D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第二十八章

引率者の懸念

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 前半のアディショナルタイムへ入った所で俺は席を立った。
「試合が良く動くタイミングではあるんですけど、トイレが込むので行くなら今! ってタイミングでもあります」
 そうアリスさんの耳元に告げるのも忘れない。生徒さん達も人間で言えば高校生くらいにあたる年頃だが、引率の先生がもっとも懸念する事の一つがトイレであるのはこの世代でも異世界でも変わらない。しかもアリスさん本人というか本エルフも麦酒を3杯近く呑んだのだ。当然の反応を身体が示しているかもしれない。
「あ、そうですね! みんな! 出すのもある奴は」
「(アリス先生!)」
「あっ! ちょっとお花を摘みたい子は……」
 顔を赤らめて――いや、元からまあまあ赤かったかもしれない――言い直すアリスさんに俺は首を横に振った。
「日本語で叫んでますよ」
「あー! そうでした……」
 その言葉が切っ掛けになったのか、アリスさんは姿勢と服装を正し、今度は間違いなくエルフ語で言った。
『おーい! トイレ込むかもしれないので行くなら今だぞ!』
『げ! マジか!?』
『先生! 一緒にいこう!』
 教師の呼びかけに生徒さんたちもそれぞれの反応を返している。異世界トイレ事情と言うのはまた掘り下げるに値する話題だが、今はその時ではない。
「では後半開始頃に」
 俺は学院の皆さんにそう声をかけ、スタジアム内部へ走った。

「おう、ショーキチ監督!」
 更衣室のドアの前で待っていたザックコーチ――今更だけど今日はザック監督代行って呼んだ方が良かったかな?――は真剣な顔で俺を出迎えた。
「ザック監督代行! アディショナルタイムに席を離れたんですけど、何か動きはありましたか?」
 俺は走ってる最中につけた翻訳のアミュレットと関係者IDカードを直しながら問う。
「リーシャがボレーシュートで追加点を挙げたが……」
 ザック監督代行は気不味そうな表情になって応える。
「それは悪化したでしょうね」
「うむ」
 俺は彼に皆まで言わせずにいった。このミノタウロスの男性は、かつては同種族の代表監督だった。それだけに同種――今回の同種は同じ種族ではなく同じ種類、という意味だ――の問題の経験が豊富だろう。頼りにさせて貰おう。
「ここで介入するつもりですが、良いですか? 注意点はありますか?」
「そうだな……」
 それから俺たちは何件かの確認を行い、合図を聞いてロッカールームへ入った。

 部屋の中の空気は完全に二分されていた。前半5-0という楽勝ムードに浮かれるメンバーと、事態を重く受け止めているメンバーと。特に後者の中のボナザさん、ガニアさん、マイラさん、ダリオさんという各ポジションリーダーは固まって深刻な顔で話し合っていた。
「みんな前半はよくやってくれた。ありがとう」
 俺はナリンさんに目配せしてからそう口火を切った。敏腕コーチが阿吽の呼吸でまだ話し込む選手たちの肩を叩いて廻って、俺の方を見るように促す。
「だがそれは全て忘れよう。後半、ハーピィは別のチームになるし、我々も別のチームになる」
 俺はそう言って問題の本質に目を向けた。
「リーシャさん、レイさん、交代で。お疲れさま。代わりにエオンさんとツンカさんが入ります」
「えっ!?」
「なんでっ!?」
 その言葉を受けて前半2得点の両者が驚いた声を出したが、俺は片手でそれを制し逆の手でロッカールームに設置した黒板へフォーメーションを書く。
「前半は前の4枚を流動的にしたけど、後半は固定で。2TOPはダリオさん、エオンさん。中盤は右にポリンさん左にツンカさんで」
 言いながら書き終えて、交代で入る方の2名を見る。エオンさんは待ってました! という顔でツンカさんはやや緊張気味だ。
「個々の注意点は……ジノリコーチ、お願いします」
「ツンカは後半開始から投入されるであろうカペラ対策じゃから、攻撃面ではあまり使い過ぎるのではないぞ。エオンも自由に動いて貰うから、固定のターゲットになるのはトップのダリオと右サイドのポリンじゃな。お主たちはあまり動きすぎるでない」
 ドワーフのコーチはジノリ台2号――ピッチで視線の高さを上げ指示を叫ぶ時用のお立ち台だ。この度、ロッカールーム専用に常備しておく為の二つ目の台がデビューした――に乗り作戦ボードに幾つかの線を書き込む。
「前半は前の4枚で攻め切れたが、後半は手が足らんかもしれん。DFラインからのサポートはシャマーの指示で……」
 ジノリコーチの話は続く。こちらは大丈夫そうだな。俺はもう一度、
「待って」
の合図をリーシャさんとレイさんへ送り、今度は控え選手の輪に近寄った。
「マイラさんアイラさん」
「監督にゃん! 分かってたのね!」
「良かったのだ……」
 デイエルフの祖母と孫……もとい双子の姉妹は俺の顔を見て安堵の声を漏らした。
「ええ。あの件は俺が引き継ぎますのでご安心を。中盤の強度が下がったら、具体的に言えばポリンさんとエルエルの運動量やテンションが下がったら入って貰うかもしれません。準備を」
「うん! そっちの方が気が楽だにゃん!」
「お任せなのだ!」
 俺の言葉に両者とも明るい声で返す。いやマイラさんが年の功でなんとかしてくれても良かったんだがなあ。
「ではそれで。あと……ユイノさんリストさん!」
 俺は残りの控え選手の内2名を呼び出した。
「俺が行った後の、リーシャさんレイさんのケアをお願いします」
「うん、そうだよね……」
「拙者がメンタルのケアをでござるか? しかもされる方でなくする方?」
 気乗りしないまでも分かっていたユイノさんに比べて、リストさんの返答はかなり頼りなかった。
「リストさんだって隊長だったでしょ? まあ愚痴を聞くだけでも良いですから。憎まれ役は俺がやりますし」
 俺はそう言ってリストさんの肩を叩き、振り返った。いよいよ、問題児2名と対峙するターンだ。
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