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2章
四人と三人、お前で四人
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「それで、これから何があるんですか?」
「これから食事をしたら、すぐに式が行われますよ」
すぐに......? 予定では、数日後に式があると、そう言っていたはずなのに......まさか。
「試練開始からもしかして、数日経っていたりします?」
「よくわかりましたね、三日、寝たきりでした」
たったあの試練を受けさせるだけだというのに、三日も時間が経過する理由がわからない。
が、それに関しては幾ら考えようと試練の仕組みと同様答えが見つからないことくらいわかっているから諦める。
と、そこでお腹の音が鳴る。
当然か。三日寝ていたということはつまり、食事も同様取っていなかったわけだから。
もしかすれば、排泄物の処理も......?
途端、俺の顔が熱くなったのを感じた。
だって、全部見られたってことで......?
「どうされたんですか? ロードさん、顔真っ赤ですよ」
聖女様――――アミリアさんにも笑われてしまった。
この人、これだけ余裕を見せているということはやっぱり慣れているのか。
「ほら、そこで立ち止まってないで、行きますよ。まだ街に出ることは無いので残念かもしれませんが、併設されている食堂はとても好評ですよ」
足を止めて考えていたら、聖女――――アミリアさんも立ち止まる。
「すみません、つい考え込んでしまって」
「良いですよ。ほら、早くいきましょう」
アミリアさんは軽い足取りで先に進んでいった。
俺は入り組んだこの建物の中でアミリアさんを見失わないように、小走りで追いつく。
俺の腹は、空腹を訴えて音を立てた。
「ここが食堂です。料金は取られないので、好きな物を頼んできてください」
そう言うと、聖――――アミリアさんはふらり、とどこかへ歩いて行ってしまった。
アミリアさんも、お腹が空いていたのだろう。
と、そっちばかり見るのをやめて、一度周囲を見回してみる。
どうやら、いくつもの店が一緒に食堂の壁側を使って販売しているようで、いくつもの列が出来ていた。
俺はその中でおいしそうな店を見つけたので、そこの列に並んだ。
「いらっしゃい。何にするんだい?」
「そのサラダとスープを一つずつ」
「あいよ」
注文を聞きに来たおばちゃんが中に戻っていった。
正直なところ、肉を食べたいと思ったりするが、三日間何も食べていないところに急に肉を入れたら、流石に腹を壊しそうで怖い。
最初だし、サラダとスープでならしておくのがいいだろう。
行けそうならほかのところに並んでも良いし。
「おまち」
注文通りのサラダとスープが乗せられた皿を渡される。
俺は「ありがとう」とだけ残して、適当な空いた席に座った。
「うまい」
ギルドの安いスープと違って、しっかりとうまみが出ている。
まぁ安さで言えば確実にあのスープなんだろうが。
「サラダもシャキシャキ......」
あの街で提供される野菜は炒められたりしてごまかされた元気のなくなった野菜だ。
農村が少し遠いから仕方ないかもしれない。
少しずつ、むしるようにして胃に食べ物を入れていく。
と、そこで見慣れない人が俺の正面の席に座った。
「席、失礼するぜ。未来の聖者様」
「はい、わかりました......ところであなたは」
聖者様、と言われた時点である程度の上層部の人間だと推測できた。
聖者であることがまだ公表されていないのは食堂のおばちゃんが何も知らずに注文を取っていることや、、周囲の人たちが目もくれないことからわかっている。
そして何より、彼女自身が注目を集めまくっている。
「私は聖女だ。この教会には聖女が四人、そして聖者が三人いるのさ。お前でちょうど四人目だ」
やはりか。
そこまで重要度が高くないから後回しにしていたが、やはり一人だけではなかった。
もし一人なら、聖女をそもそも国の外に配置すること自体が間違いだろう。
「ちなみに私には人生の伴侶がいる。狙おうったってもう遅いぞ」
「ほう、てっきり噂の通り、聖女様は純潔でなければならないとばかり」
「そうだな、明確に決まってはいない。ただ、そもそも人目につかないせいで出会いが少なかったり、立場上の問題もあったりする」
そう言って、彼女は左手薬指にはめられた指輪を見せる。
その指輪は金でできており、蒼い宝石がついていた。
「その指輪、何か特別な物なんですか?」
「――――なんだ、知っているのか。まぁ、大切なものだ。聖女として活動するなら、な」
そう言って、彼女は「だから残念ながらやれないぞ」と手を抱きかかえる。
まぁ、もらう気もない。持っているし。
だがそれは口にしなかった。
聖女にとって大切なものを、ただ利子という理由付けで俺に渡したことに、俺は違和感を覚えていたからだ。
それに、もしそれを言ったとして、面倒ごとが舞い降りてくることくらいしか想像できない。メリットもないのにそれを言う必要は全くない。
「そうでしたか。それでは、失礼します」
俺は席を立って、空になった皿を返却台に返しに行く。
「おう。これから、よろしく頼むぜ」
聖女様はそう言って、席に座ったままぶんぶんと手を振るのだった。
「これから食事をしたら、すぐに式が行われますよ」
すぐに......? 予定では、数日後に式があると、そう言っていたはずなのに......まさか。
「試練開始からもしかして、数日経っていたりします?」
「よくわかりましたね、三日、寝たきりでした」
たったあの試練を受けさせるだけだというのに、三日も時間が経過する理由がわからない。
が、それに関しては幾ら考えようと試練の仕組みと同様答えが見つからないことくらいわかっているから諦める。
と、そこでお腹の音が鳴る。
当然か。三日寝ていたということはつまり、食事も同様取っていなかったわけだから。
もしかすれば、排泄物の処理も......?
