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137・ゲーセンダンジョン・七店目! 聖女との謁見
しおりを挟む「……お久しぶりでございます、聖女様」
ミュランさんが眼鏡をかけた、黒髪黒目の
セミショートの女性を前に跪く。
「確か、治癒師の方でしたね。
そちらの子供たちは……
治療が必要なのでしょうか?」
彼の後ろで同じように跪く俺とリナに、
彼女は声をかけてくる。
ここは、召喚された勇者の一人―――
ユウコ・タケダに用意された王宮の一室。
聖教会に1万エンダールほどの喜捨を行い、
(お金は女性騎士団のカンパで何とかなった)
こちらから出してもいい情報の打ち合わせ等を
行った後、
謁見にこぎつけたのであった。
俺はリナと一緒に彼女の前に進むと、
ある物を手渡す。
「えっ」
それを両手で受け取ると、聖女様は俺と
その品物の間で視線を往復させ、
「どうぞ、食べてください」
リナの言葉に困惑の色を見せる。
すると今度は部屋にいる侍女や、護衛の女性騎士
らしき人に目をやるが、
「あ、大丈夫です。
今回の事は何も見ておりませんから」
「自分もそれ頂きましたよ。
すごく美味しいですよね、オニギリ!」
返ってきた言葉の通り、聖女様に渡したのは
オニギリ。
例の、細いビニール部分を引っ張ればそのまま
海苔に包まれるようになったもの。
「えっと……
俺の事、覚えていますか?
仁務博人です。
あなたと同じように召喚された―――」
すると彼女は突然俺を抱きしめて、
「良かった……!
生きていたのね。
心配したんだから、本当に……!」
泣きながら俺を抱きしめる彼女。
それを親の仇のごとくオーラを出しながら
獲物を狙う猫のような目で見つめるリナ。
俺は何とか聖女様をなだめ、引き離すのに
時間を要した。
「謁見時間が限られているので、
話せる事だけ話します。
俺は魔境の森へ移送された時、すきを見て
逃げ出しました。
どう考えても、俺を元の世界へ戻すという
雰囲気ではなかったので……」
改めてミュランさん、俺、リナが席に座り、
聖女様と向かい合う。
「それは私たちも最初から疑っていたわ。
最悪、殺されているんじゃないかって―――
生きてて本当に良かった」
ここではあえて、明確に殺されそうになった、
という情報は伏せる。
それを知られた王国側が、勇者たちにどう出るか
わからないのと……
勇者側としてもそれを知ってしまえば、
直接国側に抗議する人間が出てくるかも、
と思ったからだ。
「ああでも美味しい……!
久しぶりのお米……」
涙ぐみながらオニギリを頬張る武田さんに、
「実は俺、王国に呼ばれる前に魔王から
スカウトされていたんです。
その途中で王国側に横取りされたという
形で―――
それで俺には、ダンジョン管理者として
ダンジョン作成、それにある程度地球の物を
再現出来る能力が備わっていました。
この能力で今まで生き延びてきたので」
そこで彼女は食べるのをいったん止めて、
「ま、魔王!?」
「はい、魔王メルダです。
……少なくともここの王女様より、
話は通じる存在でしたよ。
人を殺したくない、という俺の条件もすんなり
受け入れてくれましたし」
それを聞いて室内の人間は微妙な表情になる。
「じゃあ、その外見も……」
「これは彼女の好みらしいです。
そうカスタマイズしたって言ってましたから」
そこまで言うとリナがすっ、と俺の隣りで
腕に両手でしがみついて、
「その魔王メルダさんは今、ヒロトお兄ちゃんの
二番目の妻になっています。
あたしは一番目の妻、リナです。
よろしくお願いします」
それを聞いた武田さんの口から、ご飯粒が
ぽろっと落ちる。
まじまじと俺たちを見つめるが、やがて
微笑んで、
「そうなの。
奥さんなのね?
若いのにしっかりしてて、良く出来た
お嫁さんね」
あ、これアレだな。
『子供が結婚ごっこしている』という認識。
リナともメルダともガッチリ肉体関係持って
いるけど、それは黙っておこう。
今は説明する時間が惜しいし(現実逃避)。
「そ、それでですね。
俺は今、6つのダンジョンを王国各地に
作成してあります。
その1つは先日、女性騎士団の協力を得て
王宮内の彼女たちの拠点に作りました。
もし脱出する気があるのなら、そこから
俺のダンジョンに―――」
「いざとなれば、ハーレイドッグ子爵家も
この事を知っておられますので、
エンテの街まで来て頂ければ」
俺とミュランさんとで、ようやく本題を
切り出すと、聖女様は首を横に振って、
「……私たちだけ、逃げるわけにはいきません。
問答無用で連れて来られた世界ですが、
それでも助けたい人たちはいます。
他の勇者の人たちも、それぞれ―――
お世話になった方々は見捨てられない、
と言っていますので」
俺とは違い、丁重に扱われたのだろう。
この一室を見てもそれなりの待遇を約束され、
大事にされていた事はわかる。
さらには身の回りの世話をする人とも親しく
なれば、今すぐには決められないだろう。
ただある意味これも想定済み。
今回の目的は達成されたと言っていい。
俺が生きている事、逃げる先がある事―――
この情報を勇者たちに渡し、今後の事を
考えてもらう。
避難先がちゃんとあるだけでも、心に余裕が
出来るだろう。
「わかりました。
それと、俺は今王国に捜索されている
ようです。
何で今さら探しているのかはわかりませんが、
俺は王国を信用していません。
どうか俺が生きている、という事は国には
内密にお願いします」
「ええ、もちろん」
そして俺が一礼して席を立とうとすると、
「あ、あのっ」
「何ですか?」
やや焦ったように武田さんが話しかけてきて、
「このオニギリ、出来れば他の勇者の人たちにも
分けてあげたいのですが……
次はいつ来る事が出来ますか?」
そこで俺は、同室の女性騎士団の一人に
手の平を上に向けて指し、
「王宮内の女性騎士団の拠点、その地下に
ダンジョンを作りました。
そこにはコンビニ、ドラッグストア、
大浴場まで再現しましたので―――
何かあれば女性騎士団に言えば、持ってきて
もらえるかと」
「本当!?」
目を輝かせて喜ぶ武田さん。
そこでリナが、くいくいと俺の腕を引っ張り、
「ん? 何?」
「それならいっそ、ここにもダンジョンを
作ってしまったらどうでしょうか。
聖女様の部屋なら、来る人間も限られて
いるでしょうし―――
ここと女性騎士団の拠点地下を結ぶだけなら、
時間もかからないかと」
「い、いいの!?」
驚きと喜びが入り混じった彼女に押される
ようにして、俺は聖女様の部屋の地下に
ダンジョンを作成する運びとなり―――
こうしてゲーセンダンジョン七店目が
作られたのであった。
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