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11話

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ジュンペイside

次の日


俺は戸惑う心を隠し、何事もなかったかのようにいつもの時間に起きて準備をする。


そして、坊っちゃんの部屋に行き眠る坊っちゃんにゆっくりと近づき声をかけようとした時…


T「…ジュンペイ……行かないで……」


坊っちゃんはモゴモゴと口を動かしながら寝言を言った。


なんだよそれ…


そんな寝言いわれたら…


期待するじゃん…


勘違いするじゃん…


J「坊っちゃん…おはようございます。お時間です。」


俺がそう声をかければ、寝ぼけた坊っちゃんが俺の腕に巻きついてくる。


いつもこうしてダラダラといつまでも起きないのが坊っちゃんの朝のクセ。


俺はそれを分かっているから、そのまま坊っちゃんの好きなようにさせていると、途中でハッと何かに気づいたのか、坊っちゃんは俺の腕をパッと離して距離を取った。


J「おはようございます。お時間です。」

T「なんでここにいるんだよ?」

J「これが私の仕事です。」

T「こんな仕事…辞めちゃえばいいのに…俺がクビにしてあげようか?」


きっと昨日の夜のことを思い出しながら坊っちゃんはそう話しているのだろう。


俺の胸が虚しくうずき、やはり俺をからかって楽しんでいただけなんだと俺はその言葉で理解した。


すると


「お前に決定権などない!!」


いつの間にか坊っちゃんの部屋にきていた旦那様の怒鳴り声が部屋中に響いた。


父「ジュンペイをクビにするかどうかは私が決める。トルハ、お前に決める権利はない。ジュンペイ、今までの仕事は他のメイドに任せて、これからはトルハの執事も秘書も全て君がしてくれ。」

J「え…しかし…秘書はマヤトさんが…」

父「実はマヤトが留学に行きたいと言っててな…来月でうちの会社を退社する。だから、ジュンペイは今日から会社に出社してマナトから秘書の引き継ぎを頼んだよ。トルハ、そういう事だから勝手なことは許さんからな。」


旦那様はそう言って坊っちゃんに圧をかけ部屋に戻り、坊っちゃんは不満そうな顔をしながらベッドから降り洗面所に向かった。


朝起きてから、朝食の後も会社に向かっている最中もずっと、坊っちゃんは無言のまま唇を尖らせて俺と目を合わせようとしなかった。



つづく
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