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30・勇者Side03
しおりを挟む「だからお前な……
最近、調子に乗り過ぎだぞ。
フォローするの、たいてい俺なんだからな!?」
「お? 何だぁ?
もしかして嫉妬してるのか?
俺もよー、女どもから言われているんだぜ?
他の連中は、良い『恩恵』を授からなかったから
ねたんでいるって。
それでもお前らと関わってやってんだぜ?」
茶髪に染めていた髪はすっかり脱色されたが、
チンピラのような青年は外見通りの態度の悪さで、
幼馴染の黒髪の男に言い返す。
「またあいつ―――」
クレイオス城の廊下で……
アラサーの細身の男が、それを遠目で見つけた。
他の三人の女性と共に。
「島村さん! 熊谷さんも」
私は思わず駆け寄り、その言い争いの中へ
割って入った。
「あっちゃー。
またしまむー、トラブってんの?」
「よくもまあ飽きずに……」
ツインテールの少女と、女性陣では一番年上の
女性が呆れた声を出す。
弥月ちゃんに白波瀬さんも―――
ここ最近の状況には参っているみたい。
男性陣も、熊谷さんや武藤さんは、何とか
ここでの生活や体制に慣れていっている。
問題は島村さんで……
相手が貴族だろうが誰であろうが、叩きのめして
いる事。
でもこれは彼だけを責められない。
平民だと思ってか、または勇者という肩書が
気に食わないのか―――
横柄な態度で来る人たちもいて、それは
あちら側にも責任がある。
そして島村さんはそんな相手だと容赦がなく……
結果として、私たち勇者全体の評判は、
微妙なものになってしまっていた。
「ンだよもー。
勇者様なら、俺1人でもいいんだぜ?
俺の女どももそう言っているしよ」
話を聞くに、他の男勇者二人にも、どうも
女性があてがわれているらしく……
彼女たちの情報をまとめると―――
私たちにはそのどれもが、勇者同士の関係を
切り離すものとしか思えなかった。
「あなた1人の問題で済めばいいけど、
こっちにクレームが来ているのよ」
白波瀬さんが両手を腰につけて注意するも、
「あぁん?
俺のところには怖くて、正面切って来れねー
奴らだろうが。
いいんだよ、ンな連中放っておけば」
島村さんはバカにするように、片手を
ひらひらさせる。
あなたはそれでいいかも知れないけど―――
と、口に出そうとした時、彼女が続けて
「ねぇアンタ。
藤堂高虎って知ってる?」
「あぁ?」
確か戦国武将の名前だと思ったけど……
島村さんは知らないのか、眉間にしわを寄せる。
「戦国時代の大名、お殿様よ。
この人ね、お風呂で女といちゃついている時に、
狙撃されたって逸話があるの」
この人ね、お風呂で女といちゃついている時に、
狙撃されたって逸話があるの」
いつの間にか白波瀬さんは、彼と対峙するような
位置になり、
「暗殺も多かった時代だからね。
それこそトイレとか寝込みも襲われる。
食事に毒を盛られるなんてポピュラーだし、
だから毒見役がいたわけで」
「…………」
島村さんは説明を黙って聞き続け―――
「正面切って戦えないのなら、やり方なんて
いくらでもあるのよ?」
「けど俺たちは勇者だろ?」
クレイオス王国が召喚した自分たちを
殺すはずが無い。
彼はそう確信しているみたいだけど……
「そんなのわからないわ。
人間の感情なんて完全に制御出来ないんだから。
誰かさんみたいに。
恨みを買うのなら、それ相応の覚悟を
するべきでしょ?
食事睡眠風呂トイレ。
その全てにおいて、気が抜けない生活を
あなたはご所望ってわけね?」
私を含め……
他の四人が見守る中、二人はにらみ合っていたが、
「……チッ」
先に動いたのは島村さんで―――
舌打ちすると、そのまま去ってしまった。
「すいません、白波瀬さん」
熊谷さんが彼に代わるように頭を下げるが、
「……いい?
アタシたちの目的は、元の世界に帰る事だから。
非協力的な人間まで面倒は見れないわ。
それは忘れないでね」
「あのバカは俺が言い聞かせますんで……!」
そう言うと熊谷さんも後を追いかけ、
「……自分もこれで」
武藤さんも気まずそうに去っていった。
「だいじょーぶ? 武田ッチ。
しかししまむー、ホントちょろ過ぎ」
「前途多難だわ。
こうまでわかりやすく引っ掛かるなんて」
残された私は―――
他の女性陣と同時にため息をつくしかなかった。
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