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終章 そして
まぁ、佐倉だし
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「殿!佳奈さん!玉は先に行きますね。」
「って玉が前がかりだから、僕がついて行くよ。青木さんとしずさんは自分のペース
で来てください。」
というわけで、前回の続きが見たかった博物館大好き玉ちゃんは、あの人をお供にとてとてさっさと行っちゃった。
階層式に掘られたこの博物館は、階段なりエレベーターなりで、時代時代の展示層にワープ出来るのだ。
玉ちゃんは昔の人なのに、あの人よりもデバイスを使いこなしているので、ここに来ると決まってからは、あらかじめ調べていたみたい。
迷う事なくエレベーターホールに向かって行く。
さて、私達はどうしよう。
「やれやれ。お母さんはどうしますか。玉ちゃんを追いかけますか?」
「せっかくですから、私は最初から見ますよ。私達以降の時代って、玉が色々な本を持って来てくれるんです。だから知識としては知ってますけど、婿殿が言うフィールドワークって楽しそうじゃないですか。」
そうでした。
玉ちゃんもしずさんも、当時の知識階層の人でした。
あの時代で、文字の読み書きが出来るって凄いもんね。
「お姉ちゃんもお暇でしたら婿殿を追いかけても構いませんよ。どうせ出口は一緒ですから。」
「いえいえ。あの2人には敵わないまでも私も学校で教わって来ましたから。お母さんの質問にはお答え出来ますよ。」
たぶん。
………
でもね。
私も玉ちゃんに負けてたまるかって、勉強はしてるんだよね。
玉ちゃんは、あの人の家に来て、あの人の負担にならない様に、あの人の隣を歩ける様に、一生懸命に現代知識を勉強してる。
同時に、過去知識というか、現代を生きる私達なら知っていて当然な事も身につけている。
だから、玉ちゃんはあの人抜きの玉ちゃん1人で誰かと会話しても、誰からも違和感を抱かれていない。みたい。
そして、あの人の上手いところは、玉ちゃんの勉強が楽しめるように工夫を凝らしているところ。
玉ちゃんが本やテレビで疑問に思ったら、こうやって博物館にでも、スーパーマーケットにでも連れてきて、本物を見せているところ。
特にホームセンターに行っては、玉ちゃんが興味を持ったものを片っ端から籠に入れ出すので、終いには玉ちゃんが怒り出すところ。
なんだかね。
あの人は玉ちゃんを、お嫁さん候補ではなく孫や姪っ子と思ってるみたいなところがある。
こりゃ、玉ちゃんも先が長そうだね。
人のこと言えないけどさ。
………
先ずは、この手の博物館は土器文化の展示から始まる。
民俗の博物館にしても、それはおんなじ。
貫頭衣を来たマネキン?蝋人形?だとか、ナウマン象の実物大模型だとか。
考えてみたら、土器や石斧などで狩りをして調理しているって、それは立派な民俗だ。
「あら、こんなお人形だったら、結構裏庭に転がっていたのに。」
「お母さん、それ土偶って言って…転がってたぁ?」
「裏山の麓にね。素焼きの甕とか。」
「ええと、前に玉ちゃん家に行った時って、国分寺の辺りよね。帰りにバス通りのスーパー寄ったし。」
スマホで検索してみたら、割と大きめの須和田って遺跡がヒットした。
そう言えば駅に向かう途中に、そんな公園があったな。
なるほど。
そりゃ、埴輪だか土偶だか、土の人形が出て来てもおかしくないか。
「あのね。婿殿が玉に子供用の歴史資料集って本を買ってくれて、その本は今私の手元にあるの。写真がいっぱい載っていて、こんな風景あったなぁ、なんか懐かしいなぁって読んでるのよ。」
「玉は婿殿に色々な場所に連れて行ってもらって勉強しているけど、母の私も娘の後を追いかけているの。」
「あははは、私も玉ちゃんを追いかけてますよ。菊地さんは知識お化けみたいな人ですし、菊地さんに追いつこうって、私も玉ちゃんも必死なんです。」
「うふふ。でも面白いわ。玉がよく博物館に行くって話しをしてくれるけど、わかるわぁ。今とっても楽しいもの。」
こんなの、いくらでも掘れば出て来たのにね。
って土器を見ながら懐かしがるお母さんの顔は、女の私でもドキッとするほど素敵だった。
玉ちゃんも将来は、あんな顔をするのかなぁ。
………
山なら平安。
私が中学生の頃に習った語呂合わせ。
大和・奈良・平安時代。
釜の室は土。
鎌倉・室町・安土。
こっちは強引。
というわけで、先土器・縄文・弥生に続いて、大和時代。
千葉には東日本最大の方墳があったり、貝塚や古墳の数はやたらめたらあったりする。
ウチからだと里見公園が1番近い遺跡かな。
あそこは城址だったり古戦場だったり、色々ありすぎな場所だけど、盛り土か無くなった古墳もあって、石棺が剥き出しになっている。
矢切に住んでいた頃は、なんとなしに散歩に行って、名物の桜なんかを見てたよ。
玉ちゃんの時代。
国府台の高台の下は「市」が定期的に開かれていて、玉ちゃんはお母さんと一緒に買い物に出掛けていたそうだ。
あの人が「浅葱の力」を使って、多少時間はズレる(玉ちゃんが住んでいた時代を特定する手掛かりがなかった)けど、おおよそ1,000年前の懐かしい景色に、玉ちゃんは、とてもはしゃいでいたそうだ。
「殿。今の市ってどうなってるんですか?」
「海は埋め立てられて随分と南下しちゃったし、あの時代と比べたら繁華街も南に下りた。今はただの住宅街じゃないかなぁ。」
「そうですか。まぁ、そうですよね。でも殿。玉は行ってみたいです。」
「行くのはいいけど、結構歩くよ?」
「構わないのです。行きましょう。」
ってある日、2人して出かけたそうな。
真間川と台地と台地の上にあるお寺さんの位置だけを頼りに行ってみたら、まぁやっぱり住宅街だったと。
ついでに、って言う事で里見公園まで足を伸ばして、おにぎりとお漬物だけの簡単なハイキングにしたんだよ。
とは、あの人。
玉ちゃんが出がけにガチャガチャやっているうちに、おにぎりを握っちゃうあの人もあの人だよ。
玉ちゃんは、あの人のご飯が大好きだからね。
で、帰りは京成で帰ろうとしたらしいんだけど、
「玉はお寺さんにお参りに行きたいです。」
って、台地際に東西に広がる弘法寺を歩いて帰ったって言う。
私があの人達の元に辿り着く前のエピソード。
私には凄く羨ましいし、そこに私がいなかった事が凄く悔しい。
「だから今年の桜は、お母さんも一緒に4人でお花見に行きましょう。約束ですよ。」
「私も良いんですか?若い子達で行った方が良いと思いますけど。」
「あの人が玉ちゃんを家族として迎えている様に、もうお母さんも私達の家族なんです。あまり遠慮してると、玉ちゃんに叱られますよ。」
「あらまぁ。それならば、美味しいお弁当を作って行かないとなりませんね。」
………
さてさて続いては平安時代。
十二単とか、皇室の行事で見た事ある御簾とかが出てきます。
ただ、そろそろ文字が出てきます。
この博物館には、源義経や足利尊氏の自筆文書があったりする辺り、さすがは国立。
ウチの実家の隣町にある市立博物館全部が、この博物館の1室分くらいの広さだからなぁ。
前回はこの辺りで玉ちゃんの足が止まり始めた。
何せ展示されている文書を一つ一つ読んでいたから。
ただでさえ解説パネルも全部読んでいたから、まぁ進みやしない。
「玉はね。文字を読む事を大切にしているんだよ。ブック◯フじゃ、新書本の裏表紙に書かれている解説や概要を一文字一文字読み込んで、買うかどうか決めているんだよ。しかも100円コーナーの本ばかり。」
「あれ?前に一緒に行った時は、割とちゃっちゃと選んでたけど?」
「あぁ、料理とか園芸のムック本だと、写真が目当てになるから。自分が欲しい知識かどうかしか確認しないから。」
なんだかね。
玉ちゃんらしいなぁ。
「で、ウチに帰ってから値札を剥がそうとして失敗して、泣きべそかいてた。」
「……想像出来ちゃうんだけど。100円コーナーに落ちてくる本は大抵売れ残りだから、値札シールも劣化してそうだしね。」
「なので値札剥がしを買ってあげた。」
「無駄遣いです!って怒られなかった?」
「それは大丈夫。シール剥がしなんか百均で売ってるから。」
………なんだかなぁ。
玉ちゃんらしいなぁ。
「まぁシールなんか556で間に合うんだけど、ウチはマニュアル人間しかいないから、調理器具でも農具でも工具でも、専門の道具で正当なやり方通りでやりたい人間なんだ。」
まぁ、それは玉ちゃんを見てればよくわかる。
「でもその内に、シール剥がしを使わなくなったんだよなぁ。ほら、◯ックオフの値札ってバーコードが付いているから大きいだろ。そこに買った日付と店を書く様になっちゃった。飽きたのかなぁ。」
「…ええと。玉ちゃんの気持ち、わからないかなぁ。」
「はて?」
コイツ、本当にわからないらしい。
玉ちゃんからすれば、「大切な殿」が買ってくれた「大切な御本」なんだよ?
本を買ってくれた「大切な思い出」なんだよ?
…まぁ、この男にそこまで求めちゃ駄目なのかなぁ。
それにしても玉ちゃん。健気だなぁ。
………
中世・江戸時代の歴史展示を超えた第4展示室に、玉ちゃん達がいた。
ここは全国の民俗を展示していて、玉ちゃんもお母さんも村のお祭りを仕切っている仕事してたから、これはこれで興味があるみたい。
お母さんも直ぐ玉ちゃんの隣に行って、玉ちゃんが見ている展示物に目を凝らしていた。
「お疲れ。」
「まだこんなとこに居たんだ.
「そりゃ玉が動かないから。」
「なるほど。」
「ところでさ。」
あの人が、ちょっと先にあるガラスを指差した。
「あそこに僕は行きたくないんだ。」
「?ただの豊年踊りの展示に見えるけど?」
農耕民族の日本人にとって、米の豊作を願うお祭りは基本中の基本じゃないの?
「うん。豊年祭は誰に捧げる祭りだと思う?」
「それは普通に、お稲荷様でしょ。」
「うん。そしたらさ。もう一度、ここからガラスの中を眺めて見なさい。」
「はい?」
ええと。
ここからだと部屋の反対壁になるから、蛍光灯の灯りが反射して、少し見にくいんだけど。
………。
「ねぇ。白狐がお座りしてんだけど。いや、動いてる?」
「そしてだ。今日は週末だから、結構観覧客が居て混んでたんだけど。」
「なんでこの部屋。今、誰もいないんだろ。」
ええと?
「くにゃ。」
ええと?
「って玉が前がかりだから、僕がついて行くよ。青木さんとしずさんは自分のペース
で来てください。」
というわけで、前回の続きが見たかった博物館大好き玉ちゃんは、あの人をお供にとてとてさっさと行っちゃった。
階層式に掘られたこの博物館は、階段なりエレベーターなりで、時代時代の展示層にワープ出来るのだ。
玉ちゃんは昔の人なのに、あの人よりもデバイスを使いこなしているので、ここに来ると決まってからは、あらかじめ調べていたみたい。
迷う事なくエレベーターホールに向かって行く。
さて、私達はどうしよう。
「やれやれ。お母さんはどうしますか。玉ちゃんを追いかけますか?」
「せっかくですから、私は最初から見ますよ。私達以降の時代って、玉が色々な本を持って来てくれるんです。だから知識としては知ってますけど、婿殿が言うフィールドワークって楽しそうじゃないですか。」
そうでした。
玉ちゃんもしずさんも、当時の知識階層の人でした。
あの時代で、文字の読み書きが出来るって凄いもんね。
「お姉ちゃんもお暇でしたら婿殿を追いかけても構いませんよ。どうせ出口は一緒ですから。」
「いえいえ。あの2人には敵わないまでも私も学校で教わって来ましたから。お母さんの質問にはお答え出来ますよ。」
たぶん。
………
でもね。
私も玉ちゃんに負けてたまるかって、勉強はしてるんだよね。
玉ちゃんは、あの人の家に来て、あの人の負担にならない様に、あの人の隣を歩ける様に、一生懸命に現代知識を勉強してる。
同時に、過去知識というか、現代を生きる私達なら知っていて当然な事も身につけている。
だから、玉ちゃんはあの人抜きの玉ちゃん1人で誰かと会話しても、誰からも違和感を抱かれていない。みたい。
そして、あの人の上手いところは、玉ちゃんの勉強が楽しめるように工夫を凝らしているところ。
玉ちゃんが本やテレビで疑問に思ったら、こうやって博物館にでも、スーパーマーケットにでも連れてきて、本物を見せているところ。
特にホームセンターに行っては、玉ちゃんが興味を持ったものを片っ端から籠に入れ出すので、終いには玉ちゃんが怒り出すところ。
なんだかね。
あの人は玉ちゃんを、お嫁さん候補ではなく孫や姪っ子と思ってるみたいなところがある。
こりゃ、玉ちゃんも先が長そうだね。
人のこと言えないけどさ。
………
先ずは、この手の博物館は土器文化の展示から始まる。
民俗の博物館にしても、それはおんなじ。
貫頭衣を来たマネキン?蝋人形?だとか、ナウマン象の実物大模型だとか。
考えてみたら、土器や石斧などで狩りをして調理しているって、それは立派な民俗だ。
「あら、こんなお人形だったら、結構裏庭に転がっていたのに。」
「お母さん、それ土偶って言って…転がってたぁ?」
「裏山の麓にね。素焼きの甕とか。」
「ええと、前に玉ちゃん家に行った時って、国分寺の辺りよね。帰りにバス通りのスーパー寄ったし。」
スマホで検索してみたら、割と大きめの須和田って遺跡がヒットした。
そう言えば駅に向かう途中に、そんな公園があったな。
なるほど。
そりゃ、埴輪だか土偶だか、土の人形が出て来てもおかしくないか。
「あのね。婿殿が玉に子供用の歴史資料集って本を買ってくれて、その本は今私の手元にあるの。写真がいっぱい載っていて、こんな風景あったなぁ、なんか懐かしいなぁって読んでるのよ。」
「玉は婿殿に色々な場所に連れて行ってもらって勉強しているけど、母の私も娘の後を追いかけているの。」
「あははは、私も玉ちゃんを追いかけてますよ。菊地さんは知識お化けみたいな人ですし、菊地さんに追いつこうって、私も玉ちゃんも必死なんです。」
「うふふ。でも面白いわ。玉がよく博物館に行くって話しをしてくれるけど、わかるわぁ。今とっても楽しいもの。」
こんなの、いくらでも掘れば出て来たのにね。
って土器を見ながら懐かしがるお母さんの顔は、女の私でもドキッとするほど素敵だった。
玉ちゃんも将来は、あんな顔をするのかなぁ。
………
山なら平安。
私が中学生の頃に習った語呂合わせ。
大和・奈良・平安時代。
釜の室は土。
鎌倉・室町・安土。
こっちは強引。
というわけで、先土器・縄文・弥生に続いて、大和時代。
千葉には東日本最大の方墳があったり、貝塚や古墳の数はやたらめたらあったりする。
ウチからだと里見公園が1番近い遺跡かな。
あそこは城址だったり古戦場だったり、色々ありすぎな場所だけど、盛り土か無くなった古墳もあって、石棺が剥き出しになっている。
矢切に住んでいた頃は、なんとなしに散歩に行って、名物の桜なんかを見てたよ。
玉ちゃんの時代。
国府台の高台の下は「市」が定期的に開かれていて、玉ちゃんはお母さんと一緒に買い物に出掛けていたそうだ。
あの人が「浅葱の力」を使って、多少時間はズレる(玉ちゃんが住んでいた時代を特定する手掛かりがなかった)けど、おおよそ1,000年前の懐かしい景色に、玉ちゃんは、とてもはしゃいでいたそうだ。
「殿。今の市ってどうなってるんですか?」
「海は埋め立てられて随分と南下しちゃったし、あの時代と比べたら繁華街も南に下りた。今はただの住宅街じゃないかなぁ。」
「そうですか。まぁ、そうですよね。でも殿。玉は行ってみたいです。」
「行くのはいいけど、結構歩くよ?」
「構わないのです。行きましょう。」
ってある日、2人して出かけたそうな。
真間川と台地と台地の上にあるお寺さんの位置だけを頼りに行ってみたら、まぁやっぱり住宅街だったと。
ついでに、って言う事で里見公園まで足を伸ばして、おにぎりとお漬物だけの簡単なハイキングにしたんだよ。
とは、あの人。
玉ちゃんが出がけにガチャガチャやっているうちに、おにぎりを握っちゃうあの人もあの人だよ。
玉ちゃんは、あの人のご飯が大好きだからね。
で、帰りは京成で帰ろうとしたらしいんだけど、
「玉はお寺さんにお参りに行きたいです。」
って、台地際に東西に広がる弘法寺を歩いて帰ったって言う。
私があの人達の元に辿り着く前のエピソード。
私には凄く羨ましいし、そこに私がいなかった事が凄く悔しい。
「だから今年の桜は、お母さんも一緒に4人でお花見に行きましょう。約束ですよ。」
「私も良いんですか?若い子達で行った方が良いと思いますけど。」
