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29.大切な存在だけど
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「妹…私はっ!どうやったら殿下に…異性として見てもらえますか?」
リリィは声を震わせ殿下に問い詰める。リリィの目から涙がとめどなく溢れ落ちる。
「リリィ、ごめん。君とのことはしっかりケジメをつけるつもりでいる」
殿下はリリィの目をしっかり見据え、迷いなく告げた。殿下の言うケジメがどんなものかは分からなかったけれど、リリィの恋が叶わないことだけは、はっきりと分かった。
「嫌っ…イヤです!私はっ、殿下の妃になるためにっ…今日まで頑張ってきましたっ…ダメな所があるなら、言ってください!全てっ…直しますっ」
リリィは殿下の手を握り嗚咽で途切れ途切れになりながらも、ありったけの思いを伝える。それを聞いている私達も切なくなるほどの、リリィの殿下への思いをひしひしと感じた。
いつの間にか、私の涙は止まっていた。
「リリィに何か原因があるからじゃない。リリィは僕にとって妹みたいに大切な存在だからリリィをきちんと幸せにしてくれる人と一緒になって欲しい。」
「それならっ、殿下とっ…一緒にっなりますっ!それがっ、私のっ、幸せですっ」
リリィは殿下の手を握る手に力を込め、殿下に訴える。リリィの懸命の訴えに殿下は首を横に振る。
「ごめん、リリィ。僕じゃ君を幸せにできない。僕と一緒になっても傷つけるだけだ」
「そんなっ!…なんでっ!どうしてっ⁈」
「僕にとってリリィは妹みたいに大切な存在だけど、逆をいえば、それ以上の感情を君に向けることができない。だから僕の妃になっても、君が辛くなるだけだ」
殿下は最初ははっきり答えなかった質問の返答をしっかりリリィに告げる。それは残酷だけど、殿下の本心なのだろう。リリィが殿下を諦められるように、それを伝えたのも殿下の優しさだったのかもしれない。
「そんなっ…いやっいやっ」
殿下から告げられたリリィは力なくうなだれて、現実から逃れるように耳を塞ぎ泣き叫ぶ。
侯爵子息様はそんなリリィを見兼ね、落ち着くように背中をさする。私はリリィに何て声をかけたらいいか分からず、リリィの手を握ろうと手を伸ばした。
「リリィ…」
「やめてっ…あなたにっ、慰められたくないっ!…殿下から、寵愛を受けるのがっ、なんでっ、あなたなのっ?あなたはっ、殿下のためにっ、何の努力をしてきたのっ⁈」
リリィは私の手を払いのけると、行き場のなくした感情を私にぶつける。言われた内容はもっともで、反論しようがなかった。でも、それをリリィに言われたのがショックで仕方なかった。きっと、笑いながら話しているときも、リリィは心の片隅でずっと、思っていたんだろう。
-リリィ、違うの。寵愛なんか受けていないの
せめて、リリィに釈明しようと私が口を開くまえに
「リリィ、今回責められるべきは僕だ。僕への批難はいくらでも受け止める。だからツィーリィを責めるのは辞めてくれ」
殿下が私を庇う。それにリリィが反応し、また泣きじゃくる。そのすぐ後に、御者から「王城に着きました」と告げられた。
「ツィーリィ、行こうか」
「でもっ」
殿下が馬車を降りるように私の腰に手を回すが、私はリリィを放っておけなくて、降りる気にならなかった。
「あんたが近くに居ると、リリィがまた暴走する。リリィのためを思うなら、落ち着くまでそっとして欲しい」
「分かりました…」
侯爵子息様にそう告げられた私は引き下がるしかなかった。
賊に襲われ恐怖で一杯だったはずの心は、いつの間にか友達を失いそうな不安でいっぱいになっていた。
リリィは声を震わせ殿下に問い詰める。リリィの目から涙がとめどなく溢れ落ちる。
「リリィ、ごめん。君とのことはしっかりケジメをつけるつもりでいる」
殿下はリリィの目をしっかり見据え、迷いなく告げた。殿下の言うケジメがどんなものかは分からなかったけれど、リリィの恋が叶わないことだけは、はっきりと分かった。
「嫌っ…イヤです!私はっ、殿下の妃になるためにっ…今日まで頑張ってきましたっ…ダメな所があるなら、言ってください!全てっ…直しますっ」
リリィは殿下の手を握り嗚咽で途切れ途切れになりながらも、ありったけの思いを伝える。それを聞いている私達も切なくなるほどの、リリィの殿下への思いをひしひしと感じた。
いつの間にか、私の涙は止まっていた。
「リリィに何か原因があるからじゃない。リリィは僕にとって妹みたいに大切な存在だからリリィをきちんと幸せにしてくれる人と一緒になって欲しい。」
「それならっ、殿下とっ…一緒にっなりますっ!それがっ、私のっ、幸せですっ」
リリィは殿下の手を握る手に力を込め、殿下に訴える。リリィの懸命の訴えに殿下は首を横に振る。
「ごめん、リリィ。僕じゃ君を幸せにできない。僕と一緒になっても傷つけるだけだ」
「そんなっ!…なんでっ!どうしてっ⁈」
「僕にとってリリィは妹みたいに大切な存在だけど、逆をいえば、それ以上の感情を君に向けることができない。だから僕の妃になっても、君が辛くなるだけだ」
殿下は最初ははっきり答えなかった質問の返答をしっかりリリィに告げる。それは残酷だけど、殿下の本心なのだろう。リリィが殿下を諦められるように、それを伝えたのも殿下の優しさだったのかもしれない。
「そんなっ…いやっいやっ」
殿下から告げられたリリィは力なくうなだれて、現実から逃れるように耳を塞ぎ泣き叫ぶ。
侯爵子息様はそんなリリィを見兼ね、落ち着くように背中をさする。私はリリィに何て声をかけたらいいか分からず、リリィの手を握ろうと手を伸ばした。
「リリィ…」
「やめてっ…あなたにっ、慰められたくないっ!…殿下から、寵愛を受けるのがっ、なんでっ、あなたなのっ?あなたはっ、殿下のためにっ、何の努力をしてきたのっ⁈」
リリィは私の手を払いのけると、行き場のなくした感情を私にぶつける。言われた内容はもっともで、反論しようがなかった。でも、それをリリィに言われたのがショックで仕方なかった。きっと、笑いながら話しているときも、リリィは心の片隅でずっと、思っていたんだろう。
-リリィ、違うの。寵愛なんか受けていないの
せめて、リリィに釈明しようと私が口を開くまえに
「リリィ、今回責められるべきは僕だ。僕への批難はいくらでも受け止める。だからツィーリィを責めるのは辞めてくれ」
殿下が私を庇う。それにリリィが反応し、また泣きじゃくる。そのすぐ後に、御者から「王城に着きました」と告げられた。
「ツィーリィ、行こうか」
「でもっ」
殿下が馬車を降りるように私の腰に手を回すが、私はリリィを放っておけなくて、降りる気にならなかった。
「あんたが近くに居ると、リリィがまた暴走する。リリィのためを思うなら、落ち着くまでそっとして欲しい」
「分かりました…」
侯爵子息様にそう告げられた私は引き下がるしかなかった。
賊に襲われ恐怖で一杯だったはずの心は、いつの間にか友達を失いそうな不安でいっぱいになっていた。
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