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第一章
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濡れた身体に纏わり付く熱気…
舌を夢中で絡め合いふと、唇が離れれば互いの蜜で糸が引く。
それを手繰り寄せるかのようにまた、惹かれ合う唇はもう言葉にしなくても求めているものは分かっていた。
バタバタと音を立てて靴を脱ぎ捨て、そのままの勢いでテヤサさんをベッドへと押し倒す。
濡れた服が肌に張り付きなかなか脱げないもどかしさ…
その間も雨足は強まる一方で、そんな事も気にする事なく俺たちはただ夢中で肌を重ね合った。
雨音にかき消されるテヤサさんの甘い声。
T「好き……」
たった2文字のその言葉でこんなにも気持ちが満たされることなんてあるのだろうか…?
俺は初めてこの時に知った。
俺はそんなテヤサさんの唇にチュッとキスを落とし、髪を撫でながら言った。
K「一目惚れでした…俺もテヤサさんが好きみたいです……」
そう言うとテヤサさんは俺の後頭部をグイッと引き寄せ唇を重ねる。
薄暗い部屋でピカッと光る雷
俺たちは耳に響く天からの怒りのような唸りを聞きながら…
無我夢中で吐息を混ぜ合い、波のような快楽に溺れながら甘い蜜の交換を繰り返し深く愛し合った。
俺は隣でうつ伏せになり、気怠そうに瞳を閉じるテヤサさんの背中にキスを落とす。
すると、テヤサさんはクルッと振り返り恥ずかしそうにはにかんだ。
K「テヤサさんはなんで雷が苦手なんですか?」
T「ん?うん…恋人だった人がね…雷のなる大雨の日に俺に別れを告げて俺の元から離れていったんだ…それから雷が鳴ると大切な何かを奪われるような気持ちになって…怖い…」
K「もう…怖くない?」
いつの間か俺の腕の中にいるテヤサさんの柔らかな髪を指に絡めると、テヤサさんは俺を見上げた。
T「え?」
K「さっき…してるとき…すごい雨音だったし雷もなってたけど大丈夫そうだったから…」
俺がそう言えばテヤサさんはハッとした顔をする。
K「んふふふw気付いてなかったんですね?」
T「うん…キオに夢中で気づかなかった…雷凄かったんだね…」
そう言ってまつ毛に影を落とすので、俺はギュッとテヤサさんを抱きしめた。
K「ねぇ、テヤサさん。俺はその人とはちがうよ?俺は雨が降って雷のなる中、テヤサさんに出会って恋をした。あの雨が降らなかったら、テヤサさんの店の軒下にも雨宿りしなかったし、雷が鳴らなければ怖がるテヤサさんを抱きしめて守りたい…そう思う事もなかった。テヤサさんがいう大切な何かを奪っていった雨の日に俺はテヤサさんという大切な人と巡り合えた。今日だってほら…この雨のおかげで俺は今、テヤサさんとこうしてる。」
T「キオ…」
K「これから俺が雨をいい思い出に変えてあげる…雨の日でも憂鬱にならないように…ね?」
T「雨に感謝しなきゃだね…こんな素敵な彼を俺の元に連れてきてくれた…でも本当はね?」
K「ん?」
T「俺…ずっと前からキオのこと…知ってた…」
K「え?」
T「店の中でパンを並べながら…店の前を通るキオを毎朝見てた…いつかこの子がパンを買いに来てくれたら嬉しいな…って…いつかこの子と話してみたいな…って…」
そんな可愛くて嬉しい事をいうテヤサさんの髪に俺はキスを落とす。
K「雨が俺たちに出会うキッカケを作ってくれたんだね……」
俺がそう呟くとテヤサさんは顔を上げてニコッと微笑み俺の唇にキスをする。
微笑み合いながら交わされる甘いキスは幸せ以外の何物でもない。
すると…
突然、ピカッと光り耳の奥に響く唸りのような音が鳴った。
T「ひぃ!!?」
K「んふふふw」
俺の胸にしがみ付き怖がる彼の姿が可愛くてつい、俺は笑がこみあげる。
まだ、しばらくは…
この雷のおかげで彼をこの胸に抱いていれそうだ。
次の日
昨日の雨がまだ残っている灰色の空
俺たちは紫色した1つの傘で身を寄せ合い歩く。
テヤサさんの肩が濡れないように俺が傘を傾ければ、テヤサさんが俺の肩が濡れないようにその傘を立て直す。
傘の中はまるで俺たちだけの世界が広がっているみたいで、纏わり付くような湿った空気の中でもとても心地よく、傘にあたる雨音すらも耳触りの良いジャズに聞こえてくる。
