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172・ゲーセンダンジョン・十五店目! メルダの使者
しおりを挟む「さて、と……
パトラとコマチと言ったか?
メルダの使者との事だが―――
用件を聞こう」
俺は王宮まで戻り、二人の使者を前に
玉座に腰かける。
魔狐と銀猫、
恐らくダンジョン産の魔物だろうが……
かなりの管理ptを消費して生成されたらしく、
我が軍の中でも部隊長クラスに匹敵
するだろう。
その大きな胸を誇るように、ホワイトシルバーの
長髪の魔狐が一歩前へ出て―――
板のようなものを取り出す。
そしてその板に、地下の魔道具のように動く
画面が映し出された。
『兄上、久しぶりだのう。
ああ、先に言っておくがこれは記録された
ものだ。
応答は出来ぬからな』
「……メルダ」
俺の周囲にいた部下はその光景に、そして
囲むようにいた部下はその声に驚く。
その板に映し出されたのは、間違いなく妹にして
前魔王・メルダだ。
だが問題は彼女ではない。
その背後にあるのは―――
俺の魔王城、王の謁見の間だった。
『見ての通り、魔族領は再びアタシの支配下に
入った。
北方にある同じ魔族のドメルン国が、
国境付近に戦力を集結させている事実を
防衛部隊に伝えてやったら……
あっさりと指揮下に入ったわ。
ああ、ドメルン国へはアタシが魔王に
返り咲いたと使者を送ったら、兵を引いた。
だから安心せい』
くそ、時間をかけ過ぎたか。
まさか本拠地がこうも簡単に落とされるとは。
『ほ、本当か?』『メルダ様が……』
と、部下たちにも動揺が広がっていく。
メルダは表情を変えずに―――
なおも俺に語り掛けてきて、
『いくら兄上でもこの状況は理解出来るで
あろう?
退路は断たれ、クレイオス王国王都は
ともかく、地下のダンジョンはまだ
落ちてはおらん。
さらに長引けば他の人類国から援軍が
来る事は必定。
どこぞへ撤退しようにも、王国の勇者たちが
見逃してくれるとは思っていまい?』
「…………」
痛いところを全部突いてきやがる。
俺一人なら何とかなるだろうが、部下たちは
勇者に太刀打ち出来ん。
籠城は出来るだろうが、問題を先送りに
するだけだ。
メルダの言う通り……
ここの地下のダンジョン、他の人類国、さらに
メルダ率いる魔族軍が来たらひとたまりもない。
『そこで兄上に提案がある。
いったん、クレイオス王国から退けい。
そして我が魔族領に帰ってくるのだ。
そこでアタシと決着をつけようぞ』
「何だと?」
応答が出来ないのはわかっているが、
思わず声が出てしまう。
『詳細はそこのパトラ、コマチに聞くがよい。
では良い返事を期待しておる』
そこで板に映っていたメルダは姿を消し、
全てが真っ黒になった。
板をしまう魔狐の横で、メイド服を着た
黒髪黒目の銀猫が口を開き、
「では説明させて頂きますにゃ~ん。
すでに地下にある魔導具の数々は、
操作した事があると思いますが―――
そのダンジョンは魔族領にも作って
ありますので、それを使って勝負したいと
メルダ様は申されていますにゃ」
その言葉に部下たちがざわつく。
「競争や対戦が出来る魔導具があったはず。
それぞれ、各魔導具の代表者を選出し、
勝った方が多い側を勝者とするのです」
次いで魔狐が勝負方法を提示してきた。
ここにいる連中も、あの魔導具を一通り操作した
事がある。
それで決着を、と言われ……
驚きと期待が入り混じった表情となる。
「賭けるのは、魔族領及びクレイオス王国の
支配権にゃ~」
「……はあ?」
間の抜けた言葉とは対照的に、俺は思わず
立ち上がる。
「メルダは、クレイオス王国と組んだのか!?」
すると魔狐と銀猫は顔を見合わせて、
「そもそも両方を敵に回したのは―――
エバンス様でございましょう?」
「なら、双方が組んで来ても、
文句は言えないはずにゃ~ん♪」
パトラは微笑を、コマチは笑顔で返してくる。
俺は舌打ちしてそれを飲み込む。
「すると今回の勝負は……
俺が率いる勢力と、メルダ・クレイオス王国
連合の勝負となるわけか。
いいだろう。
ここからは引き上げてやる」
すると使者二人はうやうやしく頭を下げ、
「賢明なご判断に敬意を表します。
なお撤退の際、クレイオス王国王家に
追撃はしない事を確約させております」
「後は魔族領に戻ってから、指示に従って
くださいにゃ~」
こうして俺は―――
メルダの提示した勝負を受け入れた。
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