【BL】記憶のカケラ

樺純

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35話

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キイチside

あの日、ノイルくんの言葉によって記憶のカケラが頭の中に彷徨いだした俺は、ノイルくんの店を飛び出したあと、慌てて実家に帰った。

突然の息子の帰宅に母ちゃんは驚いた顔をして、俺を出迎える。

K「母ちゃんあのさ…俺が中学生だった頃のアルバムある?」

俺がそう母ちゃんに問いかけると一瞬、母ちゃんの顔は強張ったが、すぐにリビングで待ってなさいとって言ってアルバムを取りに行った。

数年ぶりに訪れた実家。

別に帰れない距離という訳でもないのに帰ってこないのはここに来るたびなぜか、胸が苦しくなるから。

その理由が分からない俺は実家から足が遠のき、母ちゃんや父ちゃんとは外で会うことが多くなっていった。

母ちゃんがアルバムを持ってきてテーブルの上に置くと心配そうな目で俺に問いかけた。

「ここに来てることタカラくんも知ってるの?」

なぜか母ちゃんはいつも俺にタカラくんのことを聞いてくる。

元気にしているのか?ご飯はちゃんと食べてるのか?

笑顔で過ごせているのか?と…

なぜ息子の俺のことよりもタカラくんの事を先に聞くのか不思議で仕方なかった俺が母ちゃんに問いかける。

K「ここに来てること知らないよ…なんで母ちゃんはいつも俺にタカラくんのこと聞くの…」

「それは…あんたが今、タカラくんの家にお世話になってるならでしょ?」

K「それだけ?」

「そうよ。それだけ。」

母ちゃんはそう言うとキッチンへ向かい、俺は目の前にあるアルバムを開く。

俺は中学二年生の時、大きな事故に遭ったというのに身体になんの後遺症もなく過ごせていた。

しかし、その頃から同じ夢を見るようになり、何故か俺はいつも大切な何かを忘れてしまったような気持ちになっていた。

忘れてはいけない何か。

それがなんなのか分からず、母ちゃんや幼なじみのみんなに聞いてみたりしてけど、誰も分からないと言っていたが、もしかしたらそれがあの夢の中の出来事なのかもしれない。

俺はいつもみる夢の続きのような記憶のカケラをノイルくんの言葉によって思い出し、アルバムをめくりながら壊れてしまった記憶のカケラを拾い集めていく。

本当にあの後ろ姿はタカラくんなのか、自分自身の頭に浮かんだ映像に確信が欲しくて俺はその手掛かりを必死で探す。

すると俺は一枚の写真を見つけた。

K「これ……」

そこにはオーバーサイズの白シャツを着たアッシュ色の明るくて長い髪の男の子が俺と肩を組み笑い合っている写真があった。

その姿がついこの前会ったあのイオリという人と重なり俺の頭は混乱した。

俺はその写真を見て固まっていると、キッチンから戻ってきた母ちゃんが俺の見るアルバムを覗き込みながら言った。

「そんな昔の写真みて…可愛いわねタカラくん…またあの頃みたいに髪の毛明るくて伸ばせばいいのに…よく似合ってたわ。」

母ちゃんは俺の前に飲み物を置きながらそう言って驚いた俺は母ちゃんの顔をみあげる。

K「この子はタカラくん…?イオリさんって人じゃなくて…?」

俺がイオリという名前を口にした途端に顔色が変わった母ちゃんをじっと見つめたまま俺は答えを待つ。

すると、母ちゃんは渋々口を開いた。

「確かにタカラくんとイオリくんは二卵性の双子なのにそっくりだった…だけどそこに映っているのは間違いなくタカラくんよ。タカラくんは高校に入ってすぐ髪を明るく染めたの。イオリくんはお母さんの知る限りずっと黒髪のままだったわ。」

そう言われてもう一度その写真に視線を落とすと、その写真に映る男の子の手首には赤いブレスレットが付いていて夢の中のあの人とリンクした。

あの夢の中の人にも赤いブレスレットが付いていた……

K「やっぱり…あの人は…イオリくんじゃない…タカラくんだったんだ…」

俺はタカラくんの後ろ姿を追いかけて、苦しくて辛くて切ない気持ちでいっぱいになってたんだ。

その1つの感情を思い出すと記憶が波のように押し寄せ、全ての記憶のカケラが宙を舞うように俺の目に浮かんでいく。

「俺と付き合って…」

「なんで俺じゃダメなの…」

「タカラなんかと仲良くするなよ…」 

「お願い…俺と付き合ってよ…」

「俺はいつも1人ぼっち…」

「キイチは俺を見捨てないよね…」

「キイチもミズキみたいに俺じゃなくてタカラを選ぶのか?」

「なんで分かってくれないんだよ!!俺が死んでもいいの!?」

俺を追い詰めるその声は店のパーティーの日に聞いたイオリという人の声で…その言葉の主がイオリくんだと記憶を取り戻し始めた俺はやっと気づいた。

イオリくんは……まだ幼かった俺を脅して支配し、無理矢理付き合おうとしてた……?

だからタカラくんの事が好きな俺はあんなにも苦しんで辛くて切なくて…

事故の後でもタカラくんに素直な気持ちを伝えようとすると訳の分からない恐怖に襲われ怯えていたんだ。

記憶はなくても体がそのトラウマを覚えていたのか……

それに気づいた俺は実家を飛び出した。


つづく
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