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エピローグ
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サルトレに亡命したトマスは、新しい生活を送るようになった。話し合った結果、万が一にも侯爵側に話が伝わったりしないよう、アランが治める辺境の地で暮す事に決まったが、名前に関しては然程珍しくはない事からそのままとされた。
念のため変えた方が良いのでは? とトマスが言えば、親からもらった名前はそのままの方が良いだろうと、アランが言ってくれたのだ。
サルトレを上げて隠し通すからと国王陛下直々に強く言われたのもあって、今では堂々と名乗っている。
――そんな日常の中。
「一目惚れだった。……私と結婚して欲しい」
そうアランからトマスへの愛の告白が為されたのは、二人の出会いから一年経った頃だった。
その頃、アランの甥のリチャードの遊び相手として同じ屋敷に住んでいたトマスに、アランはゆっくりと寄り添い、時間をかけて口説いた。
最初は公爵であるアランとでは釣り合わないと求婚を断っていたトマスだったが、決して無理強いはせずに真摯に愛を告げ、いつまでも待つと言ってくれたアランを、いつしかトマスもまた愛するようになり、二人は結婚する事になった。
これが二人の結婚までの軌跡だ。
――そして今日、二人の結婚式は皆から祝福され、大団円を迎えた。
「事情を話せないのはちょっと苦しいね」
屋敷に戻り、夫婦の寝室で一息ついたトマスは、昼間の結婚式の事を思い出して深いため息を吐いた。一部の関係者を除いて、トマスの出生や過去は秘匿されているし、今後も決して話せない内容なので言えるわけがないのだが、正直少しだけ罪悪感があるのだとトマスは呟いた。
「……そうだな。だが、彼女たちは聡いからな。おそらくもうお前の件については追及しない筈だぞ?」
「……え? どういうこと?」
今日、結婚式に呼ばれた面々は、領地内でも重要な職についている者ばかりというのはアランから聞いていたトマスだったが、その言い分ではまるで何となく事情に気づいているという言い方の様に思えてトマスは尋ねていた。
「トマスに何かやむを得ない事情があるという事は察した、という事だ。姦しいが、あの令嬢たちはそう言う部分はしっかりとしている。勿論、お前が何かを隠していることに気づいても、それによってお前に悪感情を抱くような浅慮さも持ち合わせていないさ」
「そ、そうなんだ」
戸惑うトマスに、アランは優しく微笑むと、その身体を優しく抱き寄せた。
「あっ……! 待って!」
「待たない。今日は初夜なんだ。これ以上は、私のここが、な」
尻にあたっている明らかに硬いソレが、何なのかを悟ったトマスが、顔を真っ赤にしているのを見て更に興奮したアランは、素早くその場でトマスの服を剥ぎ、自身の服もすべて脱いでしまった。
そのまま寝台にトマスを引きずり込むと、トマスの裸を手と舌で愛撫し、その感触を楽しんだ。きつく締まっている尻の穴に軟膏を付けた指を抜き差しし、手慣れた様子でトマスの快感を探って行く。
「あっ……んっ……ああっ」
「俺の妻は本当に可愛いな。……もう良いか?」
何度抱いても初々しい反応を返すトマスに愛の言葉を囁きながら、アランは耳元でそっとお伺いを立てた。性急な行動は、普段であれば怒るトマスだったが、今日ばかりは特別な日なのもあり、決して怒ったりはしない。
「……来て」
「トマス……っ!」
愛する妻に両手を広げて誘われたアランは、猛ったペニスをゆっくりとトマスへと挿入し、穏やかな動きで腰を振り始めた。だが、傷つけない様細心の注意を払った緩慢な動きは、トマスにはもどかしかった様だ。ゆらゆらと腰を揺らし、もっと深く繋がろうと両足でアランの腰を抱き寄せる。
