D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第三十二章

誰の店へ行く?

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「ティアさんかツンカさんなら、邪魔が入らない個室居酒屋とか知ってるかも!?」
 まずそう助言してくれたのはユイノさんだった。以前に言及した通りアローズの中には複数の派閥があり、この大らかなGKが所属するのは若手グループである。一方、ティアさんツンカはそれと別の『少しお姉さん』という集団の所属になるが、若手との交流は盛んな方であった。
 ベテランに聞くには真面目さに欠けるが自分たちの知識では及ばない範囲、まあぶっちゃけ少し大人のお店とか恋愛について聞く対象として、彼女らはまあまあ適任だと言えよう。
 で、ユイノさんの推薦を聞いた俺はごく自然にティアさんを除外し――ノートリアスの件で立証済みな通り、彼女が得意とするのはバカ騒ぎ向けの店であり今回にはふさわしくない――ツンカさんに聞いてみる事にしたのだ。そして彼女を探してトレーニングルームで見つけ訊ねてみて……と。いやここまでは良かった。問題はその後だ。
 そこから話がトントン拍子に進み、
「それならこれからスワッグに乗ってその店の下見へ行こう!」
という話になってしまったのだ。
 別に急ぐ案件でもないし店の情報だけ聞いて、後日おれ一人で船に乗って見に行けば済む話である。しかしツンカさんが嬉しそうにシャワールームへ消え、俺には呼び止める隙も外から話しかける度胸もなかった。
「ショーキチ。ツンカはもうその気ぴよ? ここで辞めたら男がすたるぴい! たしか『据え膳喰わぬは男のゲオルゲ』だぴい?」
 そしてスワッグもそう行って追撃してきた。もちろん俺は
「それを言うなら『男の恥』だよ! 何で東欧のマラドーナ、ゲオルゲ・ハジ選手のファーストネーム知ってんだよ!」
と突っ込んだが、そのせいで話の流れを止めるタイミングを失ってしまった。まあ実際、ツンカさんとは健全なデートをする約束もあったし、それを果たす事になるか……という諦めもあった。
 しかし、こんな怖い思いをするなら、やっぱり無理矢理にでも後日という事にするべきだったな……。

 スワッグが美しい旋回でもって着陸を行い、恐怖のフライトは終わりを告げた。降りたのは運河のほとりで、等間隔に並んで座るカップルの間の良い感じのポイントだった。
「うわ、鴨川と一緒だ……」
「鴨!? どこだぴよ? 俺には見当たらないぴい!」
 鳥の事にはウルサいスワッグが俺の言葉を誤解して騒ぐ。ムードを壊しやがって迷惑な奴らだな! という視線がこちらへ集まり、俺は慌ててグリフォンの嘴を塞いだ。
「しーっ、スワッグ! 俺が言ったのは川の名前! 京都市にある鴨川の河原では、カップルがこんな風に間を開けて座るので有名なんだ!」
 俺は余所では知らないが関西では割と有名な逸話を添えて説明する。何せ実験のテーマになったり歌のタイトルにもなっているくらいだ。二人の世界に浸りつつ寂しくならない絶妙な距離感を自然と選んでいるとかなんとか? しらんけど!
「そうなのかぴよ?」
「じゃあ、ショー? 私たちは……あの辺りにシッダウンする?」
 俺たちの話を聞いたツンカさんが俺の腕を胸に挟み、端のカップルから距離を置いた付近を指さす。ちなみに今はトレーニング中に着ていたのと同じ形の服の上に、黒いキャミソール風のドレスをつけている。もしこの黒キャミだけなら凄い露出度だが、下のトレーニングウェアがなんとかそれを和らげスポーティーに見せている。
「(うわ、エロ……)」
 それでもやはり色気は凄く、何組かのカップルの男性はパートナーに白い目を向けられるのも気にせずツンカさんを目で追っていた。いや君ら、後で怖いぞ?
「いや、ツンカさん近いですって!」
 俺はそう言って彼女の胸から俺の腕を救出した。ちなみに近いとは隣の組との距離ではなく、俺と彼女の意味だ。
「あと座ってる暇もありません! 例のお店の偵察をしないと」
 そして腕時計を叩くジェスチャーをしかけて辞める。もちろん、通じないからだ。代わりに空を指さして、日がかなり暮れているのを伝えた。
「それもそうね! じゃあスワッグ、シーユー!」
 それを見たツンカさんは俺に倣うように空を指し、スワッグに言った。
「え? いや、スワッグには待ってて貰わないと……」
「今日の帰りはメイビー遅くなるかも……ううん、遅くなる」
「了解だぴい!」
 スワッグはツンカさんの言葉に頷くと、ゆっくりと羽ばたきを始めた。
「ちょっとスワッグ! 帰りの足というか羽根がないと困るよ!」
 俺は慌てて彼の首に腕を回し引き留める。この動きはテイクダウンからの脱出で散々、練習したぞ! レイさんとの備品倉庫の件、参照な!
「羽根がなければ泊まればよいぴよ? 5番街の宿がおすすめぴい!」
「『パンがなければケーキを食べれば良い』じゃないんだよ! どこのマリーだ? はっ!? さては『5番街のマリー』って言いたいのか!?」
 スワッグがペドロ&カプリシャスの名曲にかけているのに気づき、俺は思わず突っ込んだ。ちなみにペドロ&カプリシャスとはそういう名前のサッカー選手のコンビではなく、昔の日本のバンド名である。
「行ったのなら後で聞かせて欲しいぴいー!」
 そんな突っ込みで産まれた隙を突いて、スワッグはテイクオフしてしまった。もちろん俺にしがみ続ける度胸は無く、まだ受け身をとれる間に腕を放す。
「大丈夫、ショー?」
「え? あ、ええ……」
 着地した俺にツンカさんが心配そうに問い、俺は呆然と空を見上げながら答えた。
「じゃあ、行こうか! お店、ニアなようでファーだから……」
 それを聞いたデイエルフは再び腕を抱えて歩き出す。俺はそれ以上、抵抗する気力もなく、やや不穏な空気になっている何組かのカップルの横を通ってその場を去った……。
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