Doll Master

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【Doll Master】⑤

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そのまましばらく快斗と愛子のじゃれあいを見ていたが、再び本格的な喧嘩になりそうだったので急遽二人の間に入って仲裁した。

「まあまあその辺にしとけよ、二人とも。快斗はそろそろ準備があるだろ?」

「おっと、もうそんな時間か。ったく、アホ子の所為で忘れるとこだったぜ」

「何よ、それー!?あたしの所為じゃなくて、快斗がバカなだけでしょ!」

「んだと!」

「何よ!」

「はいはい、喧嘩はそこまで。快斗も一々突っかからない」

懲りない二人を宥めつつ、ため息と共に快斗を引き離す。

「だって愛子が…」

「あんまりうるさく言うなら、本番まで俺が静かにさせてやってもいいぞ?」

「…え、遠慮します」

半眼で片足を軽く上げて言うと、快斗は蒼白になって首をブンブンと横に振った。

言ってはなんだが、新一はスポーツ全般をトップレベルでプレイできるある意味超人である。つまり、そんな彼の蹴りは、軒並み犯罪者を一発KOするくらいの威力があった。

今、新一の蹴りを食らえば丸一日は昏倒しているだろう。快斗が嫌がるのも道理である。

ったく、世話の掛かる奴だ。

 そんな新一の様子に苦笑し、貴美も愛子に声を掛ける。

「ほら、西本さんも邪魔しちゃ彼らに悪いでしょ。そろそろ行くわよ」

「そうだね。じゃ、快斗!マジック頑張ってね!それと…無茶はしないでね?」

そんな貴美の言葉にあっさりと頷き、愛子は快斗に向けてエールを送る。

「…おう!今回は新一もいるからな、特別バージョンだ。楽しみにしてろよな!それと絶対、Doll Masterを捕まえてやる!」

それにちょっと照れたように鼻の頭を掻きながら、しかし快斗はしっかりとした声で答えた。

「うん!あんな奴、お父さんがぱぱっと捕まえちゃうんだから。行こ、貴美ちゃん」

「ええ」

快斗のしっかりした返答に安心したのか、愛子は足早に客席の方へ帰っていく。



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