治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう

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2章

昨日の

「こちら、大聖女様の部屋です」

 アミリアさんが足を止めた。
 目の前には、普通の扉があった。正直、他と見分けがつかないから覚えるのに苦労しそうだ。

 と、そんな考えをしている俺を置いて、アミリアさんはドアをノックした。

「はい、どうぞ」

 と、中から声が聞こえる。もう誰が来たかわかっているのだろうか。
 まぁ、今日呼ぶのが一組だけで、二人の足音が近づいてきた、とかなら警戒もしなくて良いかもしれない。

「失礼します。大聖女様、ロードを連れてきました」

「どうも、ロードです」

 一度、部屋の中を見てみる。
 が、何の変哲もない、普通の部屋。
 どころか、教会の重役にしては質素すぎるほどだった。

「ロードさん......いえ、聖者ロード。これから一か月ほど、用事などはありますか?」

「いえ、ないですけれど」

「聖女アミリアもないですね?」

「えぇ、でもどうされたんですか? 昨日のあれ、を私は知らないのですが......」

 アミリアさんが問う。いつもにも増して慎重に。

「そうですね......二人には、ある魔法の才能があります」

 まさか。
 俺の脳内はいっぱいになった。
 隣を見ればアミリアさんも同じ思考だったようだ。
 二人に共通して魔法の才がある。つまり、魔法の質が関係しているだろうことが予想できるからだ。
 そしてそれを大聖女様が使える、ということはつまり。
 大聖女様、アミリアさん、そして俺の魔力の質が限りなく同じものになっているかもしれない。
 それが意味するのは、リザレクションを俺無しで発動可能かもしれない、ということだ。
 アミリアさんが本当に魔法を使いたいなら、きっとあの質問をするだろう――――

「失礼ですが大聖女様。その才能はどの程度あるのでしょうか」

 そうなるだろう。

「そうですね......二人の才能は同じくらいですね。やはり、魔力の質が限りなく似ているだけありますね」

「知っていたのですか」

 アミリアさんは驚愕を示した。
 それもそうだろう。その話は、転移する前、街で気付いた彼女と、知らされた俺しか知らないと思っていたからだ。
 だが、どういう手段か、それを知っている。
 もう、こうなるとリザレクションについて知られていると、そう思ったほうが良いかもしれない。

「そうですね。今魔力を見たところ、二人ともとても似た魔力を宿していますから」

 ......どうやらセーフだったらしい。
 が、油断はできない。魔力を見られる、という次元ならまだしも、その質まで見ることが出来るその目はもう俺の知る範疇ではない。
 これから何を見られるかわからない。

 良いほうだと動揺を見られて尋問。
 悪いほうだと過去だの思考だのを見られて気付かれる。

 まぁ、これは確かに過去に存在していた能力とはいえ最悪の結果であって、そうなる可能性は限りなく低いのだが。

「私も少し似てはいましたが、バフの才能はここまで無いですね......流石です」

 大聖女様は飾り気のない称賛を口にした。

「それで、本題のほうをよろしいですか? 昨日のあれ、と言われても、見当もつかないので」

「そうでしたか。では説明をいたしましょう」

 そして大聖女様は一度、咳払いを入れてから説明を始めた。

「喪失魔法である、結界魔法を」

 その言葉が、部屋にいとも簡単に、そして重く広がるのだった。





 喪失魔法、それは文字の通り、失われた魔法だ。
 継承できるほどの才能の持ち主が現れなかったか、それとも使い手が全員死んでしまったか。
 様々な理由こそあるだろうが、共通するのはその特殊性から一からの再現は限りなく困難だ、ということだ。
 来るときに使った転移魔法陣、そしてそれの元になった転移魔法もそれに位置づけされている。

「結界魔法......それを、一か月で?」

「そうです。まぁ、使わないことに越したことはないのですが、私もこの先いつ死ぬかわからないものですから。一人でも多く継承させているのですよ」

 そう説明された。
 年が、という問題ではなく大聖女という立場からだろう。

「一か月で教えるので時間の余裕はありません。すぐに行いますよ」

「はい!」

「は、はい!」

 二人は大聖女様について行く。
 それが地獄の始まりだと知らずに。

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