見せる『オス』の顔。
16歳の高校生と、もうすぐ30歳のアラサー。
13歳差の常識と理性に抗いながら、生意気な年下男子に外堀を埋められていく、甘くて重い現状維持(ラブストーリー)。
「俺が大人になるまで、誰とも結婚しないで」
癒やされたいすべての女性に贈る、最強の年下幼馴染による溺愛包囲網、開始。
役立たず霊能者の私が、警視庁怪異特殊対策室に拾われた話 ~そこはヤンデレだらけのイケメンハーレムだった件~
季未
恋愛
ブラック企業で万年ビリの社畜、月島 零(24)。
彼女には昔から、他人の呪いや怪異が視えてしまう不遇な体質があった。
そのせいで会社を理不尽にクビになった金曜日の夜。
新宿駅の地下で最悪の怪異空間に引きずり込まれた彼女を救ったのは、最高級のスーツを着た漆黒の男——警視庁特殊怪異対策室の室長・神宮寺だった。
「お前の眼には価値がある」
命の保証と引き換えに、月給100万の専属鑑定士兼・囮役(!?)として強制契約を結ばされる零。
配属先は、ドSで俺様な神宮寺室長をはじめ、狂犬ハッカー、解剖マニアの変態ドクターなど、顔面偏差値だけは異常に高いハイスペック異常者たちの巣窟で……!?
「俺以外の痕がついているのが気に入らん。次は一秒で助ける」
命がけの怪異事件を解決するたび、逃げ場のない溺愛と執着はエスカレートしていく!
現代オカルト×限界突破の溺愛ホラーサスペンス!
鬼上官と、深夜のオフィス
99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」
間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。
けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……?
「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。
ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?
春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。
しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。
美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……?
2021.08.13
ヤクザのお嬢は25人の婚約者に迫られてるけど若頭が好き!
タタミ
恋愛
関東最大の極道組織・大蛇組組長の一人娘である大蛇姫子は、18歳の誕生日に父から「今年中に必ず結婚しろ」と命じられる。
姫子の抵抗虚しく、次から次へと夫候補の婚約者(仮)が現れては姫子と見合いをしていくことに。
しかし、姫子には子どもの頃からお目付け役として世話をしてくれている組員・望月大和に淡い恋心を抱き続けていて──?
全25人の婚約者から真実の愛を見つけることはできるのか!?今、抗争より熱い戦いの幕が上がる……!!
ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる