今日もまた孤高のアルファを、こいねがう

きど

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第七話

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「それじゃあ、場所を移そうか。悪いけど、リーテを借りていくね」

「もう、こちらの要件は済んでいたので。…あの、リーテをあまり責めないでやってください」

アルヴィさんが、一応といった感じでサージャに断りを入れる。そんな断りをいれなくなたって、ここの使用人達が、シャロルの寵姫の使用人頭の申し出を拒否できるはずがないのだ。
それでも、俺達の雰囲気を敏感に感じ取ったサージャが、おそるおそるといった様子でアルヴィさんに伝える。

「んー…君に気遣われるこてを、リーテはやらかしたんだね」

当のアルヴィさんは、一瞬考えた素振りする。それから、サージャが持つチリトリの中身に視線をやると、全て理解したようだった。

「…はい。その件も、一緒に報告させてください」

「うん。じゃあ行こうか」

俺の返事を聞いたアルヴィさんが踵を返して元来た道に戻る。俺は屈んだ姿勢から腰をあげる。
まだ屈んだままだったサージャは、申し訳なさそうにごめんと、ジェスチャーをした。
サージャは余計なことをしたと思っているのだろう。
俺はサージャに大丈夫と笑顔で片手を仰ぐジェスチャーをしてから、アルヴィさんの後を追った。

サージャとのやり取りで、一時忘れられていた自己嫌悪がぶり返し、ついていく足取りはこれ以上ないほどに重かった。

* * *
「そこ座って」

「はい…あの、カリーノ様は外出されているんですか?」

アルヴィさんに連れてこられた先は、意外にもカリーノ様の私室だった。
俺は席に腰掛けるが、カリーノ様がどうしているのかが気がかりで、妙にソワソワしてしまう。

「あぁ、今は眠られているよ。発情期で体力が消耗してるから、話し声程度じゃ起きないよ」

「そうなんですね…」

発情期の間は、寝食を忘れ行為に没頭するから明けた日は1日中眠っているなんてことも珍しくない。
俺達がいる主室からカリーノ様の寝室までは扉が一枚あるだけ。俺達の話し声が寝室に聞こえていても、今は問題ないらしい。

カリーノ様が今、その状態だということは発情期期間中、シャロルとずっと…。
朝にシャロルと会ったときから、そんなこと分かっていたはずなのに、二人の姿を想像してしまい、胸が絞られたように苦しくなる。

「眉間にシワが寄ってるよ。あまり構えないでと言いたいけど、無理だよね。…回りくどいの好きじゃないから、直球な質問をするけど、殿下とはどこまで関係を持ったの?」

想像して、それが表情に出てしまっていたらしい。アルヴィさんは、それを別のものだと勘違いしたみたいだけど、今はそれがありがたい気がした。
何故なら、質問をするアルヴィさんの目は冷たく、俺を品定めするように見つめていたから。

-なんて、答えるのが正解なんだろ。
過去の関係も正直に話した方がいいのか?

「……」

「……」

どう回答するか悩み口を開けずいた。アルヴィさんは俺の答えを静かに待ち、俺達の間には重苦しい沈黙が流れる。

「あのね、これは僕の個人的な興味じゃなくて、君が殿下と関係を持っているならカリーノ様の側にはもう置けないと考えているんだけど?」

待ちかねたアルヴィさんの言葉は、至極当然で反論しようが無かった。
使用人を解雇されればシャロルとの接点はなくなる。それは願ったり叶ったりじゃないか。もう逢えない、逢う資格なんてないと思っていたんだから。

「そうですよね。…王城に来てからは、殿下とは何も…」

でも、口から出たのは陳腐な言い訳だった。話す内容に嘘はない。ハルバーに連れられ王城に来てからは、シャロルと関係を持ってない。

「キスしようとしてたのに?」

「それはっ、雰囲気でそうなっただけで、殿下とどうこうなんて、あり得ないっ」

そう。シャロルと俺が再び関係を持つなんてあり得ない。あっちゃいけないんだ。
だって、シャロルはカリーノ様を大切な番、アルファの婚約者を愛してると言ったんだ。
それなのに、俺を忘れられなかった。まだ愛してるなど、きっと、あいつには戯言にすぎないのだから。
そう思うと、胸が苦しいのと、腹の奥から込み上げてくるものが、ごちゃ混ぜになった。

「あり得ない、ね。……それなら、なんで君は泣いているの?」

「…すみっ、ません。理由はっ、言えっないっ」

一気に昂った感情は制御不能で、涙と嗚咽が溢れ止まらなくなる。

「そう。これは僕の独り言だから気にしないで欲しいのだけど、お茶会である噂を聞いたんだ。
『シャロル殿下は過去に庶民出のオメガを正室に召し上げようとしたけど、そのオメガは殿下を裏切って、別のアルファと番になってしまった。それで傷心した殿下は、心の穴を埋めるためにオメガの園を作った』
正直、その時は所詮は噂でしかないと思ってたんだけど、殿下が手を出そうとしていたんだから、君がそのオメガなの?」

