かけがえのない君に告ぐ

春原しずく

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第二章 恋に落ちた日

第六話

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「ねえねえ、神城かみしろさんって本物の神様なの?」
「神様って、私たちとおんなじご飯を食べるの?」
呪宝会じゅほうかいの人といっしょに寝起きしていたって聞いたけど、それ、ほんとの話なの?」
龍源寺りゅうげんじさんの家で暮らしているという噂は本当?」
登校したジュエルを待っていたのは、クラスメイトたちによる質問攻めだった。
年上の少女たちに四方しほうを囲まれていても、さすがは神と賞賛すべきか。
受け答えをするジュエルの態度は、実に堂々としたものだった。自席じせきごと包囲されても少しも焦らずに、丁寧に質問に答えていく。
「うん、そうなの。私、一応神様ってことになってるみたい」
「ご飯は食べるよ! でも、一ヶ月ぐらい抜いても全然平気」
「ちっちゃな頃に呪宝会に引き取られて、そこで育てられたよ。だから、噂はほんと。けど、親や友達に手紙を出すことは認められていたよ。……電話やメッセージアプリは駄目だったけどね」
そして彼は、「美美子ちゃんと同居しているのも本当のことだよ!」と誇らしげに答えた。
「ジュエルって物怖ものおじしない性格なのね……」と思いつつ、目の前で繰り広げられる会話を見守っていた美美子は、ふと嫌な予感を感じて慌てて口を挟んだ。
「ね、ねえ。もうすぐ予鈴よれい鳴っちゃうし、皆、席に着きましょうよ……」
しかし、せっかくの声かけはあっさり無視された。
クラスメイトたちはジュエルに目を向けたまま、振り返りすらしなかったし、話の中心人物たるジュエルに至っては、
「美美子ちゃんは私の婚約者だから。だから、っちゃ駄目だよ」
と大声で言い切ったのである。
「へ? 婚約者?」
美美子のそばに立って会話に耳を傾けていたあらたが、ほうけた声を上げる。
「あら、まあ。神城さんと龍源寺さんって、そういう仲だったのね」
ジュエルの近くにある自分の席で文庫本を読んでいた狭霧さぎりが、嬉しそうににこりと笑う。
「ち、ちょっと、ジュエル!」
「なんてことを言っちゃうの、この子ったら」と胸の中で毒づきながら、声を挟む。
けれども、当の本人は美美子の反応に頓着とんちゃくせず、すらすらと話を進めるのだった。
「私と美美子ちゃんは、元々文通をしていたの。いわゆるペンフレンドってやつね。……で、うちのお父さんと美美子ちゃんのお父さんも仲が良くてね。なんか、私たちの知らないところでお互いの子どもを婚約者同士に仕立て上げちゃったんだよね」
「すっごーい! ドラマみたーい!」
「じゃあ、龍源寺さんとは家族ぐるみのお付き合いなんだぁ」
「神城さんってかわいいし、美人だし、頭もかなりいいし、なんてったって神様だし……。いいなあ、龍源寺さん。将来安泰あんたいじゃない」
級友たちが賞賛の言葉をジュエルに捧げる一方、美美子は前のめりに身を傾けた。
「ち、ちょっと、美美子ぉ! いったい、どうしちゃったんだよぉ!」
新がしゃがんで、美美子の体を支える。
「具合でも悪いの? なんだったら、保健室に行ってみる?」

「い、いや、……いいの。それは別にいいの」

問題は、たったいま発されたジュエルの言葉だ。 
こんな早い段階から婚約の話をするなんて、いくらなんでもあんまりだと思う。

【続く】
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