【BL】記憶のカケラ

樺純

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36話

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キイチside

どうすればもっと鮮明に記憶が戻るのだろう…

病院に行って治療をした方がいいのか…

そんな事を思ったが、病院にいかなくても俺の頭の中には忘れていた記憶が溢れていき、必死で失くした記憶のカケラを整理しているうちに数日が過ぎていった。

こんなにもタカラくんと会わずにいる事のなかった俺は、会えない寂しさから押しつぶされそうになりながらも仕事だけはちゃんとこなしていた。

ちゃんと記憶のカケラを整理したらタカラくんに真実を話に行くと心に決めて。

仕事中、ノイルくんに足りなくなった食材の買い出しを頼まれた俺は小走りで店を出て行くと突然声をかけられ…その声に俺の身体が無意識に反応した。

「キイチ!」

そこにはイオリくんが立っていて俺は固まる。

僅かながらも記憶を取り戻してしまった俺はイオリくんにされた事がトラウマになっているのか、ガクガクと身体が震え出した。

K「イオリくん……?」

恐る恐るそう口にしてみると、自分でも驚くほどにあの頃の記憶がスーッと脳内に入ってきて心臓が動揺しているのか息苦しくなる。

「キイチ…覚えててくれたんだね?嬉しいな…今からどこか行くか?もし、時間あったら食事でもどう?」

K「ごめん俺……」

「もう…俺には二度と会いたくなかった…?」

明るい髪色の毛先を揺らしながらそう言って微笑むイオリくんが俺の腕を掴んだその時…

耳鳴りと共に俺の頭の中にとある場面が浮かんだ。

そうだ…中二になってすぐ…

イオリくんは俺が1人でいると駆け寄ってきて俺に好きだと言って何度か告白をしてきた。

でも、その時の俺はもう既にタカラくんが好きで何度も断り続けていたが、ある日…

1人で歩く俺を見つけたイオリくんはいつものように俺に告白をし、断るとイオリくんは家の前で俺に無理矢理キスをしようとし俺は顔をそむけキスを拒んだ。

そして、イオリくんは笑顔でこう言ったんだった。

「タカラも殺して…俺も死のうかな…」

って…

その言葉から物凄い恐怖を感じたのを鮮明に思い出していく。

今、目の前にはその頃と全く同じ笑顔を見せて俺に話しているイオリくんがいて、それに怯えた俺は思わず後退る。

イオリくんのその笑顔が俺を追い詰め、早く脈を打ち動悸が俺を襲うと一気に息苦しくなった。

ヤバい…苦しい…

そう思えば思うほど歩きだす足が震え出すほど息が苦しくなった。

「キイチ、顔色悪いけど大丈夫か?」

俺を心配して俺を見つめているイオリくんのその目はタカラくんと似ているのに全く違うように見え怖くて堪らない。

そして、また俺の頭の中に声が響いた。

"タカラを守りたかったから俺と付き合えよ。じゃなきゃタカラがどうなっても知らないから。"

俺はその声が聞こえると微かに震える唇でイオリくんに言った。

K「イオリくんなにか……俺に言うことない…?」

息を整え平然を装いながら俺はそう問いかける。

「なんだよ急に…そんな怖い顔して。」

イオリくんが俺に向かってニコッと微笑んだその時…

俺の脳裏に記憶のカケラたちがひとつに集まり、1つの映像のように繋がったような気がした。

K「俺たちが海で待ち合わせした時のこと…覚えてる?」

俺が取り戻した記憶のカケラをイオリくんに伝えるとイオリくんの顔色が変わった。

K「あの時に言おうと思ってた。イオリくんがどんなに俺とタカラくんとの仲を切り裂こうとしても俺はタカラくんが好きだって。タカラくんは俺が守るって。俺のこと好きでもないのに付き纏うのはもう…やめてくれって。」

それを聞いたイオリくんはみるみるうちに顔が歪んでいき、引き攣った顔で笑みを浮かべている。

「そうか?そんな昔のこと今更言われても…。」

今、俺の頭に鮮明に浮かぶのはイオリくんがまだ幼かった俺や、双子の弟であるはずのタカラくんにした残酷な出来事。

しかし、それをとぼけようとするイオリくんはきっと、過去のことを反省もしてないし俺がイオリくんを命懸けで助けた事もなんとも思ってはおらず、きっと当然と思っているのだろう。

K「イオリくんが自分と付き合わないとタカラくんを殺して自分も死ぬって俺を脅したこと……もう忘れた?」

俺が思い出したばかりの記憶を伝えるとイオリくんの余裕ない表情から、この記憶は俺の思い違いでも妄想でもなく全て真実なんだという事が分かった。

K「何であんなこと言ったの?俺のこと好きでもなかったくせに…まだ子供だった俺を虐めて楽しかった?」

そう問いかけるとイオリくんは震える声で言った。

「みんな口を開けばタカラ、タカラ…タカラばっかりいい加減にしろよ……」

イオリくんの口から出た言葉に俺は耳を疑った。

「……俺は…アイツが羨ましくて憎かった……みんなから愛されているタカラのことが…」

伏し目がちでそう言ったイオリくんのその顔は、驚くほどタカラくんにそっくりで、俺はまるでタカラくんを問い詰めてるような錯覚に陥り震えた。

つづく
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