【完結】百怪

アンミン

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1章 怪異・不可思議

20「小船」

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茨城の海沿いに住んでいる遠縁の老人から聞いた話。




「60年あの場所に住んでいたが、

 見たのは5、6回ほどだな。

 子供の頃しか見なかったが」




何の事かと聞くと、よく浜に船が流れ着くという。

普通の船も年に何度か流れ着くから、別に珍しい

事ではないが、と前置きして




「小さいんだよ。

 船がさ。

 プラモデルみたいに、小さい船が

 流れ着く事があったんだ」




だから、もしかしたらもっとあったのかも

知れないと語った。

今の船ではなく、教科書で見たような昔の

日本風の船だったという。



最初にそれを見つけた時、持ち上げると

ヒモが付いていて、その先にはちゃんと

小さなイカリがあった。

よく出来た玩具だなぁ、と家に持ち帰ったところ、

父親、特に祖父に酷く怒られたという。




「祖父が、


『この船はイカリを下ろしてあったんだろう。

 この船は流れてきたんじゃない。

 停めてあっただけだ。

 すぐに元の場所に戻してこい』


 って」




確かに、浜辺とはいえ少しは浮かぶ水深に

その船はあった。

怒られた彼は、慌てて元の場所へ行って船を

海に浮かべ、すぐに家へと帰った。




「祖父に、後であれは何かと聞いたんだけどな。

 “触れなくてもいい物に、うかつに触れたり

 近寄ったりするな”

 とだけ言われたよ」




それから何度か小船を見かけたが、祖父や父が怖くて、

見かけるとすぐに家に帰ったという。




「見たのは子供の頃だけですか?」




祖父や父親もそうなのだろうか?

そう疑問がわいたので質問すると




「俺が高校入る頃かなぁ。

 その浜辺一帯全部で何か埋め立て工事やってな。

 ……それ以来見てない」




父も祖父も亡くなった後、じっくり見てやろうかとも

思ってたんだけどな、そう言って彼は悔しがった。


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