かけがえのない君に告ぐ

春原しずく

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第三章 光は去らず

第三話

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美美子は我が目を疑った。あまりにも意外な展開だったために、声を出すのも忘れ、姫櫻ひめざくらの下にいたその人物を凝視する。
手紙の差出人は、三組の川上かわかみあゆかだった──はずだ。
けれど、約束の場所に立っていたその人は川上でなく、
「遅かったね。龍源寺りゅうげんじさん」
──クラスメイトの上月巴こうづきともえだった。
たじろぐ美美子を見、巴が微笑する。暗闇よりもくらい笑みが、彼女のおもてにあらわれる。
「どうして……」美美子は声を振りしぼった。
「どうしてあなたがここにいるの? 私、川上さんに呼ばれたはずなのに……」
「だって、その手紙を書いたの私だもん」
ぺろりと舌を出して、巴が言った。
美美子は固く口を閉ざした。上月さんが川上さんの名前を騙って、手紙を出した……? どうして? なんのために?
「すっかり戸惑っちゃっているようだね」巴はやはり、陰気に笑んだままだ。
「あのね、私、どうしても君と二人きりになりたかったの。でも龍源寺さん、いつも神城かみしろさんと一緒にいるでしょ?」
巴がヘアゴムをはずす。
長くのびた黒髪が、はらりとなびいて彼女の肩を覆った。
公園の奥には、美美子と巴の二人がいるのみだ。
もともと、このあたりを好んで通る人はあまりいないのである。
「でも、最近の神城さん、雲雀山ひばりやまさんとよくつるんでいるでしょ? だから、『チャンス到来とうらいだなあ』と思って行動に移したの。
そしたら、龍源寺さん、私の作戦に見事に引っかかってくれちゃって……。ほんと、嬉しいな。こんなに上手くいくとは思わなかった」
「どうして川上さんの名前を使ったの? ただ単純に呼び出すためなら、最初から自分の名前を伝えればよかったんじゃないの?」
「それはね、」巴が言った。「神城さんに感づかれないようにするためだよ」
美美子はまたしても口を閉ざした。
──わからない。
なぜそこまでジュエルを警戒するのか、私にはさっぱりわからない。
「神城さんともいずれお話する予定だけれど、その前に私は君に用があったの。だから今日、思い切ってここに呼び出してみたわけ」
「……」
美美子は巴の顔を見た。暗く微笑む彼女の顔を真正面から見つめた。
「でも、神城さんはただのM性じゃない。……神様なんだよね。だから、私の企みにもすぐ気がつくんじゃないかな」
「ええ。あの子、空間移動ワープが得意だし、きっとすぐに駆けつけてくれると思うわ」

「……だよね」
巴がすっと目を細める。

残照ざんしょうを浴びた空は、燃えるように輝いている。
美美子は、話の続きを待った。

【続く】
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