途端、俺の顔が熱くなったのを感じた。
だって、全部見られたってことで......?
「どうされたんですか? ロードさん、顔真っ赤ですよ」
聖女様――――アミリアさんにも笑われてしまった。
この人、これだけ余裕を見せているということはやっぱり慣れているのか。
「ほら、そこで立ち止まってないで、行きますよ。まだ街に出ることは無いので残念かもしれませんが、併設されている食堂はとても好評ですよ」
足を止めて考えていたら、聖女――――アミリアさんも立ち止まる。
「すみません、つい考え込んでしまって」
「良いですよ。ほら、早くいきましょう」
アミリアさんは軽い足取りで先に進んでいった。
俺は入り組んだこの建物の中でアミリアさんを見失わないように、小走りで追いつく。
俺の腹は、空腹を訴えて音を立てた。
「ここが食堂です。料金は取られないので、好きな物を頼んできてください」
そう言うと、聖――――アミリアさんはふらり、とどこかへ歩いて行ってしまった。
アミリアさんも、お腹が空いていたのだろう。
と、そっちばかり見るのをやめて、一度周囲を見回してみる。
どうやら、いくつもの店が一緒に食堂の壁側を使って販売しているようで、いくつもの列が出来ていた。
俺はその中でおいしそうな店を見つけたので、そこの列に並んだ。
「いらっしゃい。何にするんだい?」
「そのサラダとスープを一つずつ」
「あいよ」
注文を聞きに来たおばちゃんが中に戻っていった。
正直なところ、肉を食べたいと思ったりするが、三日間何も食べていないところに急に肉を入れたら、流石に腹を壊しそうで怖い。
最初だし、サラダとスープでならしておくのがいいだろう。
行けそうならほかのところに並んでも良いし。
「おまち」
注文通りのサラダとスープが乗せられた皿を渡される。
俺は「ありがとう」とだけ残して、適当な空いた席に座った。
「うまい」
ギルドの安いスープと違って、しっかりとうまみが出ている。
まぁ安さで言えば確実にあのスープなんだろうが。
「サラダもシャキシャキ......」
あの街で提供される野菜は炒められたりしてごまかされた元気のなくなった野菜だ。
農村が少し遠いから仕方ないかもしれない。
少しずつ、むしるようにして胃に食べ物を入れていく。
と、そこで見慣れない人が俺の正面の席に座った。
「席、失礼するぜ。未来の聖者様」
「はい、わかりました......ところであなたは」
聖者様、と言われた時点である程度の上層部の人間だと推測できた。
聖者であることがまだ公表されていないのは食堂のおばちゃんが何も知らずに注文を取っていることや、、周囲の人たちが目もくれないことからわかっている。
そして何より、彼女自身が注目を集めまくっている。
「私は聖女だ。この教会には聖女が四人、そして聖者が三人いるのさ。お前でちょうど四人目だ」
やはりか。
そこまで重要度が高くないから後回しにしていたが、やはり一人だけではなかった。
もし一人なら、聖女をそもそも国の外に配置すること自体が間違いだろう。
「ちなみに私には人生の伴侶がいる。狙おうったってもう遅いぞ」
「ほう、てっきり噂の通り、聖女様は純潔でなければならないとばかり」
「そうだな、明確に決まってはいない。ただ、そもそも人目につかないせいで出会いが少なかったり、立場上の問題もあったりする」
そう言って、彼女は左手薬指にはめられた指輪を見せる。
その指輪は金でできており、蒼い宝石がついていた。
「その指輪、何か特別な物なんですか?」
「――――なんだ、知っているのか。まぁ、大切なものだ。聖女として活動するなら、な」
そう言って、彼女は「だから残念ながらやれないぞ」と手を抱きかかえる。
まぁ、もらう気もない。持っているし。
だがそれは口にしなかった。
聖女にとって大切なものを、ただ利子という理由付けで俺に渡したことに、俺は違和感を覚えていたからだ。
それに、もしそれを言ったとして、面倒ごとが舞い降りてくることくらいしか想像できない。メリットもないのにそれを言う必要は全くない。
「そうでしたか。それでは、失礼します」
俺は席を立って、空になった皿を返却台に返しに行く。
「おう。これから、よろしく頼むぜ」
聖女様はそう言って、席に座ったままぶんぶんと手を振るのだった。
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