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幕間 あなたに捧げる二、三の断章
第一話
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龍源寺美美子 様
こんにちは。最近、日の入りが早くなったけど、元気でいるかな。
この前、公園で、君は神城さんの精神世界に潜ったよね。どんな手を用いて神城さんを現世に呼び戻したのか、私は知らないけれど、君たちが無事でとてもほっとした。
あのあと、君たちは、久永さんや雲雀山さんたちの助けを借りて、傷を治したんだっけ。手首にかなりの傷痕があったけど、久永さんたちが頑張って治療したんだよね。
いろいろと大変だったけれど、無事に帰ってきてくれて嬉しかったよ。
あの日から三日後、私は登校した。
もしかすると、誰かの口から正体をばらされているかもなあって危ぶんでいたんだけれど、それはまったくの取り越し苦労だった。
龍源寺さんも神城さんも秘密を守ってくれたんだと知って、……私、とても嬉しかった。
新町さんや島田さんは薄々感づいているみたいだけど、深くつっこんでこなかったんだよね。
これは私の想像だけれど、龍源寺さんが口止めをしてくれたんだと思ってる。
君はすごく優しい人だから、他人の秘密をべらべらと喋ったりはしないんじゃないかなと考えたんだ。
教室に入って普段通りに授業を受けて、放課後に絵を描いて、「さあ帰ろうか」とした矢先、私はひとりの下級生に呼び止められた。
ほら、うちのクラスにちょくちょく訪れていた一年生がいたじゃない。あの子が突然、私に話しかけてきたんだ。
で。
それがおかしいことにね、その子、「私の恋人になってください!」って告白してきたんだよ。皆がいる前で、いきなり告ってきたの。
当然、クラスの皆はびっくりした。
私もびっくりした。
こんなに暗い人間を求めるなんて、なんていうか、その、めちゃくちゃハイレベルな物好きだな……って思った。
目が丸くて、どことなくたぬきに似ているその子は、「私、先輩のことが前々から気になっていたんです! 絵を描いているときの先輩、すごくかっこいいから、それで好きになったんです!」と言った。
そして、ほっぺたを赤く染めながら、「お付き合いしてくださいっ!」って頼み込んできたんだ。
もちろん、私は混乱した。いったいなにが起きたのかうまく飲み込めず、黙り込んでしまった。
で、まあ、いきなりお付き合いするのは気が引けたので、「……友達としてならいいけど」って答えたんだ。
「お友達から始めましょう」って、いまどき漫画にも出てこないような台詞だけれど、あのときは、ああ言うのが精いっぱいだった。
私に告白してきたその子は、「須藤ちはやと申します! 今後ともよろしくお願いします、先輩!」と言って、にっこり笑った。
……うん。
私、あのときは本当に混乱したよ。
本当に本当に、どうしようもないぐらい混乱した。
【続く】
こんにちは。最近、日の入りが早くなったけど、元気でいるかな。
この前、公園で、君は神城さんの精神世界に潜ったよね。どんな手を用いて神城さんを現世に呼び戻したのか、私は知らないけれど、君たちが無事でとてもほっとした。
あのあと、君たちは、久永さんや雲雀山さんたちの助けを借りて、傷を治したんだっけ。手首にかなりの傷痕があったけど、久永さんたちが頑張って治療したんだよね。
いろいろと大変だったけれど、無事に帰ってきてくれて嬉しかったよ。
あの日から三日後、私は登校した。
もしかすると、誰かの口から正体をばらされているかもなあって危ぶんでいたんだけれど、それはまったくの取り越し苦労だった。
龍源寺さんも神城さんも秘密を守ってくれたんだと知って、……私、とても嬉しかった。
新町さんや島田さんは薄々感づいているみたいだけど、深くつっこんでこなかったんだよね。
これは私の想像だけれど、龍源寺さんが口止めをしてくれたんだと思ってる。
君はすごく優しい人だから、他人の秘密をべらべらと喋ったりはしないんじゃないかなと考えたんだ。
教室に入って普段通りに授業を受けて、放課後に絵を描いて、「さあ帰ろうか」とした矢先、私はひとりの下級生に呼び止められた。
ほら、うちのクラスにちょくちょく訪れていた一年生がいたじゃない。あの子が突然、私に話しかけてきたんだ。
で。
それがおかしいことにね、その子、「私の恋人になってください!」って告白してきたんだよ。皆がいる前で、いきなり告ってきたの。
当然、クラスの皆はびっくりした。
私もびっくりした。
こんなに暗い人間を求めるなんて、なんていうか、その、めちゃくちゃハイレベルな物好きだな……って思った。
目が丸くて、どことなくたぬきに似ているその子は、「私、先輩のことが前々から気になっていたんです! 絵を描いているときの先輩、すごくかっこいいから、それで好きになったんです!」と言った。
そして、ほっぺたを赤く染めながら、「お付き合いしてくださいっ!」って頼み込んできたんだ。
もちろん、私は混乱した。いったいなにが起きたのかうまく飲み込めず、黙り込んでしまった。
で、まあ、いきなりお付き合いするのは気が引けたので、「……友達としてならいいけど」って答えたんだ。
「お友達から始めましょう」って、いまどき漫画にも出てこないような台詞だけれど、あのときは、ああ言うのが精いっぱいだった。
私に告白してきたその子は、「須藤ちはやと申します! 今後ともよろしくお願いします、先輩!」と言って、にっこり笑った。
……うん。
私、あのときは本当に混乱したよ。
本当に本当に、どうしようもないぐらい混乱した。
【続く】
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