94 / 103
第三章 光は去らず
第三十九話
しおりを挟む
「けれど、縁は違いました。感情を捨て切れなかった彼は点数をいっぱい引かれました。
──そして、冬。粉雪の降るとある朝、縁は持ち点をすべて失ったのです」
ジュエルが淡々と事実を述べる。
「ひどい環境だわ」と憤ったものの、美美子にはもはやどうすることもできない。一般人たる自分に、呪宝会のやり方を弾劾できるはずがないのだから……。
「縁は罰されることになりました。養成所にいた化神たち全員から、一回ずつ殴られるという罰を受けることになったのです」
「じゃあ、ジュエル。あなたも──」
「はい」
彼が控えめにうなずく。
「しかし、私は嫌だった。縁を殴るなんて恐ろしいこと、したくありませんでした。
……けれど、私には上層部に反抗する勇気がありませんでした。これっぽっちもありませんでした……」
「あなたは結局、縁さんに手を上げたのね?」
「はい」
彼が小さくうなずく。
「でも、それでも私は、──私は、『嫌だ』と思いました。『友達に手を上げたくない』と強く思いました。そして次の瞬間、感情が制御できなくなって……」
「暴走したの?」
ジュエルは返事をしない。
ただ困ったように打ち笑うのみだ。
「気がついたとき、私は救護室のベッドの上にいました。久永求──当時の私の世話役から聞くに、『止めるのに、大変難儀した』とのことでした。
そして、彼はこうも言いました。『縁があなたを止めようとしたけれど、返り討ちにあって大けがをした』と──」
美美子はジュエルの顔をまじまじと見つめた。
彼はなにかに耐えるように、目を閉じている。
「これが私の罪です」
まぶたをしっかり下ろしたまま、ジュエルは呟いた。
「私は、友達に怪我をさせるという罪を犯してしまった。だから、ここでこうやって自分を罰しているのです」
「縁さんが『手首を切って』と迫ってきたの?」
「いいえ」
ジュエルがはっきりと答えた。
「縁はむしろ、私をかばってくれました。『ジュエルはなにも悪くないよ』と慰めてくれました。……でも、私は自分を許すことができない。友達に痛みを与えてしまった自分が呪わしくてたまらないのです」
「あなたはなにも悪くないわよ」美美子は言った。
「縁さんだってあなたを責めたりしなかったのだし、自分のことを許してあげてほしいわ」
「無理です」
「どうして?」
「それは……わかりません。ただ、私は自分を罰したいのです。友達を傷つけた自分が幸せになることなど、どうしても認めたくないのです」
「私は自分を許したくない。縁に……親しい友に暴力を振るった自分は、永遠に罰されるべきだと思うから」
【続く】
──そして、冬。粉雪の降るとある朝、縁は持ち点をすべて失ったのです」
ジュエルが淡々と事実を述べる。
「ひどい環境だわ」と憤ったものの、美美子にはもはやどうすることもできない。一般人たる自分に、呪宝会のやり方を弾劾できるはずがないのだから……。
「縁は罰されることになりました。養成所にいた化神たち全員から、一回ずつ殴られるという罰を受けることになったのです」
「じゃあ、ジュエル。あなたも──」
「はい」
彼が控えめにうなずく。
「しかし、私は嫌だった。縁を殴るなんて恐ろしいこと、したくありませんでした。
……けれど、私には上層部に反抗する勇気がありませんでした。これっぽっちもありませんでした……」
「あなたは結局、縁さんに手を上げたのね?」
「はい」
彼が小さくうなずく。
「でも、それでも私は、──私は、『嫌だ』と思いました。『友達に手を上げたくない』と強く思いました。そして次の瞬間、感情が制御できなくなって……」
「暴走したの?」
ジュエルは返事をしない。
ただ困ったように打ち笑うのみだ。
「気がついたとき、私は救護室のベッドの上にいました。久永求──当時の私の世話役から聞くに、『止めるのに、大変難儀した』とのことでした。
そして、彼はこうも言いました。『縁があなたを止めようとしたけれど、返り討ちにあって大けがをした』と──」
美美子はジュエルの顔をまじまじと見つめた。
彼はなにかに耐えるように、目を閉じている。
「これが私の罪です」
まぶたをしっかり下ろしたまま、ジュエルは呟いた。
「私は、友達に怪我をさせるという罪を犯してしまった。だから、ここでこうやって自分を罰しているのです」
「縁さんが『手首を切って』と迫ってきたの?」
「いいえ」
ジュエルがはっきりと答えた。
「縁はむしろ、私をかばってくれました。『ジュエルはなにも悪くないよ』と慰めてくれました。……でも、私は自分を許すことができない。友達に痛みを与えてしまった自分が呪わしくてたまらないのです」
「あなたはなにも悪くないわよ」美美子は言った。
「縁さんだってあなたを責めたりしなかったのだし、自分のことを許してあげてほしいわ」
「無理です」
「どうして?」
「それは……わかりません。ただ、私は自分を罰したいのです。友達を傷つけた自分が幸せになることなど、どうしても認めたくないのです」
「私は自分を許したくない。縁に……親しい友に暴力を振るった自分は、永遠に罰されるべきだと思うから」
【続く】
0
あなたにおすすめの小説
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる