転生したら幼女でした。※ただし、レベル、ステータスは完スト

12、幼女、暴れる

見た目からは想像すら出来ない、最早人間離れしたスピードを以てアリスは鳳凰へと駆け寄り、一気に間合いを詰めると小さな両脚に力を込め、スピードに負けることなく飛び上がった。

地面にはアリスの小さな靴跡が深く刻まれている。

鳳凰はそんなアリスを迎撃せんとばかりに、炎を纏った翼を羽ばたかせた。

すると、忽ち燃え盛る炎の熱を帯びた凄まじい暴風が吹き荒れる。

「神薙」

アリスの小さな身体はその灼熱の暴風に曝されるが、特に焦った様子を見せることもなく、一言呟き、手にしている天叢雲剣を振るった。

アリスの中の人が使うスキルの１つであり、読んで字の如く、神をも薙ぎ倒す剣技である。

アリスが振るった剣は、纏わり付く熱風を文字通り薙いだ。

それを見た鳳凰は驚いたのだろう、目を見開く。

アリスは動きを止めることなく、空中で再び剣を頭上まで持ち上げると、身体のバネを使い、常人からは考えられない程の勢いでソレを振り下ろした。

その一撃はとてつもない衝撃波を生み出し、朱雀へと襲い掛かる。

「っ！？」

鳳凰は言葉を詰まらせ、迫り来る衝撃波に身構えた。

衝撃波は様々な音を奏でながら、身構える鳳凰が纏う炎を、黄金色の美しい羽を削り落としてゆく。

衝撃波が奏でる音はまるで、日本に伝わる雅楽の様にも、西洋のパイプオルガンの様にも聴こえ、神々しい出で立ちの朱雀にマッチし、鳳凰が舞い踊っているかの様にも見えた。

ここにもし、誰か第三者が居て、この光景を目にしていたら、十中八九こう感想を漏らしていただろう。

「綺麗……」

と。

ただ、現実的にこの場に居られる第三者がいるかは謎ではあるが。

さて、アリスが放った一撃は言わずもがなスキルである。

まるで神が音を奏でているかの様なこのスキルの名は、「神音」。

読み方はカノン、凄まじい剣の一撃で、大気を震わせ、空気の振動である音を奏でながら進む衝撃波を相手にぶち込むスキルである。