廻れマワれ

大山 たろう

文字の大きさ
16 / 38

1-15:訓練と朝市

しおりを挟む
「それじゃ、おやすみ!」

 その声を最後に、皆一斉に部屋に戻る。
 あれから、中立国家首都に戻り、案内されるがままに割り当てられた部屋に移動した。
 来客用の部屋、というものがあるらしく、出来る限り豪華に取り繕っているのが分かる。
 それでも、外の様子を見ればそれが仮面だということがすぐに分かってしまうのだが……まぁそれは、体裁なんだろう。

「そういえば、帰ってきたときはあの目線がなかったですね」
「あぁ、行くときにあったやつ、なかった……というより、そもそも人がいなかったよねー」

 到着したころに会った、あの敵対的な視線の数々を向けていた人たちは、私たちが帰ってくる頃にはいなくなっていた。
 それもあって、私たちは案内されるままに部屋の中へと移動したんだけど。

 正直、分からないことだらけ。
 最初は、私たちを邪魔者というか、敵という感じに見ていたのに。
 今となってはとりあえず害がない、みたいな認識をされているような気がする。最初から害なんてないし、
 単にそんな余裕がなかったからか、それとも……。

「まぁ、いなかったなら良いじゃん」
「それも、そうですね」

 弓の人がベッドに腰を下ろした。
 部屋は男と女で分けられている。二人部屋だし、一応前衛と後衛で分かれているので、襲われてもなんとかなる。
 まぁ、向こうはそこまで考えてはいないだろうけど。

「弓の人ってさ、どうして戦うの?」
「私、ですか……」

 答えは未だ。
 どうしたら良いのか、何が正しいのか。そんなことも考えすぎて、分からなくなった。

「私がここに来たのは、お金のためですね」
「意外と現実的なんだね」
「私たちの集落が連続の不作で大変だったんですよ。だから、人口を減らして、なおかつお金を送れる。タイミングが良すぎて罠と疑ったくらいですよ」
「そうだったんだね」

 どこにある集落とか、そんなことを聞いてもきっと分からない。
 でも、私はそこまで切羽詰まった事情のものを抱えているわけではない。

「他の二人も、そんな感じなのかな」
「あぁ、マルスさん……盾の人も、そんな感じだとは聞き及んでいます」
「へぇ……杖の人は?」
「詳しくは覚えていませんが……切羽詰まった様子はなかったですね」
「ま、それ以上は本人に聞いたほうが良いのかもね」

 私はぐっと背伸びをして、ベッドに寝転んだ。

「明日も早いですし、ここらへんで寝ますか」
「そうだね。おやすみ」
「おやすみなさい、勇者様」

 私は布団をかぶる。
 結局分からなくて、もやっとしたままで。
 すぐに寝付けそうにはなかった。




「おはようございます、勇者様」
「あ、おはよう」

 天気は良好、体調も良好。
 今日は戦闘なんてないはずだけど、体調が良くて困ることはない。

「それにしても勇者様、朝早いんですね」
「あぁ、これくらいに起きて戦闘訓練みたいなことがぽつぽつあってね。それで早起きも慣れちゃった」

 闇の人が起きている時間帯に、と思うと、結構な早起きをしないといけない。朝日が上がったころにはもう元気がなくなっていて訓練どころじゃないから、それまでに準備を完了させないといけない。
 面倒だったけど、まぁそれが生きたとも言える。

「それより、朝市に行かないといけないんだよね!」
「えぇ、そこで食料を、と思っています」

 そこで二週間分を買い占めるのもどうか、とも思ってしまうけど、私たちも命令だから仕方ない。
 敵国の街で食料を買い占める、というのも難しそうだ。

「それじゃ、早く行こうよ」
「そうですね」

 二人が部屋を出たとき、そこにはちょうど部屋に戻ろうとしている男二人がいた。

「あ、盾の人と杖の人。おはよう」
「あぁ、勇者様、おはようございます」
「……おはよう」

 杖の人と盾の人は全身に装備を着こんでいた。
 その服には少しの土がついていた。どうやら運動の後のようだ。

「戦闘訓練でもしてたの?」
「えぇ、体が鈍ってはいけませんから」
「一瞬の躊躇いが、生死を分けてしまうからな」

 二人がそれぞれに答える。
 確かにその通り。そういえば、最近訓練出来ていないな。

「ねぇ、この後時間あったら一緒に訓練しない?」
「勇者様、これから二週間あるんですし、早めに朝市に行ってしまいましょう」
「あ、そうだったね。ごめんね、私から誘っておいて!」

 立ち止まってなんていられないなんて思っていたけど、そういえば用事があるんだった。
 弓の人にずるずると引っ張られ、私は建物の外へと連れていかれる。

 盾の人と杖の人の表情は、決して良いものではなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

処理中です...