136 / 203
136・王都へ行こう05
しおりを挟む「……なるほど。
寄付金さえ出せば会うのは難しく
なさそうですけど」
聖女であるユウコ・タケダに会い―――
俺が生きている事、処分されそうになった事、
今は魔境の森を中心にダンジョンを構え、
逃亡先も確保してある事などを伝えるために
策を練っていたが、
「ただ個人的な事情や極秘情報を渡すのは、
少々難しそうですね」
治癒師のミュランさんが実情を語る。
寄付した金額にもよるが、たいていは複数人で
面会する事を定められており、
また聖女サイドにも、原則付き人や侍女という
見張り役がつくので……
『誰にも知られず』に、俺が勇者である事や
事情を話す事は、ほぼ不可能に思えた。
「まあ、今回に限っては様子見でも構いません。
それにあちらの世界でしか使わない単語でも
話せば、察してくれるかも」
スカイツリーや山手線、日の丸や君が代とか、
日本人ならではのワードを話すだけでも、
召喚絡みの人間だと気付いてくれるだろう。
だがそこでルランさんがリナに向かい、
「リナ殿。
あのコンビニだが……
例の―――いや、他のダンジョンの物と
同様の品は全て揃っているのでしょうか?」
リナはコクリとうなずき、
「ええ、もちろんです。
マリア様経由でいくつか、女性騎士団へ
送っていたとも聞いておりますが……
それと『同じ』ものはこちらにもありますわ」
俺は自分の嫁と視線を合わせ、
「ん? 何かもうこちらに送ってたのか?」
「はい、マリア様のご協力を得まして。
ただこちらの騎士団内で消費するものに
限定してますけど」
確かに、酒や日持ちする甘味もそこそこ
揃っているし―――
栄養ドリンクや化粧品だってある。
送る品物の種類には事欠かないだろう。
「ですから付き人や監視役の方は、
心配しなくてもいいと思います」
「?? どうしてですか?」
再びルランさんが口を開き、俺は思わず
聞き返す。
「女は女同士のツテがあると言ったでしょう?
『裏』の連中にこちらにある品物を
融通すれば、何人かは取り込めますよ」
ララベルさんが自信満々の表情で語る。
「えぇ……
でも、その手の方々ってそれなりに忠誠心が
高い人たちが担当しているんじゃ。
それにコンビニの商品って、食品や消耗品が
中心ですし―――
買収出来るほどの品物がありますかねえ」
俺が疑問を呈すると、
「まあ男ならともかく……
幸い、聖女様や女性勇者の部屋周辺は
女性で固められているようですので」
「……そこだけ内通させるのであれば……
問題無い……」
メグさんとリミットさんもそれに続く。
「お兄ちゃん。
あなたの世界では普通で珍しくも何とも
無いものだったとしても……
こちらの世界ではすごく貴重で、品質も
比べ物にならないんです。
コンビニの手鏡が一番高値で売れたって、
クラークさんたちも言ってたでしょう?」
そういやそうだった。
リナの言う通り、日本でいえば三百円か
五百円の手鏡が―――
金貨十枚以上、つまり十万円以上で
売れたんだっけ。
「それに、裏切れ寝返ろって言うほど
大げさなものじゃありません。
その時だけ目をつむってもらえばいい、
そう、交渉するだけですから」
現騎士団長の説明に、ようやく俺も理解する。
聖女様だし、面会する人は日に何人も
いるだろう。
そんな中、一人だけ見逃してもらえばいいだけ
だから―――
そうハードルは高くないはずだ。
「なるほど、確かに。
ではそっちの方はお任せして
大丈夫でしょうか?」
「もちろん!
それに、リナ殿の目は確かですよ」
ルランさんが熱く語り、
「うん、外れないもんね。
渡す物は奥方に任せれば大丈夫」
「こればかりはリナ殿に一日の長があります
からねえ」
「……奥様の選ぶ物は信用出来る」
元女性騎士団の面々も、リナの功績を
認める方向で続く。
ドヤ顔になる嫁の、薄黄色の髪を軽く
撫でて、
「ありがとう、リナ。
じゃあそっちはお任せするね。
俺もちょっとコンビニ行こうかな」
「ヒロト殿が、ですか?」
グリーンの短髪の治癒師が話に加わる。
「ええ。
俺も手土産に何か持って行く物を
選んでおこうかなって。
特に日本の食べ物とかに飢えていると
思うので―――」
「それでしたら私も。
聖女様の好みを知っておきたいですので」
こうして俺とミュランさんは、ロビーを離れた。
「……リナ殿。
本当に、例の物がこの『こんびに』でも?」
「はい。
お兄ちゃんは何も考えずに再現していると
思いますので、当然『アレ』も」
ルランの質問にリナが答え、
「価値がわかっていないというのは、
恐ろしいもの」
「あの書物に抗える女性がいるもの
だろうか?」
「……しかも新規更新あり……!」
ララベル・メグ・リミットが続き、
「それとなくお兄ちゃんに、商品が
入れ替わるからと―――
それまでの品全てを後で複製出来るよう
取ってもらっています。
なのでお兄ちゃんある限り……
『アレ』は追加され続けると思っておいて
ください」
リナの言葉に彼女たちの目はドス黒く光り、
女性陣だけの暗黙の密約が交わされた。
0
あなたにおすすめの小説
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない
転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!
nineyu
ファンタジー
男は絶望していた。
使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。
しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!
リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、
そんな不幸な男の転機はそこから20年。
累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!
異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。
日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。
両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日――
「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」
女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。
目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。
作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。
けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。
――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。
誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。
そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。
ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。
癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる