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122・計画通り
しおりを挟む「というわけで……
現在、魔王・メルダは俺の妻として、
魔境の森ダンジョンを守ってもらっています」
後日、俺はダンジョン:エンテの街地下の
管理者部屋を通して、
ダンジョン:【ハーレイドッグ子爵家地下】、
ダンジョン:【ズコウファミリー本拠地地下】の
管理者部屋にいる二人に、状況を説明していた。
『フム、わかった。
しかしこれは便利な魔導具だな。
現地にいながらこのように会話が出来るとは』
『で?
その魔王メルダ様本人は、この魔導具で連絡は
つかねぇのか?』
ガド・ハーレイドッグ子爵様とズコウさんが、
モニターを通して話し掛けてくるが、
「はい、今繋げます」
そこで本拠地である魔境の森のダンジョンと
モニターを繋ぐ。
『おお、ヒロトか。
そこに映っている2人は?』
ロングの赤髪をした、十五・六才にしか見えない
少女がモニター上の会話に参戦し、
「ガド子爵様と、ズコウさんです。
2人とも俺の眷属で―――」
『おおそうか。
アタシの夫がお世話になっておる。
魔王メルダだ。
これからもよろしく頼むぞ』
子爵様も裏社会のボスも、
『こんな時どんな顔をしたらいいかわからないの』
という表情になる。
外見上はずっと年下の、ただの少女にしか
見えない女の子だ。
そりゃ対応も困るだろう。
「今日は取り敢えず顔見せという事で……
それぞれのダンジョンの様子はいかが
ですか?」
俺の隣りにいたリナがフォローのように
質問に入る。
『取り立てて異常はないよ。
ただ最近ロイが、持ち運びが出来る
『げぇむ』に熱中し過ぎのような
気がするけどね』
子爵様の息子、ロイ様には―――
任〇堂様の携帯ゲーム機を、非常用の
大型バッテリーと共に提供したからなあ。
何でか知らないが、ドラッグストアの
ポイント景品の中にあって……
それをゲームとモニター用の電源として
差し上げたんだっけ。
『俺のところも特に不満は無いが……
あの『でぃーぶぃでぃー』っての、
もっと無いか?
あの本物みてぇな劇はすごく面白い!
部下たちにも見せているが、毎回
好評だ』
ズコウさんには確か、大型バッテリーと
共に……
任侠もののDVDを渡してみた。
これはコンビニのDVDコーナーにあった
物だが、
やはりアウトロー、裏社会の人間だからか、
食い付きがよく―――
座〇市や仕〇人シリーズが大受けしている
らしい。
「メルダのところは?
何か無いか?」
『別にアタシのところも特には無いのう。
例の、何かを捜索していた人間どもが、
あの岩穴に入ってきた事があったが―――』
「前に言っていたヤツか。
何をしているんだろうな?」
クレイオス王国と思われる連中が、魔境の森を
探索しまくっていたので、メルダたちの移動が
遅れたという事情があったが、
(■108話・その頃メルダは05参照)
『さてのう。
その時はすぐ出て行ってしまったし、
連絡するヒマも無かったほどじゃ。
あと、これ以上人員が増えると―――
部屋が不安になる恐れがあるくらいか』
本拠地はホテルがメインで、地上二階から
四階までが宿泊部屋であり……
基本的に俺たちがいた時はほとんど使って
いなかったのだが、
魔王一行と獣人十名、それに風狼ニ十頭が
加わった事で―――
一行は地上二・三階のフロア、獣人は四階の
フロアを、そして風狼の群れはかつて子供たちが
いた団体部屋に、という感じで棲み分けされた
ようだ。
「わかりました。
ロイ様については、あまり遊び過ぎる
ようでしたら、他の眷属の子供たち……
女の子たちから注意してもらいましょう」
『ありがたい』
「ズコウさんのダンジョンへは、新作の
DVDをいくつかバームードさんに
持たせますので」
『おお、期待しているぜ!』
「メルダのところは、まあその捜索やら探索やら
している連中は―――
今のところ放置しておいてくれ。
こちらから接触したり刺激したりする
必要は無い。
もしこれ以上人員が増える事があったら、
俺がそこを拡張するから」
『それはそれとして、どんな理由でもいいから
顔を見せい!
新婚の嫁をあまり放置するでないぞ!!』
そこで三つのダンジョンとの回線は切れ―――
俺とリナはどちらからともなく、軽くため息を
ついた。
「お疲れ様、お兄ちゃん」
「ん、ああ」
彼女からコーヒーを受け取り、二人で交互に
口をつけるように味わう。
「……そういえば良かったのか?」
「?? 何がです?」
俺の問いにリナは、その薄黄色の髪を首を傾げて
垂らす。
「いや、メルダの事だ。
俺としては、リナだけで良かったんだが……
彼女も妻にしてしまった事について、さ」
いくら二人で積極的に勝負を仕掛けたとはいえ、
俺の意思の弱さもあるのは自覚しており―――
申し訳なく思っているのが本音だ。
するとリナは両目を閉じて、
「別にそれは計算通りというか、計画通り?」
「へ?」
俺がきょとんとしていると、彼女は俺の隣りに
座って密着し、
「だってメルダさんの状況を考えると……
何があってもお兄ちゃんの協力を取り付ける
つもりだったでしょ?
それにヒロトお兄ちゃんの性格からして、
困っている彼女を助けないっていう選択肢は
無かったと思うから―――」
俺が硬直していると、妻はそのまま話を続け、
「どの道、魔族と関わる事は避けられなかったと
思うし……
ただそうなると、今後メルダさんとどう
共闘していく事になるのか―――
対等だと後でいろいろ問題が起こるかなって
思って。
それならいっそお兄ちゃんに、主導権を
握ってもらおうと考えたんです」
って事は―――
あの時のあれ、全部演技だったっていうのか!?
(■113話
おんなのたたかい(決着?)参照)
怖え女って怖ええ……!
目を白黒させている俺にリナは微笑んで、
「うふふー、ヒロトお兄ちゃんでもそんな顔
するんですねー」
「頼もしい嫁を持てて何よりだよ」
俺は彼女を抱き寄せると―――
しばらく、二人きりの時間を楽しむ事にした。
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