「あの人が玉ちゃんを家族として迎えている様に、もうお母さんも私達の家族なんです。あまり遠慮してると、玉ちゃんに叱られますよ。」
「あらまぁ。それならば、美味しいお弁当を作って行かないとなりませんね。」
………
さてさて続いては平安時代。
十二単とか、皇室の行事で見た事ある御簾とかが出てきます。
ただ、そろそろ文字が出てきます。
この博物館には、源義経や足利尊氏の自筆文書があったりする辺り、さすがは国立。
ウチの実家の隣町にある市立博物館全部が、この博物館の1室分くらいの広さだからなぁ。
前回はこの辺りで玉ちゃんの足が止まり始めた。
何せ展示されている文書を一つ一つ読んでいたから。
ただでさえ解説パネルも全部読んでいたから、まぁ進みやしない。
「玉はね。文字を読む事を大切にしているんだよ。ブック◯フじゃ、新書本の裏表紙に書かれている解説や概要を一文字一文字読み込んで、買うかどうか決めているんだよ。しかも100円コーナーの本ばかり。」
「あれ?前に一緒に行った時は、割とちゃっちゃと選んでたけど?」
「あぁ、料理とか園芸のムック本だと、写真が目当てになるから。自分が欲しい知識かどうかしか確認しないから。」
なんだかね。
玉ちゃんらしいなぁ。
「で、ウチに帰ってから値札を剥がそうとして失敗して、泣きべそかいてた。」
「……想像出来ちゃうんだけど。100円コーナーに落ちてくる本は大抵売れ残りだから、値札シールも劣化してそうだしね。」
「なので値札剥がしを買ってあげた。」
「無駄遣いです!って怒られなかった?」
「それは大丈夫。シール剥がしなんか百均で売ってるから。」
………なんだかなぁ。
玉ちゃんらしいなぁ。
「まぁシールなんか556で間に合うんだけど、ウチはマニュアル人間しかいないから、調理器具でも農具でも工具でも、専門の道具で正当なやり方通りでやりたい人間なんだ。」
まぁ、それは玉ちゃんを見てればよくわかる。
「でもその内に、シール剥がしを使わなくなったんだよなぁ。ほら、◯ックオフの値札ってバーコードが付いているから大きいだろ。そこに買った日付と店を書く様になっちゃった。飽きたのかなぁ。」
「…ええと。玉ちゃんの気持ち、わからないかなぁ。」
「はて?」
コイツ、本当にわからないらしい。
玉ちゃんからすれば、「大切な殿」が買ってくれた「大切な御本」なんだよ?
本を買ってくれた「大切な思い出」なんだよ?
…まぁ、この男にそこまで求めちゃ駄目なのかなぁ。
それにしても玉ちゃん。健気だなぁ。
………
中世・江戸時代の歴史展示を超えた第4展示室に、玉ちゃん達がいた。
ここは全国の民俗を展示していて、玉ちゃんもお母さんも村のお祭りを仕切っている仕事してたから、これはこれで興味があるみたい。
お母さんも直ぐ玉ちゃんの隣に行って、玉ちゃんが見ている展示物に目を凝らしていた。
「お疲れ。」
「まだこんなとこに居たんだ.
「そりゃ玉が動かないから。」
「なるほど。」
「ところでさ。」
あの人が、ちょっと先にあるガラスを指差した。
「あそこに僕は行きたくないんだ。」
「?ただの豊年踊りの展示に見えるけど?」
農耕民族の日本人にとって、米の豊作を願うお祭りは基本中の基本じゃないの?
「うん。豊年祭は誰に捧げる祭りだと思う?」
「それは普通に、お稲荷様でしょ。」
「うん。そしたらさ。もう一度、ここからガラスの中を眺めて見なさい。」
「はい?」
ええと。
ここからだと部屋の反対壁になるから、蛍光灯の灯りが反射して、少し見にくいんだけど。
………。
「ねぇ。白狐がお座りしてんだけど。いや、動いてる?」
「そしてだ。今日は週末だから、結構観覧客が居て混んでたんだけど。」
「なんでこの部屋。今、誰もいないんだろ。」
ええと?
「くにゃ。」
ええと?
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