【BL】涙で育った小さな愛

樺純

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2話

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トボトボひとりで暗くなった道を歩く。

嫌いになったわけじゃないのに…なんで…?

別れるってなに…?

別れるくせに…なんでお揃いのブレスレットなんてプレゼントしたの…?

全然意味わかんないよ…シロヤくん…

すると、俺のスマホがなった。

シロヤくんからの電話かも…!!

少しの期待を込めてスマホを見るとそこに記されていたのは…

着信  クウガ

なんでシロヤくんは俺に電話1つもかけてくれないのだろうか…

俺たちは本当にあんな事で終わってしまうのだろうか?

好きなのに…辛いって…

好きなのに…別れたいって…

全然意味わかんないよ…

T「もしもし…なに?」

K「今どこにいるの?」

T「クウガに関係ないだろ。」

K「シロヤくんから連絡あったよ。迎えに行くから場所言って。」

T「シロヤくんはなんでクウガに連絡してんの…意味分かんない…ねぇ…クウガ?俺ってさ…そんなに魅力ないかな…?」

K「はぁ?今更気づいた?」

T「……やっぱりそうだよね…シロヤくんが付き合ってくれた事自体…奇跡だよね…」

K「くだらねぇこと言ってないで早く場所言えって…心配するじゃん。」

クウガの言葉使いを聞いて、クウガがイラついてることが分かり俺は素直に居場所を伝えた。

T「……〇〇公園。」

K「車で行くから着いたらまた連絡する。」

T「うん…」

俺はぼんやりと薄暗い空に浮かぶ月を眺めていた。

シロヤくんといつか一緒に綺麗な月の見える所に旅行に行こうと約束をした。

一緒に温泉に入って…美味しいご飯を食べて…

いつか叶うと思っていたシロヤくんとの約束はもう叶うことがないのだろうか?

そんな事を考えているとクウガから着信が鳴った。

T「はい。」

K「着いたから、公園の入り口まで来て。」

T「うん。」

トボトボと入り口まで歩いていくとクウガは車を止めてガードレールに寄り掛かりながら俺を待っていた。

俺はクウガの姿が見えて涙が出そうになるのを必死で堪えると自然と足が止まった。

K「何そんなとこで突っ立ってんの…早く乗って風邪…ひくよ。」

クウガはそう言って助手席の扉を開ける。

T「うん…」

車の中に乗り込むとそこはクウガの匂いに包まれていて…不思議といけない事をしている気持ちに襲われた。

K「で?」

クウガは温かい缶コーヒーを開けて俺にそれを渡すとそう問いかける。

T「……シロヤくんはやっぱり俺のこと…好きじゃないみたい。」

K「はぁ~本気でそんなくだらねぇこと言ってんの?」

T「断られた…俺がいけなかったのかな?シロヤくんが別れよって…」

自分で言っている事が情けなくて涙が溢れた…

K「シロヤくんはテオキのこと…好きだよ。でも、抱けないんだよ…テオキのことが大事だから。」

T「そんなの意味わかんないよ…なんで?なんで好きなのに抱けないの?なんで好きなのに別れるとか言うんだよ…」

K「それは…」

クウガの顔を見るとなぜか俺よりも苦しそうな顔をしていて…

なぜか俺はそれ以上聞いてはいけないような気がしてお互い無言のまま俺達は家へと帰った。

次の日

スマホを見てもシロヤくんからの連絡はなかった。

仕方なく俺から謝りのメッセージを入れたが、ずっと既読がつく事はなかった。

そして俺は体調を崩し高熱にうなされ、仕事は休み、病院に行く事も出来ず、ただ家のベッドの上で意識が朦朧としていた。

頭がボーッとしながらも震える手でシロヤくんに電話をしたり、メッセージを入れたりしても折り返しの連絡は一切来ない。

それで俺は気づいた。

あの時にシロヤくんが言った「別れよう」その言葉は本気だったんだなって。

俺がそれを理解すると同時に身体に力が入らず頭の中がふわふわとして遠のいていく。

はぁ…もう…俺このまま死んじゃうのかな…?

ふと、誰かが俺の家の扉を蹴破り入ってきた気がしたけど…

俺はそのまま暗い暗闇の中へと落ちていった。

T「シロヤくん…?」

眩しい…

目を開けると見慣れない天井が見え勢いよく起き上がるとそこは…

T「病院?」

腕には点滴が繋がれていた。

シロヤくんが病院に連れてきてくれたのだろうか…?

俺は眠っている間、不思議な夢をみた。

暗闇のなかシロヤくんは優しい光に照らされ、俺を優しい目で見つめていた。

T「シロヤくん?」

そう声をかければヒョンはニコっと微笑んだ。

T「シロヤくん!!」

俺がシロヤくんの所に行こうと足を一歩だすと

S「来ちゃ…ダメだ…テオキの来るとこじゃないよ。」

T「シロヤくん?」

S「幸せになるんだよ…テオキは幸せにならなきゃ…ダメなんだよ…」

T「なに…言ってんの?」

S「テオキ…最後に愛してるって…言ってくれる?」

シロヤくんの目はいつもより穏やかで、なぜか物凄く遠い人のように感じた。

T「シロヤくん…愛してるよ。」

そう言うとシロヤくんは微笑みながは頷き…消えた。

あの夢は一体…なんだったんだろ?

シロヤくんに…会いたい。

今すぐ会いたい。

俺は腕に刺さった点滴の針を勢いよく抜き、そのまま病院を抜け出した。

病み上がりの身体で走るのは正直、苦しくて胸が痛い。

病院のスリッパで足の皮膚が擦れて血が出ていた。

早く行かなきゃ…

早くシロヤくんの家に行かなきゃ…

それだけが頭の中にクルクルと周り無我夢中でシロヤくんの家まで走った。

ハァ…ハァ…ハァ…

なんとかシロヤくんの家に着き、俺は玄関の前で息を整える。

きっと追い返されるだろう…

でも…会いたい…

もう一度会ってちゃんと話したい。

シロヤくんへ最後に投げた言葉が大っ嫌いだなんて…

そんなの辛すぎるよ…

夢の中でじゃなくて…ちゃんと最後は顔を見て愛してるそう伝えてお別れしたいんだ。

俺はガクガクと震える手でインターホンを押した。

しかし…返答はない。

何度かインターホンを押すと…

隣に住む人が偶然、出てきた。

俺が軽く会釈すると…

「お隣さんのお知り合いですか?」

俺はそう問いかけられた。

T「はい…そうです。」

「お隣さんなら…ちょうど1週間前にこの廊下で倒れてそのまま病院に運ばれましたよ?」

T「え…?」

突然の事で俺は言葉が出てこず…微かに身体が震える。

「私が救急車呼んだんですけど大丈夫だったんですかね…?じゃ、失礼します。」

そう言って隣人は消えて行った。

俺は頭が真っ白になってなにも考えられない。

1週間前って…俺がこの部屋を飛び出した日…?

俺が帰ったあと…何があったんだ…?

涙が溢れて膝に力が入らず俺はその場に思わずしゃがみこんだ。

足音が聞こえて震える足で立ちがろうとするとグイっと腕を引っ張り上げられた。

K「病院抜け出してマジ何してんだよ…家に行ってもいないし…探した。スマホも持ってないのに…。」

見上げるとそこには辛そうな目をしたクウガが立っていた。

涙でぐしゃぐしゃになる俺の頬を親指で拭いてクウガは下を向いた。

T「シロヤくんが…入院したって…嘘だよね…?」

俺がクウガの腕にしがみ付きそう問いかけると…

K「ほんとだよ…中で話そう…」

そう言ってクウガはシロヤくんの部屋の鍵を開けて中に入る。

T「なんで…クウガが鍵…」

K「いいから…」

そう言って強引に中に入れられソファに座らされた。

大好きだったシロヤくんの匂いが部屋の中から…

消えていた。

K「今から俺が話す事…落ち着いついてよく聞いてほしい…」

そう言ってクウガは俺の肩を掴んだ。

K「シロヤくんは…病気だったんだ。」

クウガの口からその言葉が出た時…

身体が震えて血の気がひいた。

T「え……」

K「脳腫瘍で…出来た場所が手術できない場所だったんだ。それが分かったのが2カ月前…もう、その時に長くないって分かってたから…シロヤくんはテオキと別れようと思うって俺に言ってた。だけど…シロヤくんは本当にテオキの事が好きで…離れようとしても…離れられなかったんだよ。」

限界だった。

クウガの言葉を最後まで聞こうと思っても身体が拒否をする。

苦しくて息する事さえ辛くて…もう…自分の身体じゃないみたいだった。

K「シロヤくんはそばにいるだけでいいって…だけどテオキにとってシロヤくんは初めての恋人で…シロヤくんは初めての相手が死んじゃうなんてテオキがあまりにも可哀想すぎるって言って…ずっとテオキに手を出さなかったんだよ。」

T「俺のせいで…シロヤくん入院したの…?」

K「テオキのせいじゃないよ…そういう運命だったんだ。あの日、テオキが飛び出してすぐ、シロヤくんは俺に連絡してきた。頭が痛くて探しに行けないからって俺の代わりに探してくれって言われたんだよ。だけど、そんな中でもやっぱり、シロヤくんはテオキを探しに行こうとしたんだろな…廊下に出てそこで激しい頭痛に襲われて病院に運ばれたんだ…」

T「なんで…なんで今まで病気のこと言ってくれなかったの…」

K「シロヤくんに言われてたんだ…テオキには病気のことは話すなって…」

T「…会いたい…シロヤくんに会いたい…」

K「それは…無理だよ…」

T「なんで…?シロヤくんが俺と会いたくないって?もう、俺と別れたから!?」

K「違う…違うよ…」

T「じゃ…なんで…」

K「もう…いないから…シロヤくんはもう…」

T「え……?そ…そんな嘘…やめろよ…!!」

K「昨日…最後にテオキの名前を呼んでそのまま…」

そう言ったクウガの目から涙が一筋…こぼれた。

つづく
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