独り言と言う割には、こちらをしっかり見ている。もしかしたら、カマをかけられているのかも。
でも、それでも良かった。シャロルが大切な番だといった、カリーノあの人に知られてしまえばいいのにと思ったんだ。
シャロルが忘れられないオメガは俺だってこと。
これは自分が望んでも手に入らなかった場所にいる彼女への嫉妬でしかないと、頭の一部では理解してる。
でも、俺は……

「殿下っ…シャロルがっ、今でも…俺を思い続けてるかは、分かんっないです。…でもっ、シャロルとはっ…恋人でした」

言ってしまった。もしかしたら、使用人をクビになるかも。

「そうなんだ」

「あのっ…俺達の昔のはなしっ、聞いてくれませんか?」

アルヴィさんは、怪訝そうな表情をすることもなく、ただ静かに頷いた。

* * *
俺の生まれ育った国は、リドールに統治されるまで、すごく貧しくて、スラムみたいな場所だったんです。
だから、リドールが統治するために派遣した軍隊に、物乞いする輩や、統治後の益を得るため媚を売る輩がいました。

俺や仲間はオメガだったので…学がないオメガが稼ぐ手段は一つしかなくて、体を売るしかありませんでした。
リドール側も軍人の息抜きに娼婦や男娼の出入りを許してましたから。

俺は、その時が初めてだったので慣れてる仲間に、高く買ってもらう交渉や、最後までさせないテクニックを教わってました。

---
「いいか!お前は処女だから値段は出来る限り釣り上げろ!」

指南役の仲間は念を押すように俺に言った。

「釣り上げたら買ってくれなくない?」

「バカだなぁ。男は初めてって言葉に弱いんだよ」

俺達の会話を聞いて別の仲間が間に入ってくる。

「あっ!でも、最後までさせなかったら、ずっと初物で押し通せるぞ!」

「最後までさせないって、そんなこと出来るの?」

「まあ、それは口でしたり手で抜いたりして、のらりくらりしてかな。でも、どんな時でも頸は噛ませたらダメだぞ」

俺達は体を売るためにリドール軍の駐在所を目指していた。みんな、満足に食べていないから痩せていて、着ているものは粗末だった。それに布切れを首を巻いただけの、頸を守るには心許ない服装だった。

「そうそう!噛ませるならお貴族様じゃなきゃ。雇われ軍人なんかに噛ませたら終わりだよ!」

「そういや今回の駐軍には、王族がいるらしいよ!王族は無理でも、取り巻き貴族と番になれたら、こんな生活ともおさらばできるよ!」

「あと、アプローチは下っ端じゃなくて上官から!下っ端の相手をした男娼なんか上の奴は買ってくれないからね!」

男娼歴が長い仲間達が注意事項を親切に教えてくれた。
そんな上手くいくかな?と若干不安を覚えたが、その不安を解消する前に駐在所に着いてしまった。

「稼ぐよー!」

指南役の仲間は喝を入れるように言うと俺の手をグイグイ引っ張っていった。

---
「閣下この子、初めてなんです!手解きしてあげてください」

指南役は上官と思しきおじさんに、俺を売り込んでいく。

「うーん、この子より君がいいんだけど、君いくら?」

「えー?僕ですかぁ?高いですよ?」

指南役は俺を気にしているようだったので、背中をそっと押す
すると、彼は頑張れと俺にウィンクしてから、おじさんの腕にしがみついて二人でどっかに行った

エールを送られた俺は結局うまくアプローチできなくて、駐在所の敷地内にある大きな木に寄りかかって時間を潰してた。
人通りが少ない場所で、オメガが一人なんて、危機感がなかった。
下っ端らしき軍人、数人がニヤニヤしながら近づいてきた。

「ねぇ、あんたさ、スラムの男娼だろ?」

「俺達、疲れて溜まってるんだ」

「ヤらせろよ」

そいつらは好き好きに発すると、俺の手を乱暴に取ると、俺をうつ伏せに組み敷く

「やめろよ!良いって言ってないだろ!」

「あー、うるさいうるさい。スラムのオメガは黙って股開けばいいんだ」

「金が欲しいの?やるよ」

抗議する俺を軽くあしらい、うつ伏せになる俺の顔の横に銅貨を一枚投げつける。

「っざけんな!三人相手で、そんな安いわけないだろ!」

「あー、うるさいお口は塞ぎましょうね」

「ふがっ」

俺を組み敷く男が、俺の首の布切れを取ると、口に詰め込む

「じゃあ、俺からな」

下着を剥ぎ、ろくに慣らすこともなく仲間の一人が俺の後孔に固くヌルヌルするものを押し付ける。それが何かなんてすぐに分かり、ゾワッと全身に鳥肌がたった。

「お前、もうギンギンなの!ウケる!」

「うるせー!溜まってたんだよ」

「早く済ませろよー!俺達だって楽しみたいから」

あぁ、このままじゃ、こんな奴らに犯される。やだ!そんなの絶対やだ!
でも、大声も出せないし、体にのしかかる重みから逃れようともがいても、無駄だった。

最悪だ。そう思った時

「うるさい」

何故か上の方から声が聞こえた
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