昨日、すぐに店に戻ると言って店を出た俺たち。
しかし、約束をすっぽかしてイチャイチャしてた事にジラさんとヨイさんに少しの後ろめたさを感じながら、テヤサさんと一緒にお店へと出勤した。
テヤサさんが恐る恐る扉を開き覗くと…
T「え…ジラさん?」
K「え?」
そこにはジラさんがエプロン姿で店内でパンを並べていた。
慌てて中へ俺たちが入るとジラさんはおはよ~と呑気な声を出して俺たち2人を見つめる。
そして奥から出てきヨイさんはなぜか顔を歪めて腰あたりを撫でながらヨチヨチ歩きで出てきた。
K「ジラさん…なにしてんの?」
J「え?お店のお手伝い。手加減出来なくてつい、張り切りすぎたら…ヨイが」
Y「いちいちうるさい!!そんなくだらないこと言ってないで早くパン並べてください。」
ジラさんの声はヨイさんによって遮られ、ピンクに染まるジラさんの耳と、頬を赤く染めるヨイさんの首元には紅いシルシがチラッと見えていた。
そして、俺は横でポカーンとしているテヤサさんに耳打ちをする。
K「こっちもどうやら雨が恋を実らせたみたいだね(小声)」
T「えぇぇぇ!?2人付き合ったの!?(大声)」
テヤサさんの叫びによって目を逸らし合うふたり。
そんなふたりに俺は笑いがこみあげ、俺はテヤサさんの肩を抱いた。
K「ジラさん、あっちの店は俺に任せてジラさんはパン屋さんのお手伝い頑張ってくださいね。ヨイさんをあんな目にあわせてるんだからちゃんと責任取らないとwじゃ!」
俺がそう言って店を出て傘をさすとテヤサさんも一緒に店の軒下まで出てきた。
T「キオ、行っちゃうの…?」
テヤサさんは眉毛を下げて寂しそうな顔でそう言った。
K「あっちの店も開けないと。」
T「うん…」
パタパタと音を立てて雨が傘にあたる。
俺はその音に耳を傾けながらテヤサさんの手首を掴み自分の胸に引き寄せた。
K「仕事終わったら迎えにくるからね…あ…あとテヤサさんがくれたあのパン…俺の好きな味だったよ。」
俺がそう言えば安心した顔に戻るテヤサさん。
T「ほんと?じゃまた…あのパン作って待ってるね。」
俺はその恥ずかしそうに笑う可愛い彼へ…
雨の匂い漂う甘いキスを落とした。
第二章へつづく
舌を夢中で絡め合いふと、唇が離れれば互いの蜜で糸が引く。
それを手繰り寄せるかのようにまた、惹かれ合う唇はもう言葉にしなくても求めているものは分かっていた。
バタバタと音を立てて靴を脱ぎ捨て、そのままの勢いでテヤサさんをベッドへと押し倒す。
濡れた服が肌に張り付きなかなか脱げないもどかしさ…
その間も雨足は強まる一方で、そんな事も気にする事なく俺たちはただ夢中で肌を重ね合った。
雨音にかき消されるテヤサさんの甘い声。
T「好き……」
たった2文字のその言葉でこんなにも気持ちが満たされることなんてあるのだろうか…?
俺は初めてこの時に知った。
俺はそんなテヤサさんの唇にチュッとキスを落とし、髪を撫でながら言った。
K「一目惚れでした…俺もテヤサさんが好きみたいです……」
そう言うとテヤサさんは俺の後頭部をグイッと引き寄せ唇を重ねる。
薄暗い部屋でピカッと光る雷
俺たちは耳に響く天からの怒りのような唸りを聞きながら…
無我夢中で吐息を混ぜ合い、波のような快楽に溺れながら甘い蜜の交換を繰り返し深く愛し合った。
俺は隣でうつ伏せになり、気怠そうに瞳を閉じるテヤサさんの背中にキスを落とす。
すると、テヤサさんはクルッと振り返り恥ずかしそうにはにかんだ。
K「テヤサさんはなんで雷が苦手なんですか?」
T「ん?うん…恋人だった人がね…雷のなる大雨の日に俺に別れを告げて俺の元から離れていったんだ…それから雷が鳴ると大切な何かを奪われるような気持ちになって…怖い…」
K「もう…怖くない?」
いつの間か俺の腕の中にいるテヤサさんの柔らかな髪を指に絡めると、テヤサさんは俺を見上げた。
T「え?」
K「さっき…してるとき…すごい雨音だったし雷もなってたけど大丈夫そうだったから…」
俺がそう言えばテヤサさんはハッとした顔をする。
K「んふふふw気付いてなかったんですね?」
T「うん…キオに夢中で気づかなかった…雷凄かったんだね…」
そう言ってまつ毛に影を落とすので、俺はギュッとテヤサさんを抱きしめた。
