治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう

文字の大きさ
22 / 62
1章

戦闘

しおりを挟む
 クレディの放った火の槍は、四本ずつでまだ生きている人たちに襲い掛かる。
 だが、リーダーは二本を回避、そして一本を弓で撃ち落とすと、最後の一本を無理やり死体となった剣を持っていた男で防いだ。

 仲間を思う気持ちは、なんて気持ちも少しは湧き上がるが、自分が生きるために手段を選ばない、その精神だけは尊敬できるものだ。目指そうとは思わないけど。

 そしてもう片方、呪術師のほうは、脇腹に食らって動きが悪くなっていたためか、またもや一本、腕に食らいながらも木陰に隠れ、三本をやり過ごした。

 呪術師のほうは、怪我で動きも鈍くなっているから、何とかなるだろう。

 そして火の槍最後の一本は、上空に打ち上げられた。

「実際、人数差が覆せてない以上救援を呼ぶしかない......」

 いくら人数差が反転したと言っても、俺と聖女様は戦闘するには力不足。そしてクレディは魔力が尽きれば終わりだ。いくら俺がバフをかけて以前のような戦いができると言っても、前衛無しで二対一をさばけるほどの強化を出来ているとは思えない。

 だが、それでもさっきよりは状況は好転した。

「チッ、面倒な。さっさと片付けるぞ」

「わかってる、クヒッ」

 即時に二人は走り出して――――聖女様のほうに、ナイフを構えた。
 その先端は液状のものが付いた照りを見せている。

 即死毒というのは、存在する。
 その毒を食らえば一撃で死亡、俺の治癒が間に合うことはない。
 だが、もちろんそんな毒が、一般で使われるもののはずではなく、大金を積んでようやく一回分程度なのだ。
 それが、聖女様殺害の報酬と比べて安かったのか、それとも単に仕事をこなすという義務感からか。
 ともあれ、動きからして――――

「誰かに、雇われているな」

 でなければ、この状況で、逃げればもしかしたら助かるかもしれない状況で一人を狙うことはないだろう。
 とすれば、誰かが聖女様の殺害を依頼している、というわけだ。

 目的は、何だ。



「行かせない、ファイアウォール!」

 二人と聖女様の間に、火の壁が作られた。
 今クレディには魔法系バフを山ほどかけている。だが、もちろんバフにも弱点は存在する。
 まず、重複はしない。最後にかけられたバフが有効になる。
 そして、永久に効果が続く、ということはない。特に俺は効果に魔力を割いているため、持続時間はせいぜい三十分。そこからは効果がどんどん減衰し、一時間もすれば消えるだろう。
 最後に――――ゼロを一には、出来ない。
 どれだけバフを使おうが、極端な話運動音痴に身体強化をかけるのと、運動神経抜群の人に身体強化をかけるのとでは、効果は天と地ほどの差がある。

 つまり、何が言いたいかと言うと。

「クレディも、接近されれば終わる――――」

 クレディは俺よりも運動はできない。つまり俺よりも身体強化系バフの効果は薄いわけだ。
 幾ら俺のバフが人を英雄にすると言っても。

「わかってるわ、そんなことくらい――――なんて、説得力はないだろうけど」

 そうクレディはつぶやくと、魔法を使用した。

「ファイアボール」

 それは、持久戦を嫌う彼女には珍しい、燃費を意識した魔法だった。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

処理中です...