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47・地下帝国を目指します!
しおりを挟む「ありがとう。世話になったな」
「絶対また来るからねー!」
ガチャガチャと背負った荷物を鳴らしながら、
二人の冒険者が手を振る。
数日後―――
初めてのお客様である、クラークさんと
ミントさんは『チェックアウト』した。
宿泊してもらううちに、子供たちもすっかり
懐いて、
いざ彼らが街に戻ると知ったら、泣き出す子もいて
大変だった。
「あの2人には、してもらわなければならない
仕事があるから……
すぐまた来てくれるよ」
ダンジョンの入り口である岩山、その外で
見送りを終えると……
ぐずる子供たちを何とかなだめ、俺たちは
中へと戻っていった。
「して主、今日はどのように動くのだ?」
ロビーからの廊下を歩きながら―――
パトラさんの質問に、コマチさんにも視線を向け、
「今日はパトラもコマチも……
子供たちについていてあげて。
ケアが必要だと思うから。
今後はクラークさんとミントさんへの
『依頼』―――
その結果がわかるまで様子見だと思う」
俺の言葉に魔狐と銀猫はうなずき……
続いてリナが片腕に手を回しながら、
「結果自体はすぐ出ると思いますよー。
後は、あのお2人の交渉力次第ですね……」
彼女の指摘に、俺はその薄黄色の髪を
撫でながら、冒険者二人にお願いした
『依頼』の事を思い出していた。
「人間相手に商売をしたい?」
「はい。
俺は魔族サイドですが……
別に人を皆殺しにしろとか言われている
わけでもないですし。
こちらに召喚される際、特に条件を
付けられたわけでもないので―――」
管理者部屋で俺とクラークさん、ミントさん、
リナにコマチ、パトラを交え……
六人で今後の方針について、先日話し合ったのだ。
「でもまあ、アタシらはともかく……
魔物イコール即ブッ殺す、って世界だからねえ。
魔王率いる軍だって、そりゃ言葉は通じるけど、
交渉はほとんど不可能だって聞いているよ」
赤毛の短髪を片手でかきながら、ミントさんが
消極的に語る。
「いきなり襲い掛かられたら交渉も何も無いわ」
「命乞いくらいは聞いた事あるけど」
狐と猫特有のシッポを揺らしながら、パトラさんと
コマチさんがさり気なく返す。
「俺も、カミュ王女に問答無用で殺されそうに
なったし―――
一方的に魔物イコール悪っていうのは……
それに、俺に一番最初に話を持ち掛けたのは
魔王だったけど、あの王女よりは話が通じそう
でしたよ?」
今度はブロンドの短髪をした戦士が、複雑そうな
表情になって―――
そこへリナが、
「まあこれから、商売を交えて信用出来るか
どうか、見極めていけばいいと思います。
それにクラークさんもミントさんも、ここに
泊まってみて……
悪くはなかったでしょう?」
すると二人は顔を見合わせて、
「いやそりゃもう!
メシも酒もうまくって……!」
「あのスイーツと風呂とトイレのためなら、
何でもすると思うわアタシ。
何度クラークと、『ねえ、アタシらもう死んで
天国に来たんじゃね?』と確認し合った事か」
俺以外の同室のみんながウンウンとうなずく。
「でも商売して……
どこを目指しているんだ?
最終目標というか何というか」
戦士の冒険者の問いに、
「利益による敵対の回避―――
ですかね。
そもそも魔王に召喚されたのだって、
ほとんどなし崩しに、ですから。
積極的に敵対するつもりは無い代わりに、
特定の勢力に加担するという事もありません」
もちろんその間、防衛のための戦力強化も
考えるけど―――
と口には出さずに思っていると、
「今のところはまあ、そのお2人さんさえいれば、
たいていの敵は撃退出来るだろうし。
場所が場所だから、知られたところですぐには
攻め込まれないと思うよ」
女性シーフの言葉に心を読まれたかと思い、
思わず肩を垂直にビクッとさせる。
「俺たちは命を救われているんだし、
恩知らずなマネはしねぇ。
そこはもーちょい信用して欲しいな」
「それにこっちから関係を悪くする事は
ないって。
まだここのメシとか食い足りないしさー」
そこで俺は隣りのリナに目配せすると、
彼女もコクリとうなずいて同意し、
さらに詳細を詰めていく事にした。
「なるほど。
管理ptってのを増やしていって、
それをダンジョンの拡張や仕掛け―――
魔物生成に使う、と」
「眷属や冒険者が滞在するだけでも管理ptは
増え、さらなるダンジョン拡張が目指せるって
ワケかい。
しかしさ、ココの品を売ったところで……
その金がptとやらになるのかい?」
冒険者二人の疑問にまずパトラさんが、
「もちろんそれは無いが、その金で買った品物を
管理ptに変換する事は可能じゃ。
それに主が手に入れた品は、ptを使って
複製も出来るしのう」
「一番効率がいいのは、攻略目的の冒険者を
長く滞在させる事だねー。
眷属より多いptが毎日加算されるんだ。
なるべく長くダンジョン内に拘束して、
最後に処分するのが理想的なんだけど」
続くコマチさんがサラッと恐ろしい事を言う。
「いやウチは非殺傷のダンジョンだから!
痛いとか殺すのは禁止!!」
俺が否定すると、妻のリナが口を開き、
「ですので、宿屋のように何度も利用して頂く
必要がありますね。
今は立地条件的に厳しいですが……」
彼女の言葉で冷静になり、俺は改めて、
「俺は魔物とも人間とも共存を図る、
そんなダンジョンを作りたい。
だけど一方で俺は、カミュ王女に取って
生きていては困る存在だと思うし……
魔族の中には俺のような考えに同意出来ない
連中もいると思う。
だから俺や眷属たちの身を守るためにも、
独立を保つためにも―――
ダンジョンを拡張し、魔物も追加していきます」
そして俺は一息ついて、
「そしてクラークさんの先ほどの質問、
俺はどこを最終目標としているか、ですが……
ゆくゆくはクレイオス王国で、
いやこの世界で一番大きなダンジョンを―――
地下帝国を建設します!
そしてこの世界のみんなに、俺の世界の
ゲーセンの楽しさを知ってもらいます!!」
こうしてこの世界に来てからようやく……
俺の具体的な目標が決まったのだった。
10
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