かけがえのない君に告ぐ

春原しずく

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第二章 恋に落ちた日

第二十五話

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「ジュエルのことならなんでも知っている」という自覚があった。
いちばん好きな動物や得意科目、はじめて読んだ本など、彼に関するあらゆる情報を把握していると、美美子は自負じふしていた。
ひとつ年下の友人が心のうちをさらけ出してくれることにちょっとした優越を感じていた。それは事実だ。
誰だって、嫌われるよりもなつかれたほうが気分がいいだろう。ましてや、相手が年下ならば、多少は愛着あいちゃくが湧いてくるだろう。
美美子にとって、神城かみしろジュエルとはそういう存在だった。いつでも無邪気で明るくて、一途に慕ってくれるかわいい身内。ひとつ年下の愛らしい友。
けれど、少し認識にんしきをあらためなければならないようだ。
遠慮がちに身に触れてくる彼は、まるでつ足のけもののように獰猛どうもうな表情を晒しているのだから……。


「美美子ちゃん……」
照明の光がともる部屋の中、衣擦きぬずれの音が控えめに響く。ジュエルの手によって、ワンピースタイプの寝間着が丁寧に脱がされていく。
「ん……」
息が漏れる。繰り返しキスを受けながら裸にされ、美美子は頬を火照らせた。
秋なのに、──それなりに気温の低い季節であるはずなのに、ひっきりなしに手汗がにじんだ。頬だけでなく、顔全体が熱を持った。
優しくも大胆なくちづけをひとつ受け取るごとに、皮膚の底にこもった熱が昂る。悩ましい疼きが全身を駆けめぐってゆく。
「ふ……、ぁ……」
ぬるむ口内を舌先で愛撫され、美美子は身悶えた。はじめて知ったキスの味に翻弄されながらも、必死にジュエルにすがって、さらなる接触を無言のうちにねだった。
自分から誘うのはさすがに気が引けた。ジュエルのことを気持ちよくしてやりたいのはやまやまだが、自分から媚態や痴態を見せつけて誘惑するほどの度胸は、ほとんど持ち合わせていなかった。
──怖いのだ。「ふしだらな女」と揶揄やゆされるのが。
もちろん、ジュエルはそんなことをしないと思う。あきれるどころか、星のように目を輝かせ悦ぶだろう。恋人からの誘惑を喜んで受け入れてくれるに違いない。
与えられる快楽に身を委ねればいい。
それはわかっているのだが、みずから悦楽をむさぼるには、美美子はまだ幼すぎた。
「ん……、……っ……」
むき出しになった乳房に、ゆるい圧が加わる。ジュエルの手が触れてきたのだ。
「綺麗な胸だね」
言いながら、彼が乳房を揉む。
てのひらの動きに合わせて、乳肉が潰れたりひしゃげたりし、形を変えてゆく。
「あ……、っ……、」
美美子は膝と膝とをり合わせ、股間に響く疼きに耐えた。はじめて味わう感覚だった。
「濡れた」と悟った。「ジュエルに触れられただけで、足の間が濡れた」と気づいた。
乳房のかたちを歪められるたびに、体に熱が兆してゆく。「快感」という名の熱が。稲光いなびかりのように鮮やかな熱が──。

「……ジュエル」
「なに?」
彼がちらりと目を上げる。乳首をひねる指の動きはそのままに、「どうしたの?」と問うてくる。
「まさかとは思うけど……。私に触れられるの、嫌? 気持ち悪い?」

仰向あおむけに押し倒されながら、美美子は「違うの」と答えた。
吐息のように甘やかな刺激を五体で味わいながら、「……違うのよ。そんなんじゃないの」と繰り返した。

【続く】
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