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◆第1章 おまけの神子とラインハルト
受難の始まり⑦-2
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そもそも俺は元の世界に戻るつもりだったし、伊藤の怖い視線を思い出せば、ラインハルトだけは絶対に拒否したい相手だ。
神子ではないと判明した状態で、ラインハルトを独占でもしようものなら俺は殺されてもおかしくはないのではないだろうか?
「ラインハルト! 俺が神子じゃなかったら、そんなのはちょっと通らないだろ!?」
懸命にそう伝えた俺だったが、ラインハルトは「大丈夫だ」と珍しく破顔して断言した。
「大丈夫って何の根拠があるんだよ!?」
(俺の平和な生活を脅かさないでくれ! ただでさえ、伊藤のあたりがきついんだから!)
必死な俺に対して、ラインハルトは余裕しゃくしゃくと言った様子でこう言った。
「既に神子は判明した」
と。
「……えっ?」
また、思わず出た間抜けな俺の声にラインハルトが説明してくれたのはこういう事だった。
「お前が気を失っている間に、試練は無事終了した。アレが神子だと、先ほど判明してな。既にこの中の特殊な仕掛けは停止しているから、お前の意識が戻り次第脱出するつもりだったんだ。ああ、お前が懸念している事だが……。神子でなかったらという話だがな、神子と言えど私と結ばれるには私の心を動かす必要がある。私たちは神子を守りはするが、決して奴隷ではない。人の心までは、たとえ神であったとしても変える事は出来ないというのを、この世界の者たちは理解しているから、陛下も決して強くは言ってこない。だから、安心してほしい。お前の気持ちが分からないうちは、私もはっきりと宣言できなかったが、今は違う。陛下にも報告する」
(いや、俺が抱いていたのはそういう懸念じゃないんだよ!!)
「いや、それにラインハルトも王になろうって、最近少し思ってただろっ?」
確かに最初の頃はラインハルトも王位に就きたくないと言っていたが、ここ数日間の言動から、ラインハルトが王位に興味を持つようになっていたことは知っていたのだ。
しかし、すっきりとした表情でラインハルトは首を左右へと振る。
「私は王位が欲しいと思ったことは一度もない。しかしお前が神子だった場合、私が王にならなければお前は他の男のものになってしまう。それが嫌だっただけだ。むしろ、神子でないのならば私と一緒に領地を発展させてほしい。そう思っている」
ラインハルトからは俺をからかっている様子は見受けられず、俺はうっと息を飲んだ。
(え、本気か? 俺と付き合う気なの!?)
戸惑う俺に、ラインハルトは「詳しい話は戻ってからしよう」と俺の肩を抱く。
俺は少々混乱してはいたが、ダンジョン内で振り払う訳にも行かないし、言われるがままに大人しくラインハルトに従う。
脱出するまでの間、ラインハルトは驚くべき甲斐甲斐しさで俺に接してきた。
その気遣いは「俺は妊婦さんか、じーちゃんか?」とでも言わんばかりだったが、あからさまに俺への好意が透けて見えて、余計に拒絶も出来なかった。
もっと俺様的な感じで迫ってくれば、きっと拒絶できたのだろうが、普通に紳士的なのだから対応に困る。
しかし、俺はすぐにはっきりと断らなかった事を後で後悔する事になる。
外に出て神子様と持て囃されている伊藤に、唯一近づこうともせず俺の身体を気遣うラインハルトの様子に、俺とラインハルトに何かあったのだと感づいた伊藤が、ラインハルトにストレートに尋ねてしまったのだ。
ラインハルトもごまかしてくれれば良いのに、当然奴はそんな事をするわけもなく。
はっきりと今回の件を言ってしまったのだ。
婚儀を挙げるつもりだと、ラインハルトが伝えた時の伊藤の表情は、まさに鬼のごとし。
慌てて否定する俺の話を、伊藤は当然聞いてくれる気配もなく、そこから伊藤の凄まじい嫉妬による嫌がらせが開始されたのは言うまでもない。
なお、ラインハルトには後でちゃんと今の本心を伝えたのだが、まったくもって引く気はないと断言され、それからは毎日毎日贈り物をしてくるようになってしまい、毎日毎日、どこに惚れたのかを延々言ってくるのだ。
それを聞きながら、確かに思い返せば口説かれていたような気がしないでもない、と俺は過去のラインハルトとの会話を思い出していた。
そして口説かれているのは現在も継続中である。
侍従のリチェルさんが後で教えてくれた。
――ああいうタイプは本気になるとしつこいです、と。
できればもっと早く忠告が欲しかったです。
神子ではないと判明した状態で、ラインハルトを独占でもしようものなら俺は殺されてもおかしくはないのではないだろうか?
