英雄教科書

大山 たろう

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2-1 校内魔法対抗戦 練習

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「もうすぐ校内魔法対抗戦! 皆さん気を引き締めていきましょう!」

 理事長のその言葉に、ライズは頭をかしげた。

「その校内魔法対抗戦ってのは何ですかね」

 その言葉を聞いたほかの教員陣がぎょっとした顔で見てきた。

「ライズ先生! 校内魔法対抗戦を知らないんですか!? 優勝者はこの国の宮廷魔法師に教えてもらえるという名誉が与えられるんですよ! なので大陸魔法対抗戦の有力選手と呼ばれたりするんですよ」

「へぇ、そういえばあいつもだっけか......」

「ライズ先生、何か言いましたか?」

「いや、何でもないですよ」

 ライズの中では、既にその大会への熱意を失った。





「もうすぐ校内魔法対抗戦ですよー!」

 その声を聞いた生徒が様々な声を出す。

「もうそんな時期か.......」

「やっと私の実力を見せられる!」

 興奮しているものが半数、風物詩としてとらえている人が半数。
 これが終わったら夏休みなので、そっちに意識が向いている人も少なからずいた。

「なので、特別授業を行いまーす!」

 その言葉に、教室の生徒はざわざわと話し出す。

「ちなみに誰がするんですか?」

「もちろんライズ先生ですよ!」

「やっぱり?」

 もう半分理解していた。ソフィア先生は実技はそうだが、講義ですらすべて俺に任せていく。
 俺ももうすぐソフィア先生の講義を見たいのだが.......ダメもとで言ってみるか。

「ソフィア先生はされないんですか?」

「私は専門外ですので」

 即答された。元からダメ元だったと、あきらめて特別授業の内容を考えておく。
 もうここに勤め始めてから少し経ち、クラスの生徒の名前と魔法適正ならある程度覚えた。

「ライズ先生頑張ってくださいねー!」

 そう言ったのはエアリ。
 実はこの子、四属性の最低限の適正を持ち、風属性に対しては感覚派だったため多少の遅れがあるものの、天才的な魔法容量とセンスがあるため、人目置かれる生徒となっていた。
 また、光属性とおなじぐらいに希少な闇属性にも適性を持ち、そちらのほうも最近は覚え始めているようだ。
 彼女なら、あれも――――

 と、そこでライズは思考を一旦中止し、「頑張るぞー」とエアリに対して答えた。



「そうだ、ライズ先生」

「どうしました?」

 ソフィア先生が急に話を振ってきた。

「ライズ先生、今日の特別授業は実践をしませんか?」

「そうはしたいんですけど皆が体操服を持ってきているかどうかわからないので......」

 実際にはそれを免罪符にして、ただ今日動きたくない気持ちをわかってほしいのだが、職務怠慢と言われそうなのでわかってもらえなくても決して口には出さないライズだった。

 それに今日の天気は曇りだ。運動日和といえば運動日和だが、気分が滅入るし、なにより―――

「ライズ先生、聞いてますか?」

「あ、はい、どうしましたか」

「もう、すぐにライズ先生は考え事ばかりするんですからー」

 ソフィア先生は「ふふっ」と微笑みながらライズの隣を歩く。

「今日はみんな体育があったはずですよ」

「ほう、あの子たちは総合戦闘術とは別にさらに体育をしてるんですか」

「魔法師、体が資本ですからね!」

 ソフィア先生は「それじゃあ、お願いしますね?」というと、先に職員室まで行ってしまった。
 どうやらライズの放課後の運命は確定してしまったようだ。

「やっと研究器具そろったのに......」

 その声を聞いたものは誰一人としていなかった。






「それではライズ先生、お願いします!」

 その明るい声を聞いて、どうしたものかと考え込むライズ。

「とりあえず、実力の近しい二人で模擬戦でもするか」

 もう今日は戦闘する気がないライズ。

「ライズ先生は戦闘されないんですか?」

 ソフィア先生。あなたはどうして私を戦闘させようとするんですかねぇ!
 と、そんな心の声はきっと届かない。
 ソフィア先生もずっとこちらを見てにこにこしている。

「先生、どうされたんですか?」

「いや、なんでもない、そういえば、今日はガイア休みか」

 あれから定期的にガイアは学校を休んでいる。

「この学校、全寮制ですから学校の外に出られるわけでもないですし、どうしてでしょう?」

 エアリも仲が良い印象だったが、特に何も聞いていないようだ。
 これは何かしている予感はするのだが、俺と会う機会がない以上、何も言うことができない。
 俺の魔法適正って、完全に隠密行動を捨てた構成って言われてるからな......どちらかというとエアリが適任だろう。

「まぁ、ガイアはあとで聞いてみるさ、それより、模擬戦を始めるぞー」

 結局ライズは戦闘をしたくないがために模擬戦を敢行した。
 隣でソフィア先生の顔が膨れて――――――――いや、違う。



 凍えるような冷たい目で、俺を見ていた。
 視線だけで人を殺せそうな、そんな目で。
 今まで見たことがないその表情。それはいつもの顔やあの夜の顔とは確実に何かが違う、そんな顔。
 これ、俺戦闘しなくてもソフィア先生が教えればよくない? 絶対戦闘力高いじゃん?

 やはりその声は出さないライズ。
 そしてため息を吐いてそれをやめたソフィア先生。

 この二人の間に、確かな『何か』が生まれた瞬間だった。




 一方―――――

「できた」

 その少女は、片手で棒を持っていた―――――
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