捨て駒のはずが、なぜか王子から寵愛されてます

きど

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30.あなたは私をどう思っていますか?

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「おかえりなさーい。って、ツィーリィ顔が真っ青だけど大丈夫?」

殿下に付き添われ私室に戻ると、私の顔をみたティアがギョッとする。普段、何事にも動じないティアが驚くくらい、今の私の顔は酷いみたい。ソファに腰掛けると、ティアと殿下が私の両サイドに座る。

「ツィーリィは、怖い思いをしたばかりだから、今日はツィーリィの側についててもらえるかな?」

「もちろんですよー!怖い思いって何があったんですかー?」

殿下が私をいたわりティアに声をかける。私はそれよりも気になることがあったので、それを確かめることにした。

「ねぇ、ティア、殿下と二人っきりにしてもらってもいい?」

「あ、そうか!りょーかい!じゃあ、用が済んだら呼んでね」

私がそう言うと、ティアは何かに納得したように笑うと深く理由は聞かず、すぐに部屋から出て行った。

「殿下にお尋ねしたいことが…殿下はなぜ、顔を赤らめていらっしゃるんですか?」

「いや、何か照れちゃって」

私が意を決して殿下に向き直ると、殿下はなぜか照れていた。

-え?照れる要素なんて、どこにあったの?

そういえば、ティアもなぜかニヤニヤしていたが、二人との温度差に私は戸惑う。

「えっと、何を照れていらっしゃるのか分かりませんが、殿下はリリィとの婚約をどうするつもりなのか教えていただきたいのです」

「あぁ、そっちか。…リリィのことは、さっき馬車で話した通りだよ。ゆくゆくは婚約を解消して、リリィを幸せにしてくれる人と一緒になって欲しいと思ってる」

殿下は何故か落胆したようだが、すぐに私の質問に答えてくれた。私はその答えを聞いたときから、疑問に思っていたことを、殿下にぶつける。

「でも、リリィとの婚約はミズリー侯爵がお決めになったのでしょう?それを反故にしてもよろしいのですか?」

「婚約破棄をするなんて、じいは許さないだろうね。でも、婚約を継続するか決めるのは、じいじゃなくて僕だ。今まで、僕はじいの言いなりになっていたけど、国のためにもそれはもう終わらせなきゃいけないと思ってる。そう思わせてくれたのは君だよ」

「え?私ですか?私は何も…」

「故郷のために自分を犠牲にして僕の側妃になったツィーリィを見て、自分の情けなさを痛感したんだ。君やばあやの領地の惨状を放置している、じいの言いなりのままでいいのかって思ったんだ」

殿下は私の手を取り言う。私は殿下に話したことはないのに、殿下は私が側妃になった理由を言い当てる。そしてミズリー侯爵への不信感をはっきりと口にした。

「私が側妃になった理由を、ご存知だったんですね」

「ああ。僕の暗殺のために君がシアー卿に選ばれた理由が気になったから、調べさせてもらった。ツィーリィ、君の故郷が救われたら、君はシアー卿に従う必要はなくなるよね?」

「はい。ただ、私は…」

「うん」

「……。すみません、何でもありません」

"殿下の側妃でいたいです"と言いたいのに、言葉にできなかった。盟約に阻まれたわけじゃなく、殿下から拒絶されるかもと不安な気持ちからだ。

「そう。僕からツィーリィに伝えておきたいことが一つある。ツィーリィがシアー卿から解放されても、男爵家には戻せないんだ」

「え?どういうことですか?」

殿下から告げられた内容の意味が分からず思わず聞き返した。



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