「っ、アラン……っ、もう、良いからっ」
今日という日が特別なのは、トマスも同じなのだ。
両親が死んでから、トマスには家族と呼べる人は居なかった。弟のブルーノとは、心の奥底では深く繋がっていた事は判明したものの、ブルーノの真意を知ったのは最近で実感は無かった。しかし、夫であるアランは間違いなくトマスの家族なのだ。
「トマス……!」
感極まった様に名前を呼びながらアランがズン! と猛ったペニスを最奥に叩きつけると、トマスが悲鳴のような声をあげた。しかし、アランの腰に巻き付いた足はしっかりと離さない
「あっ、ああっ、んっ、もっと、来て……っ」
ギシギシと寝台が軋む音と大きな喘ぎ声が寝室に響く。初夜である今日、リチャードの事は、遠く離れた部屋で使用人たちが面倒を見てくれているので声を抑える必要はない。
「くっ……!」
耐え切れず中に白濁を注ぎ込むアランの背中に腕を回しながら、トマスは幸せを噛みしめた。
――いつの日か、ブルーノともう一度会える日が来るなら、お礼を言いたい。そう強く思いながら。
深夜。隣で横たわるトマスを見つめながら、アランはふとトマスとの出会いを思い出していた。
実はあの結婚式の日が初めてではない事を、アランはトマスには言っていない。引退する少し前、街で出会った幼い二人の兄弟。幼児愛好者ではなかった筈のアランは、当時のトマスを一目見て恋に落ちた。
何度も声をかけて、毎回弟の方に追い返されていた記憶――。弟の方はアランの事を覚えていた様だが、侯爵よりはアランの方がまだ真面だと考えた結果、随分と前からアランを探していたというのだから、出来た弟だと言える。
弟がアランを覚えていなければ、トマスはあの侯爵の物になっていたに違いない。
「愛しているよ、トマス」
愛しい妻の髪を撫でながら、アランはほくそ笑んだ。
END
ありがとうございました!
念のため変えた方が良いのでは? とトマスが言えば、親からもらった名前はそのままの方が良いだろうと、アランが言ってくれたのだ。
サルトレを上げて隠し通すからと国王陛下直々に強く言われたのもあって、今では堂々と名乗っている。
――そんな日常の中。
「一目惚れだった。……私と結婚して欲しい」
そうアランからトマスへの愛の告白が為されたのは、二人の出会いから一年経った頃だった。
その頃、アランの甥のリチャードの遊び相手として同じ屋敷に住んでいたトマスに、アランはゆっくりと寄り添い、時間をかけて口説いた。
最初は公爵であるアランとでは釣り合わないと求婚を断っていたトマスだったが、決して無理強いはせずに真摯に愛を告げ、いつまでも待つと言ってくれたアランを、いつしかトマスもまた愛するようになり、二人は結婚する事になった。
これが二人の結婚までの軌跡だ。
――そして今日、二人の結婚式は皆から祝福され、大団円を迎えた。
「事情を話せないのはちょっと苦しいね」
屋敷に戻り、夫婦の寝室で一息ついたトマスは、昼間の結婚式の事を思い出して深いため息を吐いた。一部の関係者を除いて、トマスの出生や過去は秘匿されているし、今後も決して話せない内容なので言えるわけがないのだが、正直少しだけ罪悪感があるのだとトマスは呟いた。
「……そうだな。だが、彼女たちは聡いからな。おそらくもうお前の件については追及しない筈だぞ?」
「……え? どういうこと?」
今日、結婚式に呼ばれた面々は、領地内でも重要な職についている者ばかりというのはアランから聞いていたトマスだったが、その言い分ではまるで何となく事情に気づいているという言い方の様に思えてトマスは尋ねていた。
「トマスに何かやむを得ない事情があるという事は察した、という事だ。姦しいが、あの令嬢たちはそう言う部分はしっかりとしている。勿論、お前が何かを隠していることに気づいても、それによってお前に悪感情を抱くような浅慮さも持ち合わせていないさ」
