二人の王子様はどっちが私の王様?

樺純

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83話

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アナside

私とユナはヘアメイクさんに仕上げてもらい衣装に袖を通す。

セナさんに渡された小物を身につけ、最終チェックを細かくセナさんがしていく。

Y「そう言えば…監督さん…まだ来ないの?」

ユナがセナさんのチェックを受けながらそう問いかける。

確かに現場に入ってすぐイオさんに会うことを覚悟していたのにそこには姿がなかった。

SN「なんか寝坊したみたいですよ?もうすぐ着くって言ってましたけどね?」

Y「寝坊って…子供かよ。」

ユナがそう言うとセナさんは少し笑い、私の最終チェックをし始めた。

SN「アナさん…この前は本当すいませんでした…」

セナさんは大きな花の飾りに隠れたアザを見て言った。

A「気にしないで?私こそ…なんかごめんね?」

そう言うとセナさんは微笑み、お花の飾りを丁寧に広げて形を整えていく。

スタッフ「すいません~監督がいらっしゃったので準備出来たらスタジオまでお願いしま~す!」

スタッフさんのよく通る声が控え室に響き、私は小さく気合いをいれた。

A「よしっ…!」

Y「アナ行こう!」

A「うん!」

私とユナが揃ってスタジオへ歩いて行く。

後ろからセナさんが私達の羽織る物を持って付いてきてくれ、スタジオに向かっているとメンバーと一緒になった。

T「アナ…似合ってるよ。」

トウヤはそう言って私の前を歩いて先にスタジオへ入る。

ジョウキも私をみてゆっくり微笑み、無言のままトウヤの後ろをついてスタジオへ入った。

S「いやぁ~アナの衣装最高だな?やっぱり俺、天才だわ。」

ショウくんが可愛い歯茎を私に見せながら微笑み、私と肩を組んでドヤ顔を炸裂させる。

SN「ショウさん!アナさんの衣装が乱れるので離れてください!」

セナさんがそう言って私とショウくんの間に入り、早くスタジオへ向かうようにショウくんの背中をセナさんが押す。

すると横から懐かしい声が飛び込んできた。

「アナ…?」

その声への方をみると少し雰囲気の変わったイオさんが立っていた。

その顔は私の事を見て驚いている。

ユナはイオさんの姿に気づき私の横にスッと立った。

Y「はじめまして本日、お世話になりますユナとこちらがアナと申します。よろしくお願いします。」

ユナは軽く頭を下げて私もそれに続いてイオさんに頭を下げた。

※「あ……K.イオと申します…よろしく…」

A「よろしくお願いします。」

私はそう言ってイオさんを廊下に残し、ユナと2人で先にスタジオへ入った。

私は後ろからついてくる乾いた足音に見抜きもせず、私とユナはメンバーの元へと足早に向かった。

スタジオに全員が集まり改めて挨拶と紹介をされた。

あれからずっとイオさんは私の方をチラチラと見てはすぐに下を向く。

そんな様子を見ても私の心は冷静を保ち、なんの感情も浮かんでこなかった。

MV撮影の説明を軽く受けると、今回のMVはメンバーがそれぞれ自分達のシーンをプロデュースすると言う内容だった。

小柄な私が相手役をさせてもらうのは身長差の関係でショウくんとハヤセ、そしてマハロ。

ユナは背が高いのでノイくんとレンくんにトウヤ、ジョウキとパートナーを組むことになった。

Y「逆だったらよかったのに…」

私は残念そうなユナがそうつぶやくもんだから思わず吹き出した。

A「最後まで無事に終わる事だけを考えよ?」

Y「ですね?今日終わった後のお酒が楽しみだな~!」

そんな会話をしているとユナの撮影が始まった。

モニターを見ながらユナの演技に入り込んでしまっている自分がいる。

カットが掛かりユナの表情がリラックスした顔に戻る。

J「ユナ…いい演技するな?顔は映らないのに。」

気づけば私の横にジョウキが立っていた。

A「ホントすごい…なんか不安になってきたし…」

J「大丈夫だよ。みんなに任せてたらなんとかなるよ。」

A「だといいんだけど…」

J「今から俺とトウヤくんの撮影だからちゃんと見といてよ?」

ジョウキはそう言ってセットの方へ歩いて行った。

集中するためか控え室に戻っていたトウヤもスタジオに入り、私に軽く微笑んでセットの方へ歩いて行く。

撮影がはじまりユナを含めた3人の姿がモニターに映る。

ソファに座って楽しそうに話すトウヤとユナ。

時折、ユナの綺麗な黒髪を撫でては優しく微笑み寄り添うトウヤ。

そんな様子を少し離れた頃で切なそうな顔で見つめるジョウキは、ギュッと下唇を噛みそしてゆっくりと2人に近づき、床に座ってユナの長い足にそっと寄り添う。

3人の演技をみてギシギシと私の心が音を立てる…

私が好きなのはトウヤ?

それともジョウキ…?

モニター越しのユナに自分を重ねて頭の中で考える。

M「アナちゃん…アナちゃん!」

気づくと3人の撮影は終わっていて、私の横にはマハロが不思議そうな顔をして立っていた。

A「ごめん!ちょっとボーっとしちゃってた!」

M「大丈夫?撮影はじまるから俺たちもあっちに行こう。」

マハロがセットを指して微笑む。

A「緊張してきた…」

M「大丈夫!俺に任せて?」

そう言ったマハロはいつもの可愛い顔から男の顔になっていて、なんだかユナに申し訳ない気持ちになるぐらいにマハロがカッコ良かった。


つづく
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