魔力極振りの迷宮探索

大山 たろう

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七章 試練

恋はいつも突然に

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「なぁ、藍染君、君は、「ねぇ、拓海、今日放課後、生徒会室に来て」」

 天ノ川を遮るようにして紗耶香が俺に要件を伝えてくる。要件なら昨日話したと思っていたのだが......


 俺はさっさと幻術を使用して天ノ川を任せると、教室の端っこにいる徹と司のもとへと走る。

「うっす」

 軽ーく挨拶を交わしていく。男子高校生何て所詮こんなものだ。かるーくでいいのだ。

 二人からも軽い挨拶が返ってきた。

俺たちがあの犯罪者どもを倒したという事実に、今まで俺たちを見下していたやつや、仕事を押し付けていたやつらは様々な反応を示していた。

 ある人は顔を青くして目線をそらす。
 ある人は顔を赤くしながらにらみつけてくる。
 ある人は俺たちを見るなり「化け物!」と言ってどこかへと行ってしまった。まぁ、事実すぎて何も言えねぇ。

 俺は後ろから聞こえる天ノ川の「くそぉぉぉぉおおおお」という叫び声をBGMに、ロッカーに体重を預け、携帯で小説を読み始める。

 お気に入り登録をしていた作品のいくつかが新しい話を掲載していたので、それを片っ端から読み始める。

 十から数えるのをやめた更新速度の速い作品をすべて読み終わったところで、チャイムが鳴る。

 さぁ、ここからはステータスの力の及ばない世界だ。

 俺は覚悟を新たに席に座るのだった。

 先生との戦闘が始まった。

「おい! 藍染! 提出物は!」

「ってお前もか! 影山!」

「授業中に飯を食うな斎藤!」

「って寝るな! 起きろ藍染!」

「授業中に本を読むな影山ぁ!」

「もう十分寝ただろ藍染ぇ! はぁ......はぁ......」

「だから.....授業中に飲食は禁止だって何度言った......」

「おい......本を......読むな......」

 ガクッ

 よし、第一の難関、国語科の中山を倒した!

 これでやっと思い思いの行動を、と思ったところでチャイム。今日はちょっと時間をかけすぎた。

 二時間目はいつも課題さえすれば静かな先生なので、この授業はしっかりと課題をしてきた。

 三時間目も寝ても大抵怒られない。やはり中山と五六時間目が難関だな。

 四時間目、体育はもはや何もできないのであきらめて授業を受ける。

 そして飯を食って五時間目。化学の水原 昇華先生。これがまた難関なのだ。

 一時間目みたいな熱血筋肉先生を相手にした手法を使うと、ウルウルと目を潤ませて見つめてくる。

 まるで道端の犬を蹴っているような罪悪感を覚えてからは、あの手法をとれなくなってしまった。
 それに加え、その日以降周りの目がきつくなっているのだ。身長が高くはないため親近感がわいているのか、みんな先生の味方だ。ちなみに副担であるのでなかなかの苦労人だ。なにせ担任にすべて押し付けられているのだから。

 仕方がないので、先生が目を離した時だけ俺は寝る。視線を多く感じたら起きたらいい。

 向こう二人ももうあんな思いはしたくないようで、同じような手段をとっていた。

 二時間使って化学を勉強した......というより視線の感じ方みたいなものを勉強した俺たち。


 先生の簡潔なホームルームを聞いて、さっさと帰ろうとして、横からの視線を感じる。

 じっと、じっと......見つめてくる紗耶香。

 うん、寝すぎて忘れてた。

 俺は体育のせいなのか、それとも寝すぎたせいなのか、気持ちの問題なのか、重い足を動かして生徒会室へと向かった。


「それで、昨日の話の続き?」

 そう聞いたが、紗耶香は何も答えない。

 二人っきり、電気もついていない生徒会室で何を話すつもりなのだろうか。

「拓海、私と付き合いなさい」





 そう、急に切り出された。
 ちょ、おま!?
「どういう風の吹き回し?」
 顔では平穏を装っているつもりだが......正直隠せている自信はない。だってそうだろう。女子から告白してくるなんて、しかも学校で数えるほどの顔で有名な人だろう?

 しかし、そんな混乱をものともせず、紗耶香は話を続ける。

「これは決定事項よ、わかったわね? わかったら明日と明後日、デート行くわよ」

 明日と明後日は休日。どうやら俺をそうやって迷宮から遠ざけるつもりらしい。

「別に、いつまでも止められると思ってないわ。それでも、よ」

 顔を赤くし、尻すぼみとなっていく言葉。まぁ、何か紗耶香も打算があってこれをしているのか。

「そうだね、付き合おう。デートも二日ぐらいどうってことないさ」

 そう言ったら、紗耶香が顔をぱぁっと明るくした。

 なに、急にクッソ可愛いんだが?

 とか思っていると、残念なことに咳ばらいをすると一瞬で顔が元の真っ赤に戻る。元の真っ赤というのも何かおかしな気もするが。

「それなら、明日の十時、迷宮都市の駅前の時計のところで集合よ。遅刻しないでね!」

 そう言い切った彼女は、荷物を手に抱えて生徒会室を走り去っていった。

 ついに、僕。

 彼女ができました。やべぇ死んでもいい。いや、死んだらダメじゃん! デート行けないじゃん!

 と、ここで気付く。

 死んだら、ダメじゃん。

 まさか、自分という存在を心残りにさせて、最後まであきらめさせないつもりか......?

 しかし、考えすぎだと思考を放棄して、生徒会室に鍵を閉め、職員室に返却すると、家へと帰るのだった。

 本当に、考えすぎなのかと、思考を巡らせながら。



「はぁ......」

 ついに、やってしまった。
 姉が好きだと知っておきながら、私は抜け駆けするかのように、いや、実際に抜け駆けをしてしまった。

 最初は彼の生きるために枷にでもなってやるという打算的な理由だったのだが、途中から思いが先行してしまった。

 まぁ、これで彼と迷宮との距離が遠くなるのであれば......

 そんな打算と思いのサンドイッチに、抜け駆けというスパイスと明日のデートという具材を入れた、簡単に表現をするのであれば彼への想いを胸に、ベッドの上で布団を抱きしめるのだった。
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