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89・カミュ王女Side09
しおりを挟む「はあ……」
わらわは執務室で大きくため息をつく。
陛下からの手紙―――
その内容を読んで、また予想通りの結果に
気持ちが沈む。
司祭長が魔王・メルダの魔族領へ侵攻しろと
うるさいので―――
一度王族と聖教会の会合を開きたい、という
ものだった。
レオ様の話では、最近は神官どもを使って
女勇者の方へ要請に回っているというし、
どうしたものか……
「……様、カミュ王女様」
「どうなされましたか?」
複数の声が、わらわを現実へと引き戻し、
「む」
見ると、男の勇者を懐柔するためにわらわが
招集した、女どもが揃っていた。
「ああ、定時報告か。
何か動きはあったか?」
気を取り直して彼女たちへ向き直る。
「はい、まずレオ様ですが―――」
「レ、レオ様に!?
彼に何かあったか!?」
思わず大きな声を出してしまい、慌てて
取り繕う。
「は、はい。
骨抜きにし、かつ女性勇者様の方々とは
分断させよとの命でしたが……
聖女のユウコ様を始め、最近はある程度の
距離を取りつつ、情報交換だけはしている
模様。
また、色仕掛けについてなのですが」
「ど、どうしたのだ?」
なぜにこうまで心が乱されるのか。
勇者様とはいえ、あんな平民一人に―――
その先を固唾を飲んで待っていると、
「い、いえ。
相変わらずお調子者でして、乗ってきては
くれるのですが。
一線を超えようとするとうまく逃げられると
言いますか……
どうも遊び人のように見えて、そういう部分は
しっかりしていると申しましょうか」
確かに、わらわが胸を押し付けただけで、
顔を真っ赤にするほど初心だったからのう。
そこがまた可愛いというか―――
……い、いやいや。扱いやすいと言おうか。
どうも彼の顔が浮かぶと落ち着かぬな。
「そういうわけですので、現状―――
レオ様については上手くいっているとは
言い難く。
カミュ王女様の命を全う出来ず、
申し訳ございません」
「ふぅむ。
他の男勇者はどうなのだ?」
ここで彼以外の勇者に話題を振る。
「ルキア様についても、少しは誘導出来るの
ですが、こちらとの関係悪化にならない程度に
とどめているような状態かと」
十代後半から二十代前半くらいの女性陣に
続けて、今度は小学校高学年くらいの少女が、
「アトム様も、妹扱いと言いましょうか……
泣くと言う事を聞いてはくれますが、
無理強いまでは出来ません。
この前、やっと添い寝してもらえるところまでは
いったんですけど―――
本当に何もしないで寝やがっ……
いえ、ただ一緒に眠っただけでして。
最初に妹のように接したのが返ってマズかった
ようです」
うむう。
どうも彼らは、こちらの世界の男どもとは
違うようだな。
女性勇者の方も、こちらの男どもは失敗した
ようだしのう。
「ふむ、どうしたものかな」
わらわがつぶやくと、レオ様を担当している
者たちが、
「もっと積極的に仕掛けてみましょうか?」
「媚薬を使い、ベッドに裸で
潜り込むという手も―――」
「ダメだ!!」
わらわ自身も驚くような大声を出してしまい、
「あ、ああ。ええと……
げ、現状では戦の駒として上手く使えておる。
焦れば今の関係性を壊しかねん。
今の状態が最善なれば、それを維持せよ」
「「「ハハッ!!」」」
そこで彼女らは退室し、わらわは一人執務室に
残った。
「アレさー、もう完全にホの字でしょ」
「あたし勇者レオ様の担当だけど……
落としたところでぜってー揉めそう」
一方、男勇者の懐柔のため用意された女性陣は、
廊下を歩きながら小声で話し合っていた。
「あの調子だと、カミュ王女様―――
何とかして奪い返そうとするよね。
いや、そもそも恋人でも何でもないんだけど」
「今のところはねー。
でもレオ様もまんざらじゃ無さそうだし、
このままいけば自然にくっつくんじゃね?」
主人のいないところで、彼女たちの発言は
本音で交わされ、
「まあ、アトムお兄ちゃんに関わらなければ
いいですけど」
「お? 何?
本気になっちゃった?」
からかうような声が少女に向けられるが、
「ちーがーいーまーす!!
こんな可憐で可愛い美少女が一緒のベッドに
入ったのに、手ぇ出さないなんて許される
はずが無いんです!!
あれ本当に男ですか!?
別の生き物じゃないの!?」
「確かにねー。
ルキア様も紳士力パねぇっていうか。
いっつも私らの事を気遣ってくれているし、
時々自分でお茶淹れて、私らの分も用意して
くれるんだよね」
「マジか」
「バカな……そんな男が実在するなんて」
島村や熊谷、武藤たちからしてみれば、
元の世界のモラルからそれほど外れた事を
していないに過ぎないのだが―――
それは彼女たちに取っては衝撃のようだった。
「まあレオ様の事は置いといて……」
「ルキア様、アトム様については応援するよ」
こうして、裏で意見統一をしつつ、女性陣は
廊下を進んでいった。
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