ご飯を食べて異世界に行こう

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終章 そして

神宮決戦

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どちらにしても、わたし達が前面に立たないとならないのか。

とか。

出来れば行きたく無いなぁ。

とか。

「鹿島様。お急ぎ下さい。」
「はい。もう!」

グダグダあれこれぶつくさぼやいていたら、わたしはわたしに叱られた。
わたしは今、香取のわたしに急かされて利根川龍脈を大急ぎで下っている。
早よせんと、禍津日神に要石を壊されかねない。
そんな事になったら、関東平野全域に巨大地震が起こりかねない。

「宇宙の◯みわぁ俺のう◯ぃ。」
「くにゃにゃ」

なのに船首で方じゃ、あの野郎が炬燵から首だけ出して、何やら呑気に歌っているし、その歌に同じく首まで炬燵に埋もれている白狐様が合いの手を入れている。
仲良いな。

伊弉諾様に増やされたW真神は布団に丸まったままだし、W八咫烏は炬燵の中から出て来やしない。

これが禍津日神退治御一行チーム(重複)の全てだとは、それこそ他ならぬ神ですら思うまい。
両舷に座って、布団の中から手だけ出して空を漕いでいるわたし達も、どんな姿なんだと突っ込まれたら困るけど、吹雪く空を駆ける宝船の速度を上げて少しでも早くそれぞれの神宮に辿り着くにはそれしか無い。


「でもわたしさぁ。どうやって戦うの?」
「布都御魂を振りかざすしかありません。」
「それしか無いのかなぁ。」

わたし達は神族とはいえ基本は巫女であり、玉串なら毎日振っているけど、刀なんかそもそも手にした事すら無い。
本当にどうしよう。

「そうですね。無策で突っ込んで行ってもただ跳ね返されて、経津主大神様達にご迷惑をお掛けしするかも知れませんね。」
「何か策がないとね。おい、そこな宇宙海賊。」
「命を捨てて俺は生きたりどうたら。」
「……まともな日本語を話しなさいよ。」
「寒いからねぇ。口が上手く回りませんよ。おこたの上のお蜜柑も凍っちゃって冷凍蜜柑になっちゃった。そう言えばしばらく新幹線や特急に乗って無いなぁ。車内販売の食べきれない冷凍蜜柑とか、固くてスプーンが刺さらないアイスクリームとか懐かしいなぁ。」
「働かないから、出張とかに行かないだけでしょ。たまには旅行にでも行って、あの小ちゃな巫女ちゃん孝行でもしなさいよ。」
「玉はなぁ。有料道路を走ってもお金がもったいないってプンプン怒っちゃうから。新幹線に乗るくらいなら旅行に行かない方を選びそうだ。青春18切符で鈍行旅行じゃ車内販売来ないし。」
 
こいつは何を言ってるんだ?
自分が庇護している少女に頭があがらないと白状されて、わたしらどうすりやいいんだよ!

「あの菊地様。何か良い案でもございませんか?」

脱線の連続に溜まりかねたか、香取のわたしが珍しく口を挟んで来た。

「そ、そうだぞ。旅行の計画は後にしてくれ。わたしらは戦う神じゃないんだよ。」
「無くは無いけど。」

あんの?


………


「何度も言いますが、キクヱさん達は軍神を祀る神宮の巫女です。つまりは、軍神が確保している能力を使う資格があるんです。」
「菊地様はお手伝いしていただけないのでしょうか?」
「僕はちょっと。ただでさえ神道と仏教とヒンズー教にまで迷惑をかけて、…迷惑をかけられているから。」

なんで言い直した?

「これ以上神同士の争いに介入したら、千葉と茨城を舞台にラグナロクが起こっちゃうでしょ。どれだけローカルな最終戦争なんだかねぇ。下手すると西洋の一神教が口出ししてきたら、貴女それはもう面倒くさい。」


…これほど神という存在をぞんざいに扱う人間がかつて居ただろうか?

「存在とぞんざい。駄洒落だね。」
「ウガァ!」

わたしは当然、発狂してやった。
腕を上に伸ばしたので、宝船の推進力が落ちて偏って、自然と取り舵になって、くるりと大きく1回転。

「鹿島様、落ち着いてくださいまし。あの、菊地様。策はありますのですね。」
「そうですね。香取神宮を陽動に使い、鹿島で止めを刺す。これが1番手っ取り早くて簡単でしょう。」

陽動?
香取を?

「陽動をド派手に。その隙にキクヱさん達が敵陣に突っ込む。それしか無いでしょ。この戦力じゃ。」

「戦力って言ってもさ。貴方が加勢してくれないなら、巫女が2人に馬2頭なんだけど。まさかカラスを戦力に加える気?」

「まさか。」

瞬殺された。
曲がりなりにも女神(間違えちゃあいない)の頼みなんだから、少しは考えれ。

「前にね。キクヱさんにウチの玉と青木さんの修行を頼まれた時に、見つけたんだよ。香取神宮で。」
「当社で、ですか?」
「本殿の傍にぷかぷか浮いてたでしょ。あれが。」
「はぁ。」

あれ、とあいつが指差す先には2隻の古臭い軍艦が利根川を遡上していた。
え?え?え?

「大日本帝国海軍所属、香取型戦艦ですよ。艦名はそのまま香取と鹿島です。明治期の戦艦だから型は古いけど、その後継艦は巡洋艦になって、自衛隊に組織変更後は護衛艦になっちゃいますから、どうせ陽動に使うなら戦艦の45口径の大砲をぶちかましましょう。アームストロング社とビッカース社の当時の最新型です。」

ちょちょちょ。

「では。全砲門開け。目標は香取神宮及び鹿島神宮を襲う禍津日神。あの、デカい女性だ。撃て!」

途端に両艦から、鹿島神宮と香取神宮に向かって砲撃が始まった。
あぁあぁあぁ。
何が神とは戦わないだよ。

禍津日神相手に利根川から艦砲射撃をぶちかます人間がどこの世界にいるんだよ?

「神馬さんはキクヱさん達を乗せて、それぞれの神宮に突入してください。極力神威を抑えて、とにかく一刻も早く神宮に。」

「ヒン!」
「ヒン!」

真神(達)がバサっと布団を自ら剥ぐと、それぞれわたし達の横に並ぶ。
立髪(立神)の中では八咫烏がふっくら丸くなっていた。
あ、こら。
わたしの布団まで剥ぐな。
わたしの襟元を噛んで、無理矢理背中に乗せるな。

「吶喊!」
「くにゃ」

あいつの号令一発、わたし(達)を乗せた真神(達)は、空飛ぶ宝船を飛び出し、雪降り止まぬ雪原を駆け出した。
鹿島神宮へ。
香取神宮へ。

………

「真神、どうするの?」

今までの真神とはかけ離れた速度で、今朝出て来た神宮に、まさに風の如く走っている。

「馬頭観音さんにちょっと力を貰ったんだ。あのキクチってアニさんに人間の寿命の内じゃ返し切れない恩があるってさ。」
「…ただでさえ一言主と荼枳尼天の加護を得ている人間だもんなぁ。わたしだってアイツに関わることになってからは、わたしの神族としてのスタンスがおかしくなりっぱなしだもんなぁ。」
「いや、元々はただの狼なアタイに多少力を貰っても、たかが知れてますよ。アタイの力は主人を、そして主神の力を十全に発揮させる媒体。あくまでもその力は主神たるキクヱを際立たせるものです。」
「あんた、何言ってるか自分でわかってる?」
「全然。」

だろうね。
いつもの真神じゃないよ。
今の真神。

そして今、わたし達が駆けている場所は水面だよ。
わたしは知っている。
ここは、三河の古狸の一族が利根川を新しく掘る前の記憶。
水の都だった常陸国、信太郡・行方郡そして香嶋郡だった場所。

そして浪逆の海を湖面を今わたし達は駆けている。

わたしが知る、令和でも平成でも昭和でも無い、懐かしい天長年間の親王任国だった頃の記憶。
神が神として祀られていた時代。
神が神として存在出来た時代。

「キクヱ様。」
「何?」
「馬頭観音様より、そして菊地様よりお預かりしたお力をお渡し致します。」
「え?」


「當流起源傳國摩眞人常願表靈劔之妙理作之法傳後世於高間原築神壇拜禱數年蒙神聖之教悟得神妙劔一術是日本兵法之元祖規法立之本原也」

「ちょっとちょっと、真神?真神さん?」

真神の、馬の口から何やら蟹やら漢文が流れ出したよ?
菊地ぃぃぃ!
何を真神にやらせる気だよぉぉぉ!

「天狗書。それがアタイが預かったものです。」
「天狗?さっき襲って来た連中でしょ。」
「松本備前守が武甕槌様より授けられた剣術の極意書です。」
「それがなんなのよぉぉ!」
「菊地様はこの天狗書より2人の剣豪が鹿島に生まれたと仰りました。すなわち、上泉伊勢守と塚原卜伝。上泉伊勢守は香取に、そして。」


浪逆の海の湖面に1人のサムライが立っている。

それは誰かと問う必要もない。
鹿島の巫女として、毎日見上げている男の姿だ。
すなわち「塚原卜伝」。

「一之太刀。」

卜伝はそれだけ言うと姿を消した。



なるほど。

香取(香取式軍艦の艦砲射撃)で陽動して。
鹿島(鹿島剣術の奥義)で一点突破を図る。
それがアイツの(非常識な)作戦か。

だったらさぁ。

「やってやんよ!」
「おうさ!」
「カァ!」

艦砲射撃を嫌がってクネクネしている巨大女、すなわち禍津日神と、巨大男、すなわち武甕槌が要石を挟んで睨み合いする中を、1人の女と1頭の馬と1羽の烏が吶喊して行った。
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