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◆第1章 おまけの神子とラインハルト
閑話①~ラインハルト視点~
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その男を見た時、私が思ったのは美しいという事だった。
と言っても、それは見目が整っているという意味ではない。
不細工ではないし、平均くらいの顔立ちはしていると思うが、派手ではなくあっさりとした顔立ちをしていたし、召喚された二人の異世界人の内、外見が整っているのはもう一人の小柄な子供の方なのは間違いない。
好みとかの問題ではなく、そこは明確に断言しても良い。
確かにもう一人の少年は、綺麗な華のある顔立ちをしていたし、華奢ですらりと伸びた手足からも魅力的だった。
しかし、私が一番美しいと思ったのは、徹の持つその色だった。
黒髪黒目に、少し黄色がかった、けれどシミ一つない肌は、見慣れないがゆえにとても私には眩しく映ったのだ。
もう一人の少年の髪は、完全な黒ではない色だったし、瞳の色もどちらかと言えば明るめの茶色で、この国にもそこそこの数が居る色の為、珍しくは無かった。
とても嫌な言い方をすれば、ただ整った顔立ちの子供でしかない少年には、私はさほど興味は持てなかった。
この世界にも居ないくらいの美少年というのであれば、もう少しは興味を持てたのだろうが、外見の美しさであればエルフたちには敵わない。
美しい外見の者と寝所を共にするのは、私にとっては毎日の事だったので、古くからの伝記にある通り「幼く見えるだけ」だったのならば、一度くらいは相手をしてほしいと思っただろうが、その後の話で小柄な異世界人の年齢が十五歳と判明して完全に興味を失った。
周りからは、私が見目が良ければだれにでも手を出すと思っている様だが、さすがに十五歳の子供は対象外だ。
さすがに私も十八歳になっていない者に手を出したことはないし、出来るのならば最低でも二十代前半であってほしいくらいの良識はある。
最初、徹ももしかして少年なのではと思ったのだが、徹は若く見えるものの私よりも年上だと聞き、驚きと共に正直ほっとした。
三十三歳にはとても見えないが、その年齢ならば手を出しても問題はないのだから。
最初の出会いの段階で、私は徹に近づきたかったのだが、何故か伊藤と呼ばれた少年に気に入られてしまい、初日は王城内の案内を陛下に命じられたこともあり、諦めるしかなかった。
翌日、半ば無理矢理に徹の教育係にねじ込むことに成功した際は、思わず神に感謝した。
近くで見た徹は、とても良い匂いがした。まるで温かい日向のような、そんな匂いだった。
笑った顔が可愛くて、照れ隠しに思ってもみない事を言ってしまい、嫌われたらどうしようかと思ったが、徹は私の発言を非常識だとは言いはしたが、決して俺を拒絶はしなかった。
もうすぐ34歳になると徹が言っていたので、私との年齢差は6歳差になる。
徹から見た私は、年下という印象が強いのだろうというのはその後の会話でもよく理解できた。
今まで恋愛面でも浮名を流し続けてきた上、政治にも深く関わっている私としては、どう見ても私よりも幼げな徹にそう思われるのは正直納得がいかないところもあったが、私の生意気な態度や、城内の失礼な奴らを緩やかにかわす徹を見て、情緒面では私よりも遥かに大人なのだと気づかされた。
特に、異世界人の伊藤という少年はどうやら徹の事が嫌いな様で、古くからの友人である騎士団長のハーミットから聞いた情報では、召喚の際に徹に行われた治療を妨げる行為をしたという。
伝記によれば、神子は皆穏やかで優しい性格の者が多かったと言われている。
何度か、神子と共に現れた「おまけ」と呼ばれる異世界人が居て、彼らはやや強烈な人物だったとされているので、もしかするとあの少年は神子ではなく「おまけ」の方なのではないかと私は思ったのだが、周囲はそうは考えなかった様だ。
美少年である伊藤に、すっかりと骨抜きにされてしまった城内の者たちは、伊藤を神子だと持て囃すようになってしまった。
その中には王太子殿下や、騎士団の副団長まで居るというのだから呆れたものである。
陛下は中立なので贔屓をすることはないものの、幼い少年に請われてしまえば断れない事も多いようだ。陛下も私と同じで子供には興味はない筈だが、自身の孫くらいに年の離れた者には弱いのだろう。
とは言えど、徹にも配慮はしてくれてはいるが……。
騎士団長のハーミットもこれには頭を抱えていた。
唯一、気難しい宰相だけは伊藤を毛嫌いしているようだったが、あいつは徹の事も決して好いているわけではないのは見ていてわかる。
元々、人間嫌いな奴なので、神子とは言え必要以上には関わりたくないのだというのがその態度に出ているのだ。
徹は一定以上の距離を保っている為、最低限の会話は成り立っている様だが、先日「さすがにあそこまで拒絶されると俺も近づけないかな」と徹も言っていたくらいだ。
