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128・手土産
しおりを挟む「え?」
「この子が?」
「可愛い……♪」
翌日―――
ズコウファミリーの本拠地を訪れた俺は、
いかにもな夜の商売の女性たちと
体面させられていた。
「この人がヒロトさんだ。
隣りにいらっしゃるのは奥方のリナさん。
くれぐれも失礼の無いようにな」
組織のボス、ズコウさんの説明で女性陣は
揃って頭を下げる。
「じゃあ、行きましょうか」
そして俺とズコウさんを先頭に―――
ダンジョン:【ズコウファミリー本拠地地下】
へと一行は潜る事になった。
「な、何ですかココ!?」
「あの小さな部屋に入ったと思ったら、
こんな場所に……!」
エレベーターで地下へ降りて来た彼女たちは、
その景色に困惑する。
この反応を見るのも何度目か……
「そうだなあ。
リナ、俺は個室をカスタマイズするから、
その間に大浴場に行って来たらどうだ?
その時にまあ、『事情』も話しておいてくれ」
「わかりました、あなた。
じゃあ皆様、お風呂へ行きましょう」
リナの言葉に、『は?』『お風呂!?』と
彼女たちは色めき立ち―――
ぞろぞろとそちらの施設へと向かう。
残された俺はズコウさんに向かって、
「どこに作ったらいいでしょうか」
「そうだな。
俺の近くだと気が休まらねぇだろう。
あちらが『めだるこーなー』だから、
ちと遠くなるが、ぐるっと回ってその
反対側に……」
こうして相談しながらカスタマイズを続け、
小一時間後、彼女たちが湯から上がる頃には、
新しい大浴場と人数分の個室が出来上がって
いたのだった。
「ズコウ様!
見てください、これ! この髪!」
「何ですかあの髪を洗う『しゃんぷー』
『りんす』『こんでぃしょなー』と
いうのは!」
「あの『まっさーじ機』とかいうのも
すごかったです……!
体が本当に軽くなりましたもの」
帰ってきた彼女たちは口々に、大浴場の
素晴らしさを称賛する。
「おう、その事だがな。
ヒロトさんがお前ら用の大浴場を作って
くれた。
あと、宿泊部屋もそれぞれ用意したから、
気に入ったのならここで寝泊まりしても
構わねぇ」
それを聞いて手放しで喜ぶ彼女たち。
俺はおずおずとそんな女性陣に、
「えっと、それで……
『事情』はリナから聞いたと思いますけど」
眷属になる意思について、そこで確認するが、
「国が召喚したのに、殺されかけたん
ですよね!?
あり得ませんよ!」
「もちろん、眷属にならせて頂きます。
というかあんな話聞いて、国の味方になんか
なりませんって」
合意を得た俺は、そこで改めて彼女たちを
眷属に追加する。
「ありがとうございます。
ではそれぞれに個室の鍵をお渡ししますので、
受け取ってください」
それを聞いた彼女たちは目を丸くして、
「え?
ひ、1人1人に、ですか!?」
「おうそうだ。
ヒロトさんに感謝しろよ、お前ら」
ボスのお墨付きを得て―――
割り振られた部屋の鍵を各自受け取っていく。
「あ、あのズコウ様。
自分の部屋に、他の人を入れても構わない
でしょうか?」
女性の一人が、懇願するような目で
たずねてくる。
「ん?
ああ、お前は確か弟がいるんだったな。
身内なら別に構わねぇが」
俺はそう答えるズコウさんの方を向いて、
「えーと……
ウチのダンジョンでも、身寄りの無い子供の
面倒を見ていますから。
眷属になるという条件なら、こちらで
預かっても」
そう俺は返すが、恐らく同じように身内が
いるであろう女性たちが困惑した表情になる。
するとリナが俺の肩を人差し指でつつき、
「預かるって言う事は、引き離すという意味で
受け取られていると思いますよ?」
「うっ」
そこに考えが至らなかった。
それに事情を聞いたとはいえ、会ったばかりの
人間に家族を預けられるかどうかは別の話だ。
「だから、家族が多い人は―――
それに合わせて広くしたりとかしてあげれば。
あたしたちのダンジョンにもあった、
団体部屋を作ってもいいかも知れませんし」
妻の言葉に、ズコウさんに視線を向け、
「それで大丈夫でしょうか」
「構わんぞ。
なるべく要望を聞いてやってくれ」
ボスから許可が下り、俺は『従業員寮』と
なったエリアを彼女たちに案内し、
個室を家族の人数分広げて調整、
さらにそのエリアに団体部屋も追加して、
ようやくズコウファミリーへの『報酬』の
引き渡しが終了した。
そして【ズコウファミリー本拠地地下】を
離れる際―――
VIPルームにあいさつに伺ったのだが、
「でも本当にあれだけでいいんですか?
今回の『報酬』を彼女たちのためだけに……」
「俺がいいって言ってるんだからいいんだよ。
アイツらにゃ稼いでもらっているんだから、
これくらいしてもバチは当たらねえって」
意外と面倒見のいい人なのかも知れないなあ。
ま、そうでなければ―――
これだけの組織のトップは務まらないか。
すると隣りにいたリナが、すっ、と手荷物を
差し出し、
「え?
リナ、それは?」
「おっ?」
彼はそれを受け取ると、紐をするするとほどく。
折りたたまれた布? と思ったそれは、
「こ、こりゃあ……!?
まさか!?」
「はい。
あの『でぃーぶぃでぃー』が好きだと
聞きましたので。
気に入って頂けるかと」
それは時代劇に出て来るような―――
和風の上着だった。
ズコウさんはそれを羽織ると満面の笑みとなる。
多分、コスプレ喫茶から持ち出したのだろうが、
全然気付かず……
「リナ、いつの間にそんな物を」
「いやあ、一本取られたぜ!
たいした嫁さんだ!」
「おほほほ……
今後も、夫をよろしくお願いします」
こうして、ズコウファミリーへの
報酬引き渡しは、滞りなく終わった。
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