K「ねぇ、テヤサさん。俺はその人とはちがうよ?俺は雨が降って雷のなる中、テヤサさんに出会って恋をした。あの雨が降らなかったら、テヤサさんの店の軒下にも雨宿りしなかったし、雷が鳴らなければ怖がるテヤサさんを抱きしめて守りたい…そう思う事もなかった。テヤサさんがいう大切な何かを奪っていった雨の日に俺はテヤサさんという大切な人と巡り合えた。今日だってほら…この雨のおかげで俺は今、テヤサさんとこうしてる。」
T「キオ…」
K「これから俺が雨をいい思い出に変えてあげる…雨の日でも憂鬱にならないように…ね?」
T「雨に感謝しなきゃだね…こんな素敵な彼を俺の元に連れてきてくれた…でも本当はね?」
K「ん?」
T「俺…ずっと前からキオのこと…知ってた…」
K「え?」
T「店の中でパンを並べながら…店の前を通るキオを毎朝見てた…いつかこの子がパンを買いに来てくれたら嬉しいな…って…いつかこの子と話してみたいな…って…」
そんな可愛くて嬉しい事をいうテヤサさんの髪に俺はキスを落とす。
K「雨が俺たちに出会うキッカケを作ってくれたんだね……」
俺がそう呟くとテヤサさんは顔を上げてニコッと微笑み俺の唇にキスをする。
微笑み合いながら交わされる甘いキスは幸せ以外の何物でもない。
すると…
突然、ピカッと光り耳の奥に響く唸りのような音が鳴った。
T「ひぃ!!?」
K「んふふふw」
俺の胸にしがみ付き怖がる彼の姿が可愛くてつい、俺は笑がこみあげる。
まだ、しばらくは…
この雷のおかげで彼をこの胸に抱いていれそうだ。
次の日
昨日の雨がまだ残っている灰色の空
俺たちは紫色した1つの傘で身を寄せ合い歩く。
テヤサさんの肩が濡れないように俺が傘を傾ければ、テヤサさんが俺の肩が濡れないようにその傘を立て直す。
傘の中はまるで俺たちだけの世界が広がっているみたいで、纏わり付くような湿った空気の中でもとても心地よく、傘にあたる雨音すらも耳触りの良いジャズに聞こえてくる。
昨日、すぐに店に戻ると言って店を出た俺たち。
しかし、約束をすっぽかしてイチャイチャしてた事にジラさんとヨイさんに少しの後ろめたさを感じながら、テヤサさんと一緒にお店へと出勤した。
テヤサさんが恐る恐る扉を開き覗くと…
T「え…ジラさん?」
K「え?」
そこにはジラさんがエプロン姿で店内でパンを並べていた。
慌てて中へ俺たちが入るとジラさんはおはよ~と呑気な声を出して俺たち2人を見つめる。
そして奥から出てきヨイさんはなぜか顔を歪めて腰あたりを撫でながらヨチヨチ歩きで出てきた。
K「ジラさん…なにしてんの?」
J「え?お店のお手伝い。手加減出来なくてつい、張り切りすぎたら…ヨイが」
Y「いちいちうるさい!!そんなくだらないこと言ってないで早くパン並べてください。」
ジラさんの声はヨイさんによって遮られ、ピンクに染まるジラさんの耳と、頬を赤く染めるヨイさんの首元には紅いシルシがチラッと見えていた。
そして、俺は横でポカーンとしているテヤサさんに耳打ちをする。
K「こっちもどうやら雨が恋を実らせたみたいだね(小声)」
T「えぇぇぇ!?2人付き合ったの!?(大声)」
テヤサさんの叫びによって目を逸らし合うふたり。
そんなふたりに俺は笑いがこみあげ、俺はテヤサさんの肩を抱いた。
K「ジラさん、あっちの店は俺に任せてジラさんはパン屋さんのお手伝い頑張ってくださいね。ヨイさんをあんな目にあわせてるんだからちゃんと責任取らないとwじゃ!」
俺がそう言って店を出て傘をさすとテヤサさんも一緒に店の軒下まで出てきた。
T「キオ、行っちゃうの…?」
テヤサさんは眉毛を下げて寂しそうな顔でそう言った。
K「あっちの店も開けないと。」
T「うん…」
パタパタと音を立てて雨が傘にあたる。
俺はその音に耳を傾けながらテヤサさんの手首を掴み自分の胸に引き寄せた。
K「仕事終わったら迎えにくるからね…あ…あとテヤサさんがくれたあのパン…俺の好きな味だったよ。」
俺がそう言えば安心した顔に戻るテヤサさん。
T「ほんと?じゃまた…あのパン作って待ってるね。」
俺はその恥ずかしそうに笑う可愛い彼へ…
雨の匂い漂う甘いキスを落とした。
第二章へつづく
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