109 / 203
109・カミュ王女Side11
しおりを挟む「捜査状況はどうなっておるか?」
「ハッ!
こ、これといった進展はまだ無い模様です。
魔境の森という事もあり、難航している
ようでありまして……」
金髪のウェービーヘアーの女性が、騎士らしき
人間を見下ろしながら報告を聞く。
「物証が無ければ情報でも構わん。
足跡でも人が過ごしたであろう場所でも
何でも―――
くれぐれも部外者には悟られるでないぞ」
「ハハッ!
ではこれにて失礼いたします!」
兵士を下がらせると、部屋に残ったわらわは一人
大きく息を吐く。
あの者たちが言った事が事実であれば―――
ほんのわずかだが希望はある。
わらわは、彼らを呼び出した時の事を
思い出していた。
―――カミュ王女回想中―――
「……では、お前たちはジンム・ヒロトが
死んだところは見ていないのだな?」
かつて、あの少年の移送と殺害を命令した
者たちを呼び出し、改めて問い質す。
「は、はい。
我々が見たのは、あくまでも血濡れの
ボロボロになった服と、魔物の気配だけで」
「魔物は?
どのような姿であった?」
「も、申し訳ございません!
茂み越しにしか見ておらず、かなり巨大だと
いう事しか……!」
―――カミュ王女回想終了―――
これで判明したのは、
・少年が死んだ、もしくは傷付いた姿を確認した
わけではない。
・少年を襲った魔物もハッキリとはわからない。
この二点を考えると、絶望的ではあるものの、
死んだという確証はどこにも無い。
もちろん長くは生きられなかっただろうが、
遺体もしくは遺骨が残っている可能性もある。
せめてそれを持ち帰り、手厚く供養しよう。
万が一この件がレオ様にバレても、少しは
彼の留飲を下げる事が出来るかも知れない。
「どれもこれも―――
言い訳でしかないが、な」
勇者召喚の計画……
聖教会との共同ではあったが、主導権は
王家であり、
勇者たちを王家の戦力として加える事で、
魔族他、各国ににらみを利かし、
同時に聖教会側に対する王家の影響力を増し、
彼らの面目を保たせる―――
良い事尽くめだったはずのもの。
だが召喚者の中に、想定外の幼い子供が一人
紛れ込んでいた事で、軌道修正を余儀なく
された。
わらわはすぐさま、彼の排除を決断。
これを逆手に取って聖教会を糾弾し、
また勇者たちの戦力は魔族領との戦争で証明され、
全て良い方向に行っている……
そう思っていたのだが、
「ああもうっ!!
最初はお調子者に見えて、その実、
女性関係には固く―――
それでいて実力はあり、相手を気遣う
礼節もわきまえている。
どこの物語の主人公なのよおぉお!!」
わらわは思わず立ち上がり、無人の部屋で
頭を抱える。
レオや他の勇者たちは、あくまでも自分たちの
世界のモラルを守っているに過ぎないのだが、
それはカミュに取って衝撃的な事であった。
「今思えば、最初は乱暴者だったという
印象もあったけど……」
実力を試す機会で、何人もの兵士たちに
ケガを負わせ、聖女の恩恵を持つユウコが
その回復に奔走したと聞いた時も、
後で詳しく調べてみると―――
彼らの事を小馬鹿にして、挑発した者が
いたとの事。
また、あいさつに来た貴族に暴力を振るった事も
あったらしいが、
それも当初は大人しく対応していたが……
段々と無礼な言動となり、
女勇者の中にも、あれは怒っても仕方がないと
同調する者がいたそうだ。
考えてみれば、彼らは拉致・誘拐されたも
同然の身。
見知らぬ土地で周囲を敵に回すのは得策では
ないと、大人の対応をしただけ。
レオ様はその不満を一番先にぶつけただけで―――
彼らは納得してこの場にいるのではないのだ。
「今さらになって、気付くとはな……
聖教会の動きも注視しなければならぬし、
頭の痛い事よ。
唯一の救いは、魔族領が静かな事くらいか」
わらわは改めて席に座ると、また一人思考の中に
身を沈めた。
0
あなたにおすすめの小説
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない
転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!
nineyu
ファンタジー
男は絶望していた。
使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。
しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!
リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、
そんな不幸な男の転機はそこから20年。
累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!
異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。
日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。
両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日――
「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」
女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。
目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。
作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。
けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。
――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。
誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。
そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。
ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。
癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる