キミのとなり

樺純

文字の大きさ
32 / 92

第三十二話

しおりを挟む
ユオサイド

みんなごめんなさい。

私のせいでせっかく楽しくしてたのが台無しですね。

美沙さんなんて今にも泣きそうな顔で私の頭を優しく撫でてくれるし、誠司さんも真人くんも困った顔して私をみてる。

ホントにどうしちゃったんだろ私…なんで泣いてるんだろ?

元彼に振られた時だって泣かなかったのに…何が悲しくて泣いてるんだろ。

私はこんなにも涙が出てくる理由がわからない。

真人くんが誠司さんと美沙さんに説明をしてくれている間も私の涙は止まることはないのに、何故か頭の中は酔いが覚めていった。

あの女の人の名前を知りさらにモヤモヤが膨らんでいく。

アヨさんって言うんだ…名前まで綺麗でムカつく。

心の中でそう思っていると美沙さんは私の心を読んでいるのだろうか?

私以上に怒りに震えた声でアヨさんについて聞いていた。

S「半年前までウチの店でレセプションとして働いてた子だよ。真人と入れ違いで辞めたんだけど…」

そうなんだ。

純太くんと一緒に働いてたんだ…

それだけ?

ホントに一緒に働いてただけ?

あの人は私の知らない純太くんは知っている。

これは女の勘

そう思ったら胸の奥が黒いモノで包まれた。

私は1人で立ち上がりカバンを持って個室を出た。

頭は酔いが覚めても体はそうはいかない。

やっぱりまだ足元がフラつく。

扉を開けて壁を支えにしながら個室を出て歩いているとそこには…今1番会いたくない純太くんが立っていた。

なんで…なんでいるの…

泣き顔なんてみられたくない…

なのに足が動かないよ…

美「ユオ?」

後ろから聞こえた美沙さんの声で私は我に返った。

美「純太くん、悪いけど先に失礼するね。」

美沙さんは私の手を引っ張って歩き出す。

J「待って美沙さんちょっとだけユオと話させて?」

美沙さんは私の顔を覗き込み、私より泣きそうな顔で「どうする?」と尋ねた。

美沙さんに無言のまま頷くと純太くんの顔を見て言った。

Y「嘘つきとは話したくない。失礼します。」

きっと、私はもう純太くんを好きになってしまった。

だからもう、これ以上傷つきたくなくて予防線を張る。

そんな情け無い自分が自分で嫌になった。

こんなことなら好きだと気づかない方が…

素直でいれたのかもしれない…

J「ユオごめん…」

私は視線を落とし謝る純太くんを通り過ぎると美沙さんの手を借りながら店を出た。

つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

思い出のチョコレートエッグ

ライヒェル
恋愛
失恋傷心旅行に出た花音は、思い出の地、オランダでの出会いをきっかけに、ワーキングホリデー制度を利用し、ドイツの首都、ベルリンに1年限定で住むことを決意する。 慣れない海外生活に戸惑い、異国ならではの苦労もするが、やがて、日々の生活がリズムに乗り始めたころ、とてつもなく魅力的な男性と出会う。 秘密の多い彼との恋愛、彼を取り巻く複雑な人間関係、初めて経験するセレブの世界。 主人公、花音の人生パズルが、紆余曲折を経て、ついに最後のピースがぴったりはまり完成するまでを追う、胸キュン&溺愛系ラブストーリーです。 * ドイツ在住の作者がお届けする、ヨーロッパを舞台にした、喜怒哀楽満載のラブストーリー。 * 外国での生活や、外国人との恋愛の様子をリアルに感じて、主人公の日々を間近に見ているような気分になれる内容となっています。 * 実在する場所と人物を一部モデルにした、リアリティ感の溢れる長編小説です。

【完結】指先が触れる距離

山田森湖
恋愛
オフィスの隣の席に座る彼女、田中美咲。 必要最低限の会話しか交わさない同僚――そのはずなのに、いつしか彼女の小さな仕草や変化に心を奪われていく。 「おはようございます」の一言、資料を受け渡すときの指先の触れ合い、ふと香るシャンプーの匂い……。 手を伸ばせば届く距離なのに、簡単には踏み込めない関係。 近いようで遠い「隣の席」から始まる、ささやかで切ないオフィスラブストーリー。

大好きな背中

詩織
恋愛
4年付き合ってた彼氏に振られて、同僚に合コンに誘われた。 あまり合コンなんか参加したことないから何話したらいいのか… 同じように困ってる男性が1人いた

羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。

泉野あおい
恋愛
人の気持ちに重い軽いがあるなんて変だと思ってた。 でも今、確かに思ってる。 ―――この愛は、重い。 ------------------------------------------ 羽柴健人(30) 羽柴法律事務所所長 鳳凰グループ法律顧問 座右の銘『危ない橋ほど渡りたい。』 好き:柊みゆ 嫌い:褒められること × 柊 みゆ(28) 弱小飲料メーカー→鳳凰グループ・ホウオウ総務部 座右の銘『石橋は叩いて渡りたい。』 好き:走ること 苦手:羽柴健人 ------------------------------------------

冷たい外科医の心を溶かしたのは

みずほ
恋愛
冷たい外科医と天然万年脳内お花畑ちゃんの、年齢差ラブコメです。 《あらすじ》 都心の二次救急病院で外科医師として働く永崎彰人。夜間当直中、急アルとして診た患者が突然自分の妹だと名乗り、まさかの波乱しかない同居生活がスタート。悠々自適な30代独身ライフに割り込んできた、自称妹に振り回される日々。 アホ女相手に恋愛なんて絶対したくない冷たい外科医vsネジが2、3本吹っ飛んだ自己肯定感の塊、タフなポジティブガール。 ラブよりもコメディ寄りかもしれません。ずっとドタバタしてます。 元々ベリカに掲載していました。 昔書いた作品でツッコミどころ満載のお話ですが、サクッと読めるので何かの片手間にお読み頂ければ幸いです。

東野君の特別

藤谷 郁
恋愛
大学受験のため名古屋の叔母宅を訪れた佐奈(さな)は、ご近所の喫茶店『東野珈琲店』で、爽やかで優しい東野(あずまの)君に出会う。 「春になったらまたおいで。キャンパスを案内する」 約束してくれた彼は、佐奈の志望するA大の学生だった。初めてづくしの大学生活に戸惑いながらも、少しずつ成長していく佐奈。 大好きな東野君に導かれて…… ※過去作を全年齢向けに改稿済 ※エブリスタさまにも投稿します

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

処理中です...