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第一話
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「っん…っやぁ、アーシュ…もっとぉ」
「はっ…ヴィル、愛してる。俺の…ヴィル」
愛を、快感をもっともっとと強請れば、アーシュが独占欲を剥き出しにして更に激しく僕をかき抱く。
その独占欲が嬉しくて、僕の後孔を貫く彼自身を無意識にキツく締め付けてしまう。
そうすると彼の綺麗な顔に欲情が滲む。
「アーシュっ…す、き…好きぃ」
彼の表情、声、仕草に揺さぶられる気持ちが言葉になって、ただただ溢れ出る。
「俺も…愛してる…誰にも、渡さない。」
息も絶え絶えに、僕の思いと同じかそれ以上の熱量で告げてくる。そんな彼が愛おしいしくて堪らない。
発情期の熱で狂った頭が描く妄想は、僕の願望を映し出す。
現実では、絶対に叶わない。僕のたった一つの願い。
発情期から明けた後、切ない現実を突きつけられるくらいならば、このまま醒めないでいたい。
そうしたら、偽りでも君の愛をずっと感じていられるのに。
* * *
「殿下、いいかげん次の発情期の時には」
「『番になりましょう』だろ?その台詞は何度目だ?しつこいぞフィリアス卿」
僕の執務室で机を挟んで向かい合う、黒髪の美青年-アーシュレイ・フィリアス卿にそう吐き捨てる。
それを受け彼は眉間に皺を寄せ呆れた様にため息をつく。そして海の色にも似た深い藍色の瞳を細め、椅子に腰掛けている僕を見下ろす。
「はぁ。殿下、私と番にならなければ立太子できないのは、ご理解なさっていますか?」
「それも聞き飽きた。
理解していないのは、お前の方だろう?
お前以外のアルファとなら、すぐにでも番になってやると何度も言っていると思うが。」
何度繰り返したか覚えていないやり取りの応酬に辟易し、僕も深いため息をつく。
お前が僕の番になりたがるのは権力が欲しいからなんだろう?と口には出さず心のうちで吐き捨てる。
我が国、エステートの王位継承の条件はたった一つ。それは優秀な血筋であること。そのため本来なら、継承権はアルファの子息にのみ与えられるが、例外的にアルファに恵まれなかった場合にのみオメガの王族がアルファと番になることで継承権を得られる。
王族がアルファに王位を譲ることは一般的だが、条件があってもオメガに王位継承権を認めている国は珍しい。
「番を早く作った方を、王太子とする」
一年前に国王である父上が僕と妹にそう告げた。昔からオメガの僕たちには興味がない父上らしい采配だなと。結局政を取り仕切るのは優秀なアルファなのだから、どちらが王太子になっても変わらない、暗にそう言われた気がした。
「私以外と仰られても、私には兄弟がいませんので代わりとなるものがいません。
それにカリーノ殿下が先に立太子されてしまったら、殿下はどこかの王族のアルファと政略結婚させられる可能性だってあるんですよ。」
「代わりがいません。ではなく代わりを探すのが侯爵家の仕事だろ?
それに政略結婚しろと言われたら、国のためと言って喜んで嫁ぐさ。」
「まったく…。
殿下がいくら嫌がっても、あなたと番になるのは私以外有り得ません。だからいい加減、諦めてください。」
私以外有り得ないか。フィリアス侯爵家が僕の後ろ盾になっている以上、それは覆ることはないだろう。でも、アーシュの心は手に入らないのに、形だけの番になるなんて絶対ごめんだ。
結局どちらも自分の意見を曲げないので、いつもと同じ様に膠着状態になる。そんな中、執務室の扉が勢いよく開く。
「今日もヴィル兄様のとこに来てたのね!アーシュ!」
張り詰めた雰囲気を和ませる朗らかな声が響く。
「はっ…ヴィル、愛してる。俺の…ヴィル」
愛を、快感をもっともっとと強請れば、アーシュが独占欲を剥き出しにして更に激しく僕をかき抱く。
その独占欲が嬉しくて、僕の後孔を貫く彼自身を無意識にキツく締め付けてしまう。
そうすると彼の綺麗な顔に欲情が滲む。
「アーシュっ…す、き…好きぃ」
彼の表情、声、仕草に揺さぶられる気持ちが言葉になって、ただただ溢れ出る。
「俺も…愛してる…誰にも、渡さない。」
息も絶え絶えに、僕の思いと同じかそれ以上の熱量で告げてくる。そんな彼が愛おしいしくて堪らない。
発情期の熱で狂った頭が描く妄想は、僕の願望を映し出す。
現実では、絶対に叶わない。僕のたった一つの願い。
発情期から明けた後、切ない現実を突きつけられるくらいならば、このまま醒めないでいたい。
そうしたら、偽りでも君の愛をずっと感じていられるのに。
* * *
「殿下、いいかげん次の発情期の時には」
「『番になりましょう』だろ?その台詞は何度目だ?しつこいぞフィリアス卿」
僕の執務室で机を挟んで向かい合う、黒髪の美青年-アーシュレイ・フィリアス卿にそう吐き捨てる。
それを受け彼は眉間に皺を寄せ呆れた様にため息をつく。そして海の色にも似た深い藍色の瞳を細め、椅子に腰掛けている僕を見下ろす。
「はぁ。殿下、私と番にならなければ立太子できないのは、ご理解なさっていますか?」
「それも聞き飽きた。
理解していないのは、お前の方だろう?
お前以外のアルファとなら、すぐにでも番になってやると何度も言っていると思うが。」
何度繰り返したか覚えていないやり取りの応酬に辟易し、僕も深いため息をつく。
お前が僕の番になりたがるのは権力が欲しいからなんだろう?と口には出さず心のうちで吐き捨てる。
我が国、エステートの王位継承の条件はたった一つ。それは優秀な血筋であること。そのため本来なら、継承権はアルファの子息にのみ与えられるが、例外的にアルファに恵まれなかった場合にのみオメガの王族がアルファと番になることで継承権を得られる。
王族がアルファに王位を譲ることは一般的だが、条件があってもオメガに王位継承権を認めている国は珍しい。
「番を早く作った方を、王太子とする」
一年前に国王である父上が僕と妹にそう告げた。昔からオメガの僕たちには興味がない父上らしい采配だなと。結局政を取り仕切るのは優秀なアルファなのだから、どちらが王太子になっても変わらない、暗にそう言われた気がした。
「私以外と仰られても、私には兄弟がいませんので代わりとなるものがいません。
それにカリーノ殿下が先に立太子されてしまったら、殿下はどこかの王族のアルファと政略結婚させられる可能性だってあるんですよ。」
「代わりがいません。ではなく代わりを探すのが侯爵家の仕事だろ?
それに政略結婚しろと言われたら、国のためと言って喜んで嫁ぐさ。」
「まったく…。
殿下がいくら嫌がっても、あなたと番になるのは私以外有り得ません。だからいい加減、諦めてください。」
私以外有り得ないか。フィリアス侯爵家が僕の後ろ盾になっている以上、それは覆ることはないだろう。でも、アーシュの心は手に入らないのに、形だけの番になるなんて絶対ごめんだ。
結局どちらも自分の意見を曲げないので、いつもと同じ様に膠着状態になる。そんな中、執務室の扉が勢いよく開く。
「今日もヴィル兄様のとこに来てたのね!アーシュ!」
張り詰めた雰囲気を和ませる朗らかな声が響く。
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