「ラインハルト! 俺が神子じゃなかったら、そんなのはちょっと通らないだろ!?」
懸命にそう伝えた俺だったが、ラインハルトは「大丈夫だ」と珍しく破顔して断言した。
「大丈夫って何の根拠があるんだよ!?」
(俺の平和な生活を脅かさないでくれ! ただでさえ、伊藤のあたりがきついんだから!)
必死な俺に対して、ラインハルトは余裕しゃくしゃくと言った様子でこう言った。
「既に神子は判明した」
と。
「……えっ?」
また、思わず出た間抜けな俺の声にラインハルトが説明してくれたのはこういう事だった。
「お前が気を失っている間に、試練は無事終了した。アレが神子だと、先ほど判明してな。既にこの中の特殊な仕掛けは停止しているから、お前の意識が戻り次第脱出するつもりだったんだ。ああ、お前が懸念している事だが……。神子でなかったらという話だがな、神子と言えど私と結ばれるには私の心を動かす必要がある。私たちは神子を守りはするが、決して奴隷ではない。人の心までは、たとえ神であったとしても変える事は出来ないというのを、この世界の者たちは理解しているから、陛下も決して強くは言ってこない。だから、安心してほしい。お前の気持ちが分からないうちは、私もはっきりと宣言できなかったが、今は違う。陛下にも報告する」
(いや、俺が抱いていたのはそういう懸念じゃないんだよ!!)
「いや、それにラインハルトも王になろうって、最近少し思ってただろっ?」
確かに最初の頃はラインハルトも王位に就きたくないと言っていたが、ここ数日間の言動から、ラインハルトが王位に興味を持つようになっていたことは知っていたのだ。
しかし、すっきりとした表情でラインハルトは首を左右へと振る。
「私は王位が欲しいと思ったことは一度もない。しかしお前が神子だった場合、私が王にならなければお前は他の男のものになってしまう。それが嫌だっただけだ。むしろ、神子でないのならば私と一緒に領地を発展させてほしい。そう思っている」
ラインハルトからは俺をからかっている様子は見受けられず、俺はうっと息を飲んだ。
(え、本気か? 俺と付き合う気なの!?)
戸惑う俺に、ラインハルトは「詳しい話は戻ってからしよう」と俺の肩を抱く。
俺は少々混乱してはいたが、ダンジョン内で振り払う訳にも行かないし、言われるがままに大人しくラインハルトに従う。
脱出するまでの間、ラインハルトは驚くべき甲斐甲斐しさで俺に接してきた。
その気遣いは「俺は妊婦さんか、じーちゃんか?」とでも言わんばかりだったが、あからさまに俺への好意が透けて見えて、余計に拒絶も出来なかった。
もっと俺様的な感じで迫ってくれば、きっと拒絶できたのだろうが、普通に紳士的なのだから対応に困る。
しかし、俺はすぐにはっきりと断らなかった事を後で後悔する事になる。
外に出て神子様と持て囃されている伊藤に、唯一近づこうともせず俺の身体を気遣うラインハルトの様子に、俺とラインハルトに何かあったのだと感づいた伊藤が、ラインハルトにストレートに尋ねてしまったのだ。
ラインハルトもごまかしてくれれば良いのに、当然奴はそんな事をするわけもなく。
はっきりと今回の件を言ってしまったのだ。
婚儀を挙げるつもりだと、ラインハルトが伝えた時の伊藤の表情は、まさに鬼のごとし。
慌てて否定する俺の話を、伊藤は当然聞いてくれる気配もなく、そこから伊藤の凄まじい嫉妬による嫌がらせが開始されたのは言うまでもない。
なお、ラインハルトには後でちゃんと今の本心を伝えたのだが、まったくもって引く気はないと断言され、それからは毎日毎日贈り物をしてくるようになってしまい、毎日毎日、どこに惚れたのかを延々言ってくるのだ。
それを聞きながら、確かに思い返せば口説かれていたような気がしないでもない、と俺は過去のラインハルトとの会話を思い出していた。
そして口説かれているのは現在も継続中である。
侍従のリチェルさんが後で教えてくれた。
――ああいうタイプは本気になるとしつこいです、と。
できればもっと早く忠告が欲しかったです。
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