かけがえのない君に告ぐ

春原しずく

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第三章 光は去らず

第三十九話

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「けれど、えにしは違いました。感情を捨て切れなかった彼は点数をいっぱい引かれました。
──そして、冬。粉雪の降るとある朝、縁は持ち点をすべて失ったのです」
ジュエルが淡々と事実を述べる。
「ひどい環境だわ」といきどおったものの、美美子にはもはやどうすることもできない。一般人たる自分に、呪宝会じゅほうかいのやり方を弾劾だんがいできるはずがないのだから……。
「縁は罰されることになりました。養成所にいた化神けしんたち全員から、一回ずつ殴られるという罰を受けることになったのです」
「じゃあ、ジュエル。あなたも──」
「はい」
彼が控えめにうなずく。
「しかし、私は嫌だった。縁を殴るなんて恐ろしいこと、したくありませんでした。
……けれど、私には上層部に反抗する勇気がありませんでした。これっぽっちもありませんでした……」
「あなたは結局、縁さんに手を上げたのね?」
「はい」
彼が小さくうなずく。
「でも、それでも私は、──私は、『嫌だ』と思いました。『友達に手を上げたくない』と強く思いました。そして次の瞬間、感情が制御できなくなって……」
「暴走したの?」
ジュエルは返事をしない。
ただ困ったように打ち笑うのみだ。
「気がついたとき、私は救護室きゅうごしつのベッドの上にいました。久永求ひさながもとむ──当時の私の世話役せわやくから聞くに、『止めるのに、大変難儀なんぎした』とのことでした。
そして、彼はこうも言いました。『縁があなたを止めようとしたけれど、返り討ちにあって大けがをした』と──」
美美子はジュエルの顔をまじまじと見つめた。
彼はなにかに耐えるように、目を閉じている。
「これが私の罪です」
まぶたをしっかり下ろしたまま、ジュエルは呟いた。
「私は、友達に怪我をさせるという罪を犯してしまった。だから、ここでこうやって自分を罰しているのです」
「縁さんが『手首を切って』と迫ってきたの?」
「いいえ」
ジュエルがはっきりと答えた。
「縁はむしろ、私をかばってくれました。『ジュエルはなにも悪くないよ』と慰めてくれました。……でも、私は自分を許すことができない。友達に痛みを与えてしまった自分が呪わしくてたまらないのです」
「あなたはなにも悪くないわよ」美美子は言った。
「縁さんだってあなたを責めたりしなかったのだし、自分のことを許してあげてほしいわ」
「無理です」
「どうして?」
「それは……わかりません。ただ、私は自分を罰したいのです。友達を傷つけた自分が幸せになることなど、どうしても認めたくないのです」

「私は自分を許したくない。縁に……親しい友に暴力を振るった自分は、永遠に罰されるべきだと思うから」

【続く】
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