D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

文字の大きさ
150 / 700
第九章

紅白戦(赤と青)その2

しおりを挟む
 先制された後も紅組の攻撃はロングボール主体で変わりない様だった。1TOPへポジションを上げたリーシャさんがライン裏を常に狙い、そこへ長いパスを送る。もちろんそんな単純な攻撃は簡単にカットされるのだが、サイドラインにクリアしたボールはスタッフがすぐさま投げ返すのでどちらのボールになるかは分からない。最初から高めのポジションをとったアイラ、ティアの両SBプラス中盤が若さと人数でボールへ殺到し、自分たちのものにしてしまう。奪った後はまた裏狙いのリーシャさんへ……という繰り返しを体力が続く限り行うつもりらしかった。
 だがそれをそのまま受ける青組ではなかった。数分で赤組の狙いを見抜くと単純なクリアを極力排し、奪ったボールを丁寧に繋ぐ事でスローインからの混乱という不確定要素を消しにかかった。
 そうなると「ボールをキープする青組」vs「プレスで奪い返そうとする赤組」という構図になり、それはそのまま実戦形式のゾーンプレスとその回避方法……となり、俺たちコーチ陣の望んだ通りとなる。
 きっと今日の練習がドワーフ戦に活きるだろう、とホクホク顔の俺たちとは逆に選手達は鬼の形相でボールを追いかけていた。

「アイラパイセン、一発で行かないで!」
「戻るこっちの身にもなってよ!」
「策の無い子ね~」
「シャマー油断は禁物ですわ!」
「ルーナ! リーシャだけじゃ無理だ! リストも上げてくれ」
「駄目。リストは前半はお姫様番」
「姫様……ハアハア」
「なんだか呼吸が怖いです……」

 両チーム、選手の怒号や指示が飛び交う中、ボールも同じくらい縦横無尽に飛び回っていた。というかスタッフさんが投げ入れるボールは素人のそれで、スローインのルールにもサッカードウ的狙いにも叶っておらず予想がつかない。選手の疲労は精神肉体ともに予想以上だろ。
 あと俺の疲労も予想以上だった。実の所、スローイン時に誰が投げるかは俺がその都度スタッフさんに指示している。これは後半、ちょっとルールを変えないといけないかもな……と思っている時に「事件」が起きた。

 それは例によってアイラさんが単独でプレスをかけにいって、あっさりとマイラさんに交わされた直後に起こった。
 空いたスペースへ少しドリブルで持ち上がりパスコースを探すマイラさんの背中に、こんな声がかかったのだ。
「右から来てるよ! 無理しないでお婆ちゃん!」
「はっ!? 誰がお婆ちゃんなんです!?」
 マイラさんが一応ボールを庇いつつも、声がした方向へ振り向く。だがその方向には味方はおらず、少し離れた位置に舌を出して「ごめんね」ポーズをとるアイラさんの姿があるだけだった。
「あれ? アイラにゃん?」
「マイラちゃんごめんなのだ!」
「師匠、危ない!」
 事態を把握したシャマーさんが声をかけるが間に合わない。律儀にアイラさんのサイドの守備へ戻ったリーシャさん――なんだかんだで真面目な子だ――が右ではなくマイラさんの左の死角から現れ、ボールをかっさらったのだ。
「ナイスっす!」
 それを見たクエンさんがボールを受け取ろうと中盤の底から前に進む。もし上手く受け取れたら、ボールを叩いてライン裏へ走り込むリーシャさんにも攻め残ったアイラさんにも、逆サイドでシャマーさんと一対一になるティアさんにも展開できると思えた。
 だがリーシャさんの判断は違った。彼女はクエンさんにボールを預けずそのまま右にカットインし、ムルトさんを抜き切らないまま右足を振り抜く。
 リーシャさんがペナルティエリアの外から放ったシュートは大きく左ポストを越えるかのような勢いで飛び出したにも関わらず急な弧を描いて落ち、ボナザさんの手を掠めてゴール右上に決まった。

「わたくしがブラインド視界を遮る形になってしまって……すみません」
「いや、それは仕方ない。むしろあの軌道が反則なんだよ……」
 すまなそうな顔で謝罪に近づくムルトさんに、GKのボナザさんが慰めの声をかける。確かにあのシュートはタイミング、コース、勢いとも完璧で止めるのはほぼ不可能だった。
「凄いよリーシャ! ナイスゴール!」
 一方、赤組の誰よりも派手にリーシャさんのゴールを祝いに来たのは例によってユイノさんだった。GKになってもそれは変わらないのな。
「もう、ユイノってば……大げさだって」
「これで高級ホテルのアフタヌーンティーに一歩前進だよ!」
 そっちかい!
「マジそれな! リーシャ良いの持ってんじゃねーか!」
「アイラパイセンも良い守備だったっす!」
「ふふふ。後が怖いけどリゾートには代えられないのだ!」
 祝福の輪の近くでマイラさんの背から冷気が立ち上るのが見える気がした。さっきのプレー、厳密に言えば「反スポーツ的行為卑怯な手」なのかもしれないが、それを明確に判断できるのは当事者や俺他数名だけで、審判の中にはいない。ゴールが認められ1-1。と同時に前半も終了する事となった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

処理中です...