何にでもなれるおっさん

白紙 津淡

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 釣り人を老人にしてしまったおっさんは一度歩くのをやめ、おっさんの家に帰ることにしました。
 家に帰るのはずいぶん久しぶりですから、きっとおっさんはもう特に何にもならず、ありのままのおっさん姿で何も不自然ではないはずです。

 ところが、おっさんがおっさんの家に腰を落ち着けてしばらく経つと、まわりの村で妙なが流れ始めました。
 聞けば何でもそれは、おっさんはの人喰い鬼だ、などという、おっさんからすれば実に根も葉もないひどいです。
 しかし、おっさんが鳥になってみたり草花になってみたり、時にはさわやかな春の風にもなってみたりして、こっそり、村人たちの言い分によくよく聞き耳を立ててみると……どうにも、そのにはそれなりに根拠がある様子なのです。

「あの家のは、もう何十年も前に旅に出たはずだ」
「なのに今さら、それも、あんな身なりで帰ってくるなんて」
「ああ気味が悪い、あれはきっと、もう人間ではなくなってしまったに違いない」
「きっと生きた人間の血肉をむさぼって、あのをたもっているんだわ」
「おお、なんとなんと、恐ろしや恐ろしや」

 おっさんは「ああ、しまった」と頭を抱えましたが、残念ながら、誤解をとくにはもう遅すぎました。
 がすっかり広まりきってしまうや、何とかおっさんに喰われまいと、まわりの村々の村人たちは競うようにせっせと、おっさんにをし始めます。
 競うようにせっせと、おっさんになど納め始めます。
 あげく、多分おっさんを村々から少しでも離れた所に住まわせたいが為なのでしょう、小高い山の上に立派なまで建てられてしまいました。
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