ご飯を食べて異世界に行こう

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第二章 戦

古本屋とスイーツ巡りの日

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生姜、生姜。出るかな?生姜。

「いっせいのせ!」

冷蔵庫の野菜室を、気合いを込めて開けたら、あぁ良かった。
クリーム色の大きな生姜の塊が出て来た。
生姜自体は苦手な部類に入る食材なので、今まで買った事なかったんだよね。
うむ。我が浅葱の力、健在なり。

「ただいまぁ。」

「そうだ!水じゃなくて、ばななじゅうすにしてみましょう。殿、出せますか?」
「バナナジュースねぇ。うぅむイマイチイメージが湧かないな。バナナ牛乳で良いかな?コンビニで買った事もあるし。はいこれ。」
「試してみます。駄目なら明日また買いに行きましょう。」

「帰って早々なんだけど、何か始まってるの?」

今更貴女の部屋は隣です、とか言わないけど、青木さんご帰宅です。
何やら駅前にあるコンビニの袋下げてます。

まぁねぇ。
俎板の上では玉葱が切られているし、タッパーには漬け汁と豚コマが入っている。僕は、冷蔵庫の前に座り込んでるし。
食卓では、輪切りにしたバナナの山を前に、玉がミキサーで四苦八苦してる最中だ。ペーストを作りたいらしいのだけど、どうやっても美味しいバナナジュースが出来るらしい。
…当たり前の様な気がする。

どっちかが、どっちかのしている事ならわかります。
まぁ、豚の生姜焼きと、バナナスイーツを同時に作っている一般家庭はあまりないだろう。

ミキサーの轟音が止み、コップに移した中身を味見のつもりで完飲して
「しまったぁ。しまりましたぁ。」
とか、若干わざとらしく後悔している少女は放置して。
てかお前、今蜂蜜足したろう。
「放置されてる間にもう一度作りましょう。殿、ばなな牛乳下さい。」
「冷蔵庫に入ってるよ。」
「はぁい。」
さて、僕は生姜をすりおろしながら、出来た欠片を薄く切る。

「バナナと生姜?」
「お帰り。説明したげるから、早く着替えて来なさい。」
「はぁい。」
何故2人して、返事が同じ?

★  ★  ★

家を出て車に乗る事30分強。
昔、有料道路だった(玉の持っている地図では、市川・松戸有料道路と記載がある。奥付けを見ると昭和58年版…新しく買わせて下さい)道路は、平日という事もあり、すいすいと江戸川土手が見える交差点に辿り着いた。

「あら、神社ね。」
「えぇと、松戸神社だそうですよ。」

巫女親娘は、神社には機敏に反応する。

「この辺が、昔の宿場町だね。」
「そう言えば、少し古めの建物が多いですね。」
歴史マニア玉がいち早く喰い付いた。
古めって言っても、貴女達の時代からすれば遥かに後世なんですが。

旧街道(旧水戸街道)はさすがに人通りも車通りも激しく賑やか。
多少の信号渋滞に捕まりつつも、無事JR松戸駅の西口に着いた。
ここのロータリーの地下は駐車場になっている。
幸い直ぐに駐車場所が見つかった。

地上に上がって直ぐそこ、歩いて数秒でいつもの看板が見える。
ここは中型店らしいけど、割りかし在庫は豊富、とネットに書いてあった。
さて、では……。

玉は黙ってゲームソフトコーナーに齧り付き、しずさんはDVDソフトコーナーに直行した。
君達、ここに来た目的を忘れてないかい?

まぁいいや。
昔育ちで現代に流されて来た巫女親娘、という一行で情報量が多すぎる2人が、現代文化に興味を持ってくれるという事は、現代生活を楽しんでくれてる証左だから。

さて、僕は地図コーナーへ。

「ねぇ菊地さん。」
ん?しずさんのよそ行きモードか。

「これの原作ってこれですか?」
しずさんが差し出したのは、アニメ「氷菓」のDVD-BOXと同じ名前の原作本。
ふむ、僕はテレビを見る習慣が消えて久しいし(我が家では、玉が料理や園芸の番組を見るだけ。…あぁ、青木さんはドラマとかを時々''我が家’で見てるけど)

最近、しずさんは読書という習慣を手に入れた。
最近では、庭で椅子に腰掛けて、のんびりと読書を楽しむ姿を見る事が増えた。

平安時代最末期の人とはいえ、知識階級の人だから、「活字」にも直ぐ慣れたし、外来語は僕が学生時代に使っていた辞書を活用して、玉なんかよりよっぽど先に読みこなして使いこなしている。
玉は発音が若干おかしくて、片仮名が全部平仮名に聞こえるし。
ただ、現代文化の知識が無かったので、文字だけではイメージが湧かないと、つい最近まで漫画しか読んでいなかった。
まぁ、漫画には分かりやすく絵がついてるからね。

その親娘は、狸か仔犬とモルモットを膝に乗せて、何も言わずに読書してたりする訳だ。

パッケージを確認して、スマホで検索、
「うん、そうですよ。原作の文庫はこの''遠回りする雛“までですね。」
「ありがとう。これ、お願いしますねぇ。」
「いいから、料理本コーナーに娘を連れて行きなさい。」
「あの子、なんか溜息ついてますよ。」
…何か探し物でもあるのかな?

………

「玉が欲しいそふと、まだ発売前でした。」
溜息の原因は、単純でした。
「…ゲームソフトの発売日を気にするなんか、高校以来だなぁ。」
その時のハードは1だったか土星だったか。
妹はまだFCで遊んでいた覚えがある。

それでも、新書本コーナーで数冊、料理のムックも抱えてレジにやって来た。
「ごめんなさい。幾つか100円じゃないです。」
「いいよ。」
しずさんの分(DVD-BOX含む)と、僕の買い物足しても、諭吉からちょこっと顔を出しただけだし。

これでも玉は、昔と比較すると遠慮が大分減った。
元は2,000円を超える本を書棚に戻していたし、本当に税抜き100円の本だけを選んでいた。
今は、その遠慮をしない基準値が少しだけ高くなったようだ。

「玉が婿殿の家族になったという事ですよ。夜伽が日常になって、稚児子が出来ればもっと遠慮がなくなるんじゃないかしらね。」
とは、玉をここまで育てて来た母親の言葉。
まぁ、玉の我儘くらいはなんとか吸収し切れる財力はあるつもりです。

………

それぞれ結構な大荷物(市川市と松戸市のゼンリン地図は、玉の肩掛けカバンからはみ出るムック本より大きくて重い)を持ったまま、最初の喫茶店に入る。

いや、まずは車に荷物を置いてから行こうよって言ったんだけどね。

「看板が果物でいっぱいですよ。」
「老舗のパーラーみたいですよ。婿殿、私も我慢出来そうにありません。」
…この欠食親娘は、まったくもう。

「ぱふぇって、ただのアイスクリームです?」
「パーフェクトアイスクリームの略がパフェだよ。コース料理…あぁ、甘味って食事の最後に頂くってしきたりが外国にあるんだけど、果物で盛り付けをしたものだよ。店によっては、フレーク…とうもろこしで作ったお菓子をつけて、嵩増しと口の中を冷たくし過ぎないようにしてる。」
「なるほど。これなら玉にも作れそうですけど、作っていても面白くなさそうですねえ。食べる分には笑顔が溢れちゃいますけど。」
だね。
玉さんは、目尻に涙を溜めて、んーんー言葉にならない感想を述べてたし。

「これ、発展性あるのかしらね?」
スプーンを咥えたまま、しずさんがカップを下から斜めから見て回す。
「西洋酒を掛ける、とかあるみたいですけどね。」
「西洋酒…?」
しずさんも飲酒は嗜む程度だし、神様に奉納した後の濁酒しか知らなかった人だからなぁ。
森伊蔵とか、越乃寒梅とか。
我が家のシンク下に転がっている清酒や焼酎を勧めると不思議そうな顔してたっけ。

因みにどちらも我が家では、玉が調理酒に使う程度で、相変わらず青木さんや大家さんを呆れさせてます。

ワインとか、ブランデーとか。
我が家には無いからなぁ。
多分、2人とも知らないだろう。

でも、甘い物は2人とも大好きですから。
満足そうな顔をして、フルーツジュースを最後まで飲み干しました。
おかわりしたそうにしてましたが、ここが1軒目なのはあらかじめ言ってあるので。
レジ横のショーケースに並んでいたシフォンケーキとマフィンを自分達のお土産にして、この店はおしまい。

…3人の飲食とお土産代で4,000円超えました。
なので、レシートを隠したまま、2人を先に店の外に追い出してお会計。
それよりも、右手から下げた◯ックオフの紺色の袋が重たいので、早く車に置きたいです。
これから東口の店舗にも行かねばならないから。

………

東口の店舗は、その昔、百貨店商売が全盛期だった昭和末期に入りかけの頃まで営業していた、8階建ての大型店舗だったそうな。
何しろ改札から続くデッキをそのまま20メートルも歩けば店内に入れる超一等地。
奥にある◯ーカドーは200メートルくらい離れているし、元は伊◯丹だという西口の高層SCまで、アーケードも無い道をテクテク歩かねばならない距離にある。

で、この東口店。
色々テナントが出入りした末、一時期は有名なおもちゃメーカーが本社を置いて、◯ンダムの実物大コクピットが置いてあったそうな。
その跡だという微妙な空間が店の真ん中にドカンとある5階と6階が目指すお店。
5階は古着コーナーになっているので、◯ンダム空間に作られた階段を登って6階に行こう。
おや、かなり広いな、これは。
本もゲームソフトもCD・DVDソフトもかなりの量がある。

やはり玉はゲームソフトコーナーに、しずさんはDVDソフトコーナーにさっさと消えて行った。

さて、僕はどうしよう。
もうお目当ての物は手に入れたし、差し当たり用はないんだよな。
そういえば玉が、車の中で聞くCDを欲しがっていたなぁ。
曲ったって、玉はせいぜい雅楽くらいしか知らないだろうし。
青木さんみたいに、何かフィクションを楽しむという事もしないので。
ヒット曲とかBGMとかわからないだろうなぁ。
イージーリスニングでも買うかな。
サティとか、アマデウスとかベートーヴェンはピアノ曲とか。
あ、これは僕が小学生の頃、初めて買ったアルフィーじゃないか。

「ぷんぷん。」
わかりやすいオノマトペを口にして、憤慨!って顔に大きく描いた玉がやって来た。
「どしたの?」
「げーむそふとが、さっきの店と大差ないんです。」
それだけ言うと、また去って行った。
そりゃぁねぇ。
玉のハードは◯天堂の◯イッチなんだから、旧ハードのレトロゲームと違って品揃えは同じだろうて。
むしろ、転売品も多いだろうし、最新ゲームが並んでいるのでは?

「菊地さん?」
「なんですか?」
今度はしずさんか。ん?
「これ、船が飛んでますけど、面白いのかしら。」
彼女が持ってたDVDソフトは宇宙を大和が飛んで行くシリーズの映画。
懐かしいな。

「こちらでは非常に流行ったものですね。30年以上前に作られて、今でも作られているんじゃなかったかな。」
「21なんとかってありましたけど、とりあえずこちらが古そうだったので。」
「男の子向けですが、面白いことは面白いですよ。」
平安末期に生まれた女性か面白いと感じるかどうかは責任持てません。
でもこの人、北◯の拳を喜んでた巫女さんだからなぁ。(OLしてるお隣さんもハマってたけど)
「でしたら、いっぱいあるのでちょっと見て下さいな。」
「いっぱい?」

数枚のCDを抱えたまましずさんに引っ張って行かれた棚には。
1~完結編の映画版。
1~3のテレビ版BOX。
近年リメイクされたもの。
が、ずらりと並んでいた。
リメイク版はともかく、旧版特に3のBOXなんて初めて見たぞ。
多分、誰かがまとめて処分したんだろうなぁ。
旧版をまとめて買うと結構な額になるけれど、僕が見たいから御購入。

しずさんは、僕のところから青木さんが勝手に持って行った(使ってないからいいけど。Blu-rayハードもテレビに繋がってるし)ポータブルしかないんだよなぁ。
1人で寝しなの暇つぶしにはちょうどいいけど、青木さんや玉も時々一緒に見てるみたいだし、モニターだけでも大きいの買おうかな。
中古品なら、少なくとも今籠の中に入っている商品の総額より安いし。


2軒目も大荷物。
ぶつぶつ。ぷんぷん。と言いながら、玉はこちらでも料理と園芸のムック。歴史の新書をカバンがぱんぱんになるまで買い揃えて御満悦。

ここでの用は、駅ビルにある洋菓子店でタルトと焼き菓子を買ったらおしまいです。
一応、喫茶店のチェックもしてあるけれど、次の店を味わう為に、少し時間を空けて胃袋を休ませたいとのご要望も姫さま達からありまして。

洋菓子店の並びにあるコーヒー店で豆と、あと聞いた事ない(お高い)紅茶の茶葉を買って、僕らは次の店にも行きました。


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