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105・周回
しおりを挟む「ここは……」
ダンジョン:【エンテの街地下】
地下六階『多目的フロア』―――
そこの一室に連れてこられた男は、
傷のある顔を驚きの表情へと変える。
「俺のダンジョンは、このような魔導具を
操作してもらって……
クリア、つまり終わらせると成功なんです。
トラップ解除、みたいな?」
この部屋にあるのは、いずれもレトロゲームと
言っていいくらいの古いものだが、それらが
十種類ほど置いてあり、
「ダンジョンにはコアルームがあるって、
知っていますよね?」
「あ、ああ。
最深部にあって、それを破壊すりゃ
ダンジョンが機能しなくなるって話は
聞いた事がある。
俺は冒険者でも何でもないから、
詳しくは知らねぇが」
彼らのような人間でも、ダンジョンとは
縁が薄いのだろう。
まあ知らなくても生きていけるだろうしな。
「概ね、それで合っています。
俺のダンジョンはこの魔導具を解除していって、
各階、そのクリア数が条件を満たせば―――
コアルームへ行けるっていう寸法です」
彼はその奇妙な音と光を出す、複数の『魔導具』を
見渡して、
「で、俺にどうしろって言うんだ?」
「ちょっと賭けをしてみませんか?
まずは逃亡防止のため、俺の眷属に
なってもらいます。
そして賭けをしてあなたが勝ったら眷属は
解除して無罪放免。
それに金貨10枚差し上げます。
もし負けたら、知っている事を全部
しゃべってもらうって事で」
賭け、という言葉に反応したのか、
男の目が鋭く輝く。
日本でも昔は、博徒って言っていたくらいだし、
この手の人種はギャンブルと切っても切れない
関係なのだろう。
「おう、いいねえ。
どうせジタバタしても始まらねぇしな。
で、どんな物で賭けを?」
「この部屋にある魔導具を操作し、
解除してもらいます。
でもその前に―――」
俺はコマチの方へ振り向くと、彼女はごそごそと
メイド服からある物を取り出す。
そして彼にそれを見せびらかすように掲げ、
「な、何でぇこりゃ」
「『女神の腕輪』に『虹のリング』……
『幸運のチョーカー』、その他いろいろ
運が良くなるアイテムですにゃ~♪」
その説明に男は目を丸くして、
「……は?
それをどうしろってんだ?」
「これを付けてもらって、各魔導具を
操作してもらいます。
10台ほどありますが、そうですね……
3台解除に成功したらあなたの勝ちと
いう事で」
ポカンとする彼の前で俺は話を続け、
「どうします?
眷属になって、賭けに挑みますか?」
ここで男は合点がいったようにうなずく。
「なるほど。
眷属にするのは、俺がこのアイテムを使って
賭けを放棄し……
逃げ出さないようにするためってか。
いいだろう、やってやろうじゃねぇか」
「わかりました。
あなたを眷属にします。
ここの魔導具を3台クリアするまで、
あなたは部屋を出ないように。
それでは、頑張ってください」
こうして俺は彼を眷属に加えると、
数々のラック強化アイテムを与え―――
コマチと一緒にその部屋を出た。
「どれくらいもつかな?」
メイド姿の配下の問いに、
「中にトイレはあるけど、それだけだからなあ。
まあ持って3日だろう」
そして俺たちは通常業務へと戻った。
「あれ、もう終わりですか?」
「ふざけんな!
その『終わり』がねぇんだよ!!
何周終わっても終わらねぇんだ!
こんなのってアリか!?」
彼がギブアップしたのは次の日の夜。
確認のために部屋へ向かうと、早々に
悪態をつきながら負けを認めてきた。
「いったい何をしたのですか、ヒロト殿」
護衛に、元女性騎士団の代表としてサリーさんを
連れて来たのだが……
さすがに驚きを隠せないようだ。
そりゃ疑問だろうな。
何せあっさりと裏社会の人間の心を
折ったのだから。
俺はこのダンジョンのクリア条件を決める際、
その設定を求められたのだが、
・最終ステージをクリア。
・エンディングを見る。
・ゲームが終了する。
これを各魔導具のクリア条件とした。
(■36話 そしてレべルアップ参照)
しかし、実はこれには落とし穴というか
見落としがあったのだ。
それに気付いたのは、本格的にコアルームに
到達する条件を話し合った時。
それを聞いたリナやパトラ、コマチが
ドン引きしたほどだった。
(■53話 クリア条件参照)
「昔のゲーム……
あの魔導具は、エンディングや終わりそのものが
無いものがありましてね」
「はい?」
意味がわからない、というように、
シルバーの長髪の女性が返す。
「いったん終わっても、最初に『戻る』んです。
しかもどんどん難しくなっていって―――
達成出来ない条件が設定出来るとは
思いませんでしたが、俺やこの魔導具は
異世界の存在。
だから例外的に通ってしまったのかと」
そして案の定、彼に渡した幸運をブースト
させるアイテムは、ゲームクリアの手助けに
なったらしいが、
どれだけクリアしても、何周しても終わりには
ならず……
そしていくら幸運値があったところで、
人間そのものの精神力や体力までカバー出来る
はずもなく。
永遠にループするゲームを前に―――
ついに力尽きた、というわけだ。
「うわあ……
綺麗なお顔でやる事がえげつないですね、
ヒロト殿」
「これも自分とみんなを守るためですから。
それに―――」
俺はギャンブルに負けた彼と視線を合わせると、
「賭けに『イカサマ』は付き物でしょ?」
それを聞いた眷属の男は、力無く苦笑した。
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