なお、潔癖な奴なので、私の事も毛嫌いしており、宰相が徹に冷たいのは、私が徹と親しいのもあるのだろう。
と言っても、それは見目が整っているという意味ではない。
不細工ではないし、平均くらいの顔立ちはしていると思うが、派手ではなくあっさりとした顔立ちをしていたし、召喚された二人の異世界人の内、外見が整っているのはもう一人の小柄な子供の方なのは間違いない。
好みとかの問題ではなく、そこは明確に断言しても良い。
確かにもう一人の少年は、綺麗な華のある顔立ちをしていたし、華奢ですらりと伸びた手足からも魅力的だった。
しかし、私が一番美しいと思ったのは、徹の持つその色だった。
黒髪黒目に、少し黄色がかった、けれどシミ一つない肌は、見慣れないがゆえにとても私には眩しく映ったのだ。
もう一人の少年の髪は、完全な黒ではない色だったし、瞳の色もどちらかと言えば明るめの茶色で、この国にもそこそこの数が居る色の為、珍しくは無かった。
とても嫌な言い方をすれば、ただ整った顔立ちの子供でしかない少年には、私はさほど興味は持てなかった。
この世界にも居ないくらいの美少年というのであれば、もう少しは興味を持てたのだろうが、外見の美しさであればエルフたちには敵わない。
美しい外見の者と寝所を共にするのは、私にとっては毎日の事だったので、古くからの伝記にある通り「幼く見えるだけ」だったのならば、一度くらいは相手をしてほしいと思っただろうが、その後の話で小柄な異世界人の年齢が十五歳と判明して完全に興味を失った。
周りからは、私が見目が良ければだれにでも手を出すと思っている様だが、さすがに十五歳の子供は対象外だ。
さすがに私も十八歳になっていない者に手を出したことはないし、出来るのならば最低でも二十代前半であってほしいくらいの良識はある。
最初、徹ももしかして少年なのではと思ったのだが、徹は若く見えるものの私よりも年上だと聞き、驚きと共に正直ほっとした。
三十三歳にはとても見えないが、その年齢ならば手を出しても問題はないのだから。
最初の出会いの段階で、私は徹に近づきたかったのだが、何故か伊藤と呼ばれた少年に気に入られてしまい、初日は王城内の案内を陛下に命じられたこともあり、諦めるしかなかった。
翌日、半ば無理矢理に徹の教育係にねじ込むことに成功した際は、思わず神に感謝した。
近くで見た徹は、とても良い匂いがした。まるで温かい日向のような、そんな匂いだった。
笑った顔が可愛くて、照れ隠しに思ってもみない事を言ってしまい、嫌われたらどうしようかと思ったが、徹は私の発言を非常識だとは言いはしたが、決して俺を拒絶はしなかった。
もうすぐ34歳になると徹が言っていたので、私との年齢差は6歳差になる。
徹から見た私は、年下という印象が強いのだろうというのはその後の会話でもよく理解できた。
今まで恋愛面でも浮名を流し続けてきた上、政治にも深く関わっている私としては、どう見ても私よりも幼げな徹にそう思われるのは正直納得がいかないところもあったが、私の生意気な態度や、城内の失礼な奴らを緩やかにかわす徹を見て、情緒面では私よりも遥かに大人なのだと気づかされた。
特に、異世界人の伊藤という少年はどうやら徹の事が嫌いな様で、古くからの友人である騎士団長のハーミットから聞いた情報では、召喚の際に徹に行われた治療を妨げる行為をしたという。
伝記によれば、神子は皆穏やかで優しい性格の者が多かったと言われている。
何度か、神子と共に現れた「おまけ」と呼ばれる異世界人が居て、彼らはやや強烈な人物だったとされているので、もしかするとあの少年は神子ではなく「おまけ」の方なのではないかと私は思ったのだが、周囲はそうは考えなかった様だ。
美少年である伊藤に、すっかりと骨抜きにされてしまった城内の者たちは、伊藤を神子だと持て囃すようになってしまった。
その中には王太子殿下や、騎士団の副団長まで居るというのだから呆れたものである。
陛下は中立なので贔屓をすることはないものの、幼い少年に請われてしまえば断れない事も多いようだ。陛下も私と同じで子供には興味はない筈だが、自身の孫くらいに年の離れた者には弱いのだろう。
とは言えど、徹にも配慮はしてくれてはいるが……。
騎士団長のハーミットもこれには頭を抱えていた。
唯一、気難しい宰相だけは伊藤を毛嫌いしているようだったが、あいつは徹の事も決して好いているわけではないのは見ていてわかる。
元々、人間嫌いな奴なので、神子とは言え必要以上には関わりたくないのだというのがその態度に出ているのだ。
徹は一定以上の距離を保っている為、最低限の会話は成り立っている様だが、先日「さすがにあそこまで拒絶されると俺も近づけないかな」と徹も言っていたくらいだ。
なお、潔癖な奴なので、私の事も毛嫌いしており、宰相が徹に冷たいのは、私が徹と親しいのもあるのだろう。
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