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69話

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ジユサイド

俺はルリが絵本を読み終わるのを待って…ゆっくりと横に腰かけた。

すると、ルリは手に持っていたはずのエコー写真と絵本を慌てて隠し俺にバレないように涙を拭いた。

ルリは妊娠のことどう思っているんだろ…妊娠して嬉しくないのかな…ルリの顔はどう見ても暗い。

頭の中で色々と考えているとカメラ仲間のリンとあった。

リンとはマルタに一緒に行くとこになっていてつい、その話で盛り上がっている時にふと見たルリの顔は今にも泣き出しそうだった。

あぁ…やっちゃったな…俺。

そう思ってるとリンがルリに話しかけた。

R「こちらの方は…お姉さん?」

*「ジユがいつもお世話になっております。」

なんて、相手を否定しないルリはやっぱ俺より大人なのかな…って思った。

でも、俺はそんなのやっぱり嫌で否定しようとするがルリは会計の人に呼ばれてそのまま受付へと行ってしまった。

R「お姉さんすごい綺麗な方だね?」

何も知らないリンがそういった。

J「あぁ…うん。でもお姉さんじゃないだ。あの人、俺の婚約者。」

R「え!?そうだったの!?私失礼なことしちゃった…どうしよう…?」

J「大丈夫だよ。そんな事、気にする人じゃないから気にすんなよ?」

R「うん…ごめんね…」

俺はリンと別れて慌ててルリを探した。

確かにいつものルリならリンの言葉は気にしないで笑って許すだろう…

でも、きっと今のルリは深く傷ついてるだろうな…

すると、華奢な体を縮こまらせてバスの停留所に座るルリの姿を見つけた。

俺はマフラーを外しルリの首筋にそっと掛けた。

すると、ルリはめちゃくちゃ不機嫌な顔をしていた。

それすらも可愛くて…俺に嫉妬してくれるルリが愛おしい。

ルリの肩を抱こうとすればまた、払いのけられる俺の手…

そして、初めてルリは俺に大きなわがままを言って子供みたいに泣きじゃくった。

今まで冗談でわがままを言うことはあったけど…どちらかといえばいつも、俺が甘えていた。

ルリはどこか自分が年上だからって言って我慢して自分を押し殺してるんだろな…って感じる時があったけど…

こんなに自分の感情をむき出しにしたのは俺が病気になって治療を拒んだ時以来かもしれない。

J「ルリ…赤ちゃん…出来たんでしょう?」

俺がルリの涙を拭きながら言うと、ルリはキョトンとし顔をしてなんで知ってるの?っと不思議そうな顔をした。

そのあともルリはどんなに俺がなだめようがマルタに行くことを納得しようとしなかった。

俺もルリの大事な時期だからそばにいてあげたいけど…

今仕事を断ると沢山の人に迷惑をかけてしまう事になる。

だから、それだけはやっぱり譲れないよ…そう思う反面…ルリの思いはお腹に宿る赤ん坊の思い…

きっと、ルリだけじゃなくてお腹に宿る赤ん坊も俺がそばにいない事を不安に思っている。

そう思うと、そんな想いをさせてしまっている事にとても情けない気持ちが溢れた。


つづく
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