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3、幼女、水浴びをする
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街を飛び出したアリスは『魔物が出るから近づいてはいけない』と大人達がよく言っていた森を目指して一心不乱に走っていた。
背中に背負ったクマさんリュックと、腰に提げた剣を揺らしながらであるが、そのスピードは大の男よりも速く、すれ違う人々が驚いて手に持っているものを落としてしまう事案が発生したらしい。
近所の主婦、マチルダさんの特売タマゴは全て無駄になってしまったが、尊い犠牲である。
森を目指し疾走すること数分、アリス自身には何のダメージもなく目的地である森へと辿り着いた。
苔むした大樹が鬱蒼と茂る森の中をアリスはぐんぐん進んでゆく。
可愛らしい洋服を小枝に引っ掛けようと、葉が落ち、それが、堆積した柔らかな地面や迫り出し、隆起する太い根がアリスの小さな足の進みを邪魔しようとも止まらずにぐんぐん進んでゆくのだ。
しばらく進むと、アリスの前に1体のモンスターが姿を現した。
やや、小型ではあるが、鋭い牙に、空を駆る翼へと進化した前脚を持つドラゴンの一種、ワイバーンである。
ハッキリと言って、アリスが飛び出した小さな町に住む人々や、駆け出しの冒険者などでは全く相手にならないレベルの強さ、素早さ、凶暴さを持ったモンスターであり、このワイバーンも目に映ったアリスはただの自分のエサとなる人間の幼女だっただろう。
「キシャァァァ」
ワイバーンはギロりと鋭い目でアリスを睨むと、辺りに響くほどに咆哮し、素早くアリスを捕食せんとばかりに飛び掛った。
「あはっ」
ワイバーンが咆哮するのを見たアリスは腰の剣を鞘から抜くと独特の構えを取り、嗤う。
おおよそ並の人間では反応すら出来ずに生命を刈り取られるであろうスピードで飛び掛るワイバーンの動きに合わせ、ヒラヒラのスカートが捲り上がるのも気にせずに高く跳躍すると、ワイバーンの右前脚をまるでバターを切るかのように切り落とした。
「ガァァァァァ」
痛みと怒りで吼えるワイバーンだが、アリスの動きは止まらない。
「あははっ」
お気に入りの玩具で遊んでいるのかと錯覚してしまいそうになるほどの楽しそうな笑顔でアリスは剣を振るう。
強固であるはずの鱗や皮膚はアリスの剣撃の前には何の防御力も示すこと無く、斬られ、裂かれ、一振り、また一振りとワイバーンの生命を削っていった。
「あっ、もう終っちゃった」
暫く楽しそうに剣を振るっていたアリスが動きを止めて物足りなげに呟く。
その足元には首が飛び、翼を落とされ、鱗は剥げ落ち、皮膚が裂けた飛竜だったものの残骸があった。
アリスはまるで幼児が息絶えた昆虫の羽やパーツを拾うように、ワイバーンだったものから牙や翼、鱗、皮膚を収集し、魔法を使い圧縮し、家から持ってきた布の袋へ詰めると、可愛らしいクマさんバッグに仕舞い、再び歩きだす。
「モンスターさんとあそんでたら、よごれちゃったから、みずあびしたいなぁ」
そう言うアリスの幼い肢体はワイバーンの返り血を浴びていた。
再び歩き出したアリスはぐんぐんと森の中を進んでゆく。
しばらく進むと、綺麗な湧き水で出来た泉があった。
「あ!きれいなみずだ」
アリスは泉に駆け寄るとそう呟いたあと、身にまとっている衣服を脱ぎ、綺麗に畳んで泉に入るのだった。
背中に背負ったクマさんリュックと、腰に提げた剣を揺らしながらであるが、そのスピードは大の男よりも速く、すれ違う人々が驚いて手に持っているものを落としてしまう事案が発生したらしい。
近所の主婦、マチルダさんの特売タマゴは全て無駄になってしまったが、尊い犠牲である。
森を目指し疾走すること数分、アリス自身には何のダメージもなく目的地である森へと辿り着いた。
苔むした大樹が鬱蒼と茂る森の中をアリスはぐんぐん進んでゆく。
可愛らしい洋服を小枝に引っ掛けようと、葉が落ち、それが、堆積した柔らかな地面や迫り出し、隆起する太い根がアリスの小さな足の進みを邪魔しようとも止まらずにぐんぐん進んでゆくのだ。
しばらく進むと、アリスの前に1体のモンスターが姿を現した。
やや、小型ではあるが、鋭い牙に、空を駆る翼へと進化した前脚を持つドラゴンの一種、ワイバーンである。
ハッキリと言って、アリスが飛び出した小さな町に住む人々や、駆け出しの冒険者などでは全く相手にならないレベルの強さ、素早さ、凶暴さを持ったモンスターであり、このワイバーンも目に映ったアリスはただの自分のエサとなる人間の幼女だっただろう。
「キシャァァァ」
ワイバーンはギロりと鋭い目でアリスを睨むと、辺りに響くほどに咆哮し、素早くアリスを捕食せんとばかりに飛び掛った。
「あはっ」
ワイバーンが咆哮するのを見たアリスは腰の剣を鞘から抜くと独特の構えを取り、嗤う。
おおよそ並の人間では反応すら出来ずに生命を刈り取られるであろうスピードで飛び掛るワイバーンの動きに合わせ、ヒラヒラのスカートが捲り上がるのも気にせずに高く跳躍すると、ワイバーンの右前脚をまるでバターを切るかのように切り落とした。
「ガァァァァァ」
痛みと怒りで吼えるワイバーンだが、アリスの動きは止まらない。
「あははっ」
お気に入りの玩具で遊んでいるのかと錯覚してしまいそうになるほどの楽しそうな笑顔でアリスは剣を振るう。
強固であるはずの鱗や皮膚はアリスの剣撃の前には何の防御力も示すこと無く、斬られ、裂かれ、一振り、また一振りとワイバーンの生命を削っていった。
「あっ、もう終っちゃった」
暫く楽しそうに剣を振るっていたアリスが動きを止めて物足りなげに呟く。
その足元には首が飛び、翼を落とされ、鱗は剥げ落ち、皮膚が裂けた飛竜だったものの残骸があった。
アリスはまるで幼児が息絶えた昆虫の羽やパーツを拾うように、ワイバーンだったものから牙や翼、鱗、皮膚を収集し、魔法を使い圧縮し、家から持ってきた布の袋へ詰めると、可愛らしいクマさんバッグに仕舞い、再び歩きだす。
「モンスターさんとあそんでたら、よごれちゃったから、みずあびしたいなぁ」
そう言うアリスの幼い肢体はワイバーンの返り血を浴びていた。
再び歩き出したアリスはぐんぐんと森の中を進んでゆく。
しばらく進むと、綺麗な湧き水で出来た泉があった。
「あ!きれいなみずだ」
アリスは泉に駆け寄るとそう呟いたあと、身にまとっている衣服を脱ぎ、綺麗に畳んで泉に入るのだった。
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