【完結】ゲーセンダンジョン繁盛記 ~魔王に異世界へ誘われ王国に横取りされ、 そこで捨てられた俺は地下帝国を建設する~

アンミン

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43・初めてのお客様

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「当ダンジョンへようこそ。
 2名様でいらっしゃいますか?」

カウンターに立つ俺の前で―――
ブロンドの短髪をした、ガッチリした体格の
男性と、赤毛のショートヘアーの女性が、
やや困惑しながら、

「あ、ああ」

「お願いするよ」

そこで俺はカウンターの上の書面に視線を落とし、

「同室でよろしいでしょうか。
 それとも別々で?」

「あー、じゃあ別々で」

クラークさんの答えに、俺は営業スマイルで、

「かしこまりました。
 それではリナはミント様を、グエンは
 クラーク様をお部屋までご案内してください」

その指示に、薄黄色のセミロングの少女と、
ブラウンの短髪の五才くらいの少年が、
案内役となってエレベーターまで二人を誘う。

そしてそれを、他の子供たちと―――
パトラとコマチが見送って、

ぬしも面白い事を考えたのう」

「確かに、宿泊施設として反応を見るのは
 必要だもんねー」

魔法使いのようなヒラヒラの衣装に、
はちきれんばかりの胸を閉じ込める魔狐マジカルフォックスと、

黒髪黒目・猫耳のメイド姿の銀猫シルバーキャットが、
感心しながら語る。

『ここのお客様の、第一号となって
 もらいます』

そう、ここはそもそもホテルであり……
そして子供たちの職場でもある。

そこで実践と見学を兼ねて―――
あの二人にお客様役をしてもらう事にしたのだ。

実際、この立地条件でどれだけお客様が来るか
怪しいものだが、現に彼らは来たし、

それに何か仕事をさせていないと、子供たちが
不安がるからなあ。

こうして俺は『監修』として―――
他の子供たちにも仕事を見てもらうという
名目で、ホテル業を開始した。



「個室に風呂があるというのも驚いたけど、
 こんなに大きな浴場があるなんてな。

 ダンジョンのあの『めだるフロア』ってのも、
 すごい熱中しちまった。
 あんな娯楽見た事ないぞ」

「ミントさんは、シューティングフロアに
 ハマっていましたね」

「あいつはシーフだからな。
 罠や攻撃を避けるのが、しょうに合っているん
 だろう」

湯舟につかりながら、『ダンジョン』での感想を
彼から聞く。

「クラークさんは、ええと……
 実際に体を動かす系のものもやっていた
 ようですけど」

「まあ一応、俺は戦士だし。
 体を動かすのが合っていたのかもな。

 しかし今日1日で、今までの人生の中で
 経験した事の100倍は驚いたよ」

夕方になって、俺は男子たちを連れ……
クラークさんと一緒に大浴場に来ていた。

女の子の方はミントさんがいるので―――
さすがに男湯と女湯に別れた。
お客さんが入る場合は、そうしてもらわなければ
困るという理由で。

女の子たちの方は不満タラタラだったけど、
心無しか男の子たちは、開放感あふれる表情を
していて……

「クラークさんは、冒険者になって長いんで
 しょうか?」

眷属にはしたが、今はお客様という設定。
なので敬語か丁寧語ていねいごで話しかける。

「そうだな。
 と言っても俺やミントは孤児だったから、
 冒険者になるしか選択肢は無かったっていうか。

 アイツとはもう、10年くらいの腐れ縁さ」

見たところ、まだ二十代半ばくらいにしか
見えないのだが……
十四か十五の時になったと思えば辻褄つじつまは合う。

それでも、ここに保護した子供たちに比べれば、
一応は成人するまで育ててもらった―――
『運が良い』人間だったのだろう。

「依頼を受けたと言ってましたけど、
 ここの近くに住んでいるんですか?」

「冒険者ギルドに所属している、という意味では
 そうだ。

 ここから歩いて数時間ほど離れたところに、
 エンテという街があるんだが……
 多分、この魔境の森に一番近い街だと思う」

そこで俺は首を傾げ、

「結構近くないですか?
 この魔境の森って、危険地帯なんですよね?」

その質問にクラークさんは苦笑し、

「確かに危険な魔物はいるけど、この森の
 本当の恐ろしさはそこじゃないんだ。

 そんなに広くはないが、何も知らない
 人間が迷い込んだら、絶対出られない。

 擬態植物ミミックリィ・プラントがいるからな」

その言葉に俺は首を傾げると彼は続けて、

「要はこの森の植物の中に、勝手に移動したり
 姿を変えたりする種類のヤツがいる。
 それも多分魔物なんだろうけど……

 それを知らないで目星をつけて歩くと、
 どんどん迷い込むって寸法だ」

「うわ、そんな危険な森だったんですか」

改めてすごいところに住んでいるんだなあ、
と実感する。

「と言っても、対策が無いわけじゃない。
 どうもこの擬態植物、小さい種類しか
 いないらしくてな。

 だから大木や、ここのように岩山とかを
 目印にすればいいし、明るいうちは太陽を、
 夜になったら星を頼りに動けば問題ない。
 まあ、その間魔物に襲われなければ、だけど」

あの奴隷商頭グロンソン、そんな事は言ってなかったけど……
当たり前過ぎて説明を忘れていたのか、
それとも質問の仕方が悪かったのか。

「確かに、奴隷商や商人が近道に使う
 程度ですしね」

「街もぐるりと大きな石壁が囲んでいる。
 それに魔物が森から街に出てきたって話も、
 ほとんど聞かないし」

なるほど。
近付かなければ……って事なのかな。

俺は一通り話を聞いた後、一緒に入っている
男の子たちへ目をやり、

「それじゃ、そろそろ出るよ。
 今日はお風呂の後になったけど、夕飯は、
 あの新しく出来た施設のを出すから」

それを聞いた子供たちは大喜びで声を上げ、

「ええと、こっちに来た時にいろいろなパンを
 食べさせてもらったが―――
 あれより別な物があるのか?」

おずおずと聞くクラークさんに、

「ああ、あれはあくまでも軽食です。
 ちゃんとしたご飯はこれからですので、
 楽しみにしていてください。

 お酒も大丈夫ですよね?」

コクコクとうなずくクラークさんと一緒に―――
みんなでお風呂から上がる事にした。

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