「そ、そうなんだ」
戸惑うトマスに、アランは優しく微笑むと、その身体を優しく抱き寄せた。
「あっ……! 待って!」
「待たない。今日は初夜なんだ。これ以上は、私のここが、な」
尻にあたっている明らかに硬いソレが、何なのかを悟ったトマスが、顔を真っ赤にしているのを見て更に興奮したアランは、素早くその場でトマスの服を剥ぎ、自身の服もすべて脱いでしまった。
そのまま寝台にトマスを引きずり込むと、トマスの裸を手と舌で愛撫し、その感触を楽しんだ。きつく締まっている尻の穴に軟膏を付けた指を抜き差しし、手慣れた様子でトマスの快感を探って行く。
「あっ……んっ……ああっ」
「俺の妻は本当に可愛いな。……もう良いか?」
何度抱いても初々しい反応を返すトマスに愛の言葉を囁きながら、アランは耳元でそっとお伺いを立てた。性急な行動は、普段であれば怒るトマスだったが、今日ばかりは特別な日なのもあり、決して怒ったりはしない。
「……来て」
「トマス……っ!」
愛する妻に両手を広げて誘われたアランは、猛ったペニスをゆっくりとトマスへと挿入し、穏やかな動きで腰を振り始めた。だが、傷つけない様細心の注意を払った緩慢な動きは、トマスにはもどかしかった様だ。ゆらゆらと腰を揺らし、もっと深く繋がろうと両足でアランの腰を抱き寄せる。
「っ、アラン……っ、もう、良いからっ」
今日という日が特別なのは、トマスも同じなのだ。
両親が死んでから、トマスには家族と呼べる人は居なかった。弟のブルーノとは、心の奥底では深く繋がっていた事は判明したものの、ブルーノの真意を知ったのは最近で実感は無かった。しかし、夫であるアランは間違いなくトマスの家族なのだ。
「トマス……!」
感極まった様に名前を呼びながらアランがズン! と猛ったペニスを最奥に叩きつけると、トマスが悲鳴のような声をあげた。しかし、アランの腰に巻き付いた足はしっかりと離さない
「あっ、ああっ、んっ、もっと、来て……っ」
ギシギシと寝台が軋む音と大きな喘ぎ声が寝室に響く。初夜である今日、リチャードの事は、遠く離れた部屋で使用人たちが面倒を見てくれているので声を抑える必要はない。
「くっ……!」
耐え切れず中に白濁を注ぎ込むアランの背中に腕を回しながら、トマスは幸せを噛みしめた。
――いつの日か、ブルーノともう一度会える日が来るなら、お礼を言いたい。そう強く思いながら。
深夜。隣で横たわるトマスを見つめながら、アランはふとトマスとの出会いを思い出していた。
実はあの結婚式の日が初めてではない事を、アランはトマスには言っていない。引退する少し前、街で出会った幼い二人の兄弟。幼児愛好者ではなかった筈のアランは、当時のトマスを一目見て恋に落ちた。
何度も声をかけて、毎回弟の方に追い返されていた記憶――。弟の方はアランの事を覚えていた様だが、侯爵よりはアランの方がまだ真面だと考えた結果、随分と前からアランを探していたというのだから、出来た弟だと言える。
弟がアランを覚えていなければ、トマスはあの侯爵の物になっていたに違いない。
「愛しているよ、トマス」
愛しい妻の髪を撫でながら、アランはほくそ笑んだ。
END
ありがとうございました!
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ブルーノいいやつ!
ブルーノが幸せになったか気になります!
あとアランの幸せ生活も😀
もし時間があれば番外編期待してます(●´ω`●)
感想ありがとうございます。
ブルーノは立場上、中々好意を明確に示せませんでしたがずっと兄を大切にしていました。
番外編やその後のラブラブなお話しも、いつか書ければなと思っています。