私の脳内会議がうるさい

恋した蕎麦

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第1章 猛獣たちの目覚め

♯9 夕闇の会議室

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維斗「……入れ」

憂衣「ひ、ひゃいっ……!」


手首を掴まれたまま引きずられ、憂衣が放り込まれたのは第2会議室だった。

バタン、とドアが閉まる。

梶は憂衣を椅子に座らせると、自分も向かいの席に腰を下ろした。

(やばい……っ! 密室! お説教!? それとも私の変態行為がついにバレてクビの宣告……っ!?)

身構える憂衣。しかし、梶が机の上に置いたのは、クビを言い渡す書類ではなく、山のような未整理の資料とノートパソコンだった。


維斗「……来週、役員会議や。自分、さっきまであんなに暇しとったんやから、これ全部今週中にまとめろ」

憂衣「えっ……? あ、はい! 承知いたしましたっ!」


梶は自分もノートパソコンを開くと、カタカタと無機質なタイピング音を響かせ始めた。

夕方の西日が窓から差し込み、会議室をオレンジ色に染めている。

(……あ、あれ? 本当に普通にお仕事……。でも、見てよこの梶さんの集中してる真剣な顔。……ッ! 良い。非常に良い資料だわ……っ!!)


維斗「……神崎?」

憂衣「はいっ! すみませんっ、今すぐホチキス留めに入りますっ!!」


それから2時間、キーボードの音と、ガシャンというホチキスの音だけが響いた。

ホチキス留めが終わると、ノートパソコンでプレゼン資料の仕上げをしていく。

梶は時折、「……そこ、グラフの数値ズレとる」「……あほ、ページ順逆や」と短く指摘するだけだった。


憂衣「……梶さん、チェックお願いします」

維斗「………ん」


梶はタッチパッドを長い綺麗な指先で操作しチェックしていく。


維斗「……よし。今日はもうええわ。戻るで」


窓の外はすっかり暗くなり、夜の帳が降り始めていた。

梶は資料をまとめると、椅子を引いて立ち上がった。憂衣も慌てて散らかったデスクを片付け、ウィッグを持つ。


憂衣「あ、あの、梶さん……。さっきの、非常階段のこと……」

維斗「…………」


梶はドアに手をかけたまま足を止め、少しだけ振り返った。


維斗「……来週、会議でミスらんかったら、それでええ」

憂衣「ひ、ひゃいっ……! 頑張りますっ!!」

維斗「……帰るぞ。あほ」


梶はそうぶっきらぼうに告げると、先に会議室を出ていった。

一人残された憂衣は、梶さんが座っていた椅子と、静まり返った会議室を見渡した。

(メモ……! 『怒ってるのに、結局仕事で返させる梶さんの懐の深さ……! あああ、今夜は一睡もせずにこの『働く男の色気』を書き殴りたい……ッ!!)

結局、憂衣の官能小説のプロットは、真面目な仕事を通じてさらに深みを